《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》選抜戦の開幕
☆☆☆
中間試験の結果も出たことで、いよいよ大魔法祭の選抜が各クラスごとに発表されることになる。コーラス組である俺たちの選抜は、績順から……俺、フィーラ、ギルガルの三人となった。
俺とフィーラはともかく……ギルガルというのは、ギルガル・フォルトという男子生徒だ。筆記試験と実技試験の績は素晴らしく、績は學年17位となっている。見た目は厳つく、オールバックの白髪、爛々とる獰猛な獣のそれと同じ琥珀の瞳をしている。も大きく、筋隆々としたおよそ學生とは思えない男だ。
まるで績が良いようには見えないが、本人の努力と、周りの貴族どもがやれ権力だなんだと言って本分を怠っているからこその結果なのだと思われる。
……正直、俺以外の奴らに興味はないが。かといって、これから大魔法祭までのライバルとなるのだ。全く知らないというのも問題だろう。
ウチのクラスからフィーラ、ギルガル……他クラスでも注意すべきはやはり績上位20位以の代表者達だろう。勿論、シンセスティアもクラス代表となっている。
Advertisement
選抜戦のルールは、この選抜戦で勝ち抜いた上位3名を大魔法祭の代表にするというもの。基本的に魔法のみの一対一による決闘方式。即死させなければ〈回復〉で十分復活させられる點から、殺さない程度のダメージは許されている。とはいえ、魔法使いを育する學院なだけあり……萬が一殺しても責任に問われることはない。こと俺に限っては分からないが。
「選抜戦は來週から……みなさん、選ばれた三人は頑張ってください。そして、殘念ながら今回選ばれなかったみなさんは來年こそ選抜戦に出場できるよう勉學に勵みましょう」
コーラス先生がそう締めて、今日は解散となる。まだ時間としてはお晝寢頃で、し時間が空いたなと思いながら荷を纏めていると多方面からの視線をじ、教室を見回してみる。
見ると、選抜戦に選ばれなかった學生らがどこか俺に嫉妬やら、恨めしそうな視線を向けていた。醜く愚か……的に問われると回答に困るが、とにかく愚か。
俺は努力を忘れ、己の家の権力を後ろ盾に威張り散らす現代の腐った貴族が心底嫌いだ。平民を貶すのは別に構わない。無知で、薄で、やれ責任がなんだと貴族に押し付けて自分は日々の生活に手一杯。そんな甘ったれた平民市民國民など、貶されて當然だ。
貴族は上に立ち、平民に命令できる権力があるが故に自由はない。多くの束縛をけ、結婚など許されない。
逆に、平民は自由だ。何をしてもいい。最低限の社會ルールに遵守すればあらゆることが認められている。しでも知恵が回れば、商売でもやって大儲けする道もある。
だが、そんなこと教えられなかっただとか、知らないだとか……そんな無知を恥ずかしげもなく振りかざし、まるで正當な理論武裝をしている気になっている。
愚か愚か、稽稽。
この言葉は、俺の信條。俺はそんな輩にはならない。平民でも力を示せることを……もっといえば、スラム出の貧民で、両親もおらず、たった一人で今日まで生きてきた俺ならば、示せると思ったから俺は魔法使いを目指している。
商売でり上がる?
められた力が目覚める?
そんな甘い考えや、非現実的な夢に縋っちゃいない。俺は俺の実力で、全てを屈服させ、認めさせる。そのために、ここにいる。
「ふう……」
し熱くなったと自覚し、クールダウンするために一息吐く。と、そのタイミングに合わせてフィーラが手を後ろに組んで俺の近くまで歩いてきた。
「隨分と見られてますなー」
「注目されるのは存外に良い気分だな」
「悪い意味で……だけどね」
フィーラは悲しそうに一瞬目を伏せ……直ぐにいつものように朗らかな笑みを浮かべる。
「ごめん……。一番、嫌な思いしてるの……リューズくんだよね」
「別に、そこまで嫌な気分でもねぇよ。馬鹿共が嫉妬してるだけなら、むしろ優越に浸れる」
俺がそう言ってやると、クラスメイト達からの視線がより強くなった。怒ってるな……と思った瞬間、俺とフィーラの會話にダンっと機を叩いて割ってる者がいた。
「いい加減にしろよ……このド平民風が。たかが、選抜戦の代表になった程度で!」
俺はその人を見て、はんっと鼻で笑う。
「誰かと思えば……ビュルトレア男爵家の次期當主、アルディ・ビュルトレア殿か。今回の中間試験は筆記と実技の総合で144位だった?學年250名のの約半分より下なわけだが……ほうほう、たかが選抜戦に選ばれなかっただけはある。その績じゃあな」
「んぐっ!?」
俺はアルディのぐらを摑み、その事実を叩きつける。他者を貶めるだけで、自らを磨かない愚か者……まさにこういう人だ。俺が嫌いな人種というのは。
アルディはまさか俺が彼の績を知っているとは思わなかったのだろう……とても驚いた顔をしていたが、何も驚くことはない。
「……俺は、このクラス全員の績を知っている」
「「っ!」」
靜かに述べた言葉に、クラス連中がゾッとしたように一歩後ずさる。
「今後、誰が敵になり得るか知りたかったからな。他クラスや三年はこれから調べるとして……」
結果的に案の定、フィーラが選抜されて、ギルガルが選抜された。そして、俺とこの二人を除けば我がクラスの連中は揃いも揃って低レベル。けないことこの上ない。
「悔しければ俺に勝ってみせろ。文句はそれから聞いてやるが……負け犬の遠吠えを聞くつもりはない」
☆☆☆
「あっはははは!」
「おい、笑いすぎだろ」
「だっだって……くふふ。まさか、あそこまで言っちゃうなんてね。みんな口ポカーンて開けたままかなくなってたし」
たしかに……あの間抜け面は面白かった。
俺とフィーラは學院を出て、王都の街に繰り出していた。黒服さん達が例によって迎えに來ていたフィーラなのだが、凄くお願いしたらしくついに黒服さんが折れたらしい……俺も渋々というかシクシク俺にフィーラをお願いしますという黒服さんの頼みを斷れず、今日こうして街へ出かけることになった。
まあ、丁度時間も空いたからいいかというのが本音だ。それに、見た目は良いフィーラだ。遊びに行くというのも……何となく役得である。
「よーし!どこいこっか!?」
「ふむ……金はないからな。どうする?帰る?」
「なんでよー!もうっ……」
プンプンとフィーラは憤慨する。実際、金がないのは本當だ。金袋を見せるとフィーラが怪訝な眼差しで俺を見る。
「それ、男の人としてはどうなの?」
「それを言われる正直痛いが……金に集るは生憎と嫌いだ」
「手厳しいなぁー……。ま、以前に私に勝ったっていう功績を稱えて何か奢ってあげるよ」
「それは……なんか悪い気がする」
「いいよ。遠慮しないで?」
「んじゃあ、最高級の――」
「遠慮なさすぎ!」
遠慮するなって……言ったんだよなぁ。
【書籍化】斷頭臺に消えた伝説の悪女、二度目の人生ではガリ勉地味眼鏡になって平穏を望む【コミカライズ】
☆8/2書籍が発売されました。8/4コミカライズ連載開始。詳細は活動報告にて☆ 王妃レティシアは斷頭臺にて処刑された。 戀人に夢中の夫を振り向かせるために様々な悪事を働いて、結果として國民に最低の悪女だと謗られる存在になったから。 夫には疎まれて、國民には恨まれて、みんな私のことなんて大嫌いなのね。 ああ、なんて愚かなことをしたのかしら。お父様お母様、ごめんなさい。 しかし死んだと思ったはずが何故か時を遡り、二度目の人生が始まった。 「今度の人生では戀なんてしない。ガリ勉地味眼鏡になって平穏に生きていく!」 一度目の時は遊び呆けていた學園生活も今生では勉強に費やすことに。一學年上に元夫のアグスティン王太子がいるけどもう全く気にしない。 そんなある日のこと、レティシアはとある男子生徒との出會いを果たす。 彼の名はカミロ・セルバンテス。のちに竜騎士となる予定の學園のスーパースターだ。 前世では仲が良かったけれど、今度の人生では底辺女と人気者。當然関わりなんてあるはずがない。 それなのに色々あって彼に魔法を教わることになったのだが、練習の最中に眼鏡がずれて素顔を見られてしまう。 そして何故か始まる怒濤の溺愛!囲い込み! え?私の素顔を見て一度目の人生の記憶を取り戻した? 「ずっと好きだった」って……本気なの⁉︎
8 136僕の妹は〇〇ですが何か問題ありますか?
人と妖怪が共存するようになっても思春期特有の悩みは存在する。 僕の妹もその一人だが、僕はなんとか妹の力になってあげたい。 これは半人半鬼かつ無自覚のシスコンである少年が高校生活や家庭のゴタゴタ、戀愛、時折起きる事件などを通して成長していく物語である。
8 196転生したら軽く神王超えてました
學校に行く途中トラックに轢かれそうな幼馴染女の子を助けて共に死んでしまった。 目を覚ますと白い空間に居た…
8 83破滅の未來を知ってしまった悪役令嬢は必死に回避しようと奮闘するが、なんか破滅が先制攻撃してくる……
突如襲い掛かる衝撃に私は前世の記憶を思い出して、今いる世界が『戀愛は破滅の後で』というゲームの世界であることを知る。 しかもそのゲームは悪役令嬢を500人破滅に追いやらないと攻略対象と結ばれないという乙女ゲームとは名ばかりのバカゲーだった。 悪役令嬢とはいったい……。 そんなゲームのラスボス的悪役令嬢のヘンリーである私は、前世の記憶を頼りに破滅を全力で回避しようと奮闘する。 が、原作ゲームをプレイしたことがないのでゲーム知識に頼って破滅回避することはできない。 でもまあ、破滅イベントまで時間はたっぷりあるんだからしっかり準備しておけば大丈夫。 そう思っていた矢先に起こった事件。その犯人に仕立て上げられてしまった。 しかも濡れ衣を晴らさなければ破滅の運命が待ち構えている。 ちょっと待ってっ! ゲームの破滅イベントが起こる前に破滅イベントが起こったんですけどっ。 ヘンリーは次々に襲い掛かる破滅イベントを乗り越えて、幸せな未來をつかみ取ることができるのか。 これは破滅回避に奮闘する悪役令嬢の物語。
8 83俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。
プロの作家となりかけの作家、イラストレーター。三人で小説を生み出していく軽快意味深ラブコメディ。高校を入學すると同時に小説家デビューを果たした曲谷孔と、同じ高校に入學した天才編集者、水無月桜、イラストレーター神無月茜の三人が織りなす、クリエイターならではのひねくれた純情な戀愛物語。 ※タイトル変更しました
8 154神籤世界の冒険記。~ギルドリーダーはじめました~
ガチャに勤しむ會社員郡上立太は、コンビニで魔法のカードを手に入れた帰りに異世界へと送り込まれてしまった。それは彼がプレイしていたゲームの世界なのか、それともよく似た別世界なのか。世界を統治する『虹の女神』と、彼女に瓜二つの少女の正體。彼がこの世界にやってきた理由。これはいずれ世界を震撼させることになる男、『塔』の冒険者たちを統べるギルドマスターリッタ・グジョーの物語である
8 162