《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》復讐の王
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フィーラと一緒に街中を歩き回り、やれ案やら荷持ちやらをやらされて……気付けばすっかり辺りは夕焼けに染まっていた。
夕暮れ時の暁の空を背景に、川を渡る大橋の上を歩く俺たちは黃金に輝く川を見て嘆の息をらした。
「綺麗……」
「クソッタレた國にしては悪くない景だな」
「はい、今ので臺無しになりましたー」
そんな軽口を叩き合いながら……ふと、フィーラは足を止めて夕日を見つめていた。俺もつられるように夕日を眺める。
「こういうところにはさ、私が……夕日が綺麗だねって言ったら『君の方が綺麗だよ』って言ってくれるロマンチックな殿方と一緒に來たいものだわ」
「お前より夕日の方が綺麗だよ」
「たしかにそうですね!」
隣でキーキーとうるさいフィーラは無視し、俺も何気なく夕日を見つめ続ける。暫くの間続く沈黙の中には、街の人々が行きう音や聲、川の流れる微かな音が充満している。
それに耐えきれなくなったのは、意外にも俺自であり……俺はふと何気なくこんなことをフィーラに尋ねた。
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「なんで魔法使いになろうと思ったんだ?」
「んー?」
俺の質問に、フィーラはしだけ逡巡するように顎に手をやり……それからニッコリと満面の笑みを浮かべ、何でもないように答えた。
「人を殺すためだよ・・・・・・・・・」
「…………」
それは子供が大人に自分の夢を語るが如く無邪気で、だがたしかな信念の篭った夢だった。それで脳裏に思い起こされたのは、あの夜……俺がこいつに追いかけ回されていた夜のことだ。
黒い靄を纏ったフィーラは、俺に対して恐ろしいほどの敵意、殺意、憎悪を向けて襲いかかってきていた。何度も何度も、想い焦がれるかのような言葉を……彼はんでいた。
それこそがフィーラ・ケイネス・アグレシオの本質。クラスメイトや俺に向けるこの笑みが、偽りであり、その奧には今にも自分のすら灰に変えてしまうような烈火の如き炎を宿している。
俺は彼のソレには何も言わない。何を言っても仕方ないからだ。だが、不自然に思った俺は訊かずにはいれずに自然と口を開く。
「なんでそれ、俺に話した。そんなもん……いつものお前なら適當に流して答えるだろ」
至って普通の疑問。誰かを殺したいという願いを他人に話すのは狂っている。
「別に、リューズくんになら話してもいいかなって。リューズくん、話しても誰かに言いふらしたりしないだろうし、興味もないでしょう?」
そう言われると……まあ、たしかにない。
他人は他人。俺は俺。
俺には俺の目的があるし、フィーラにはフィーラの夢がある。そういう個人としての違いなど、この世界には幾千幾萬と存在する。今更そこを言及しても仕方ないことだ。
「まあ……いつかリューズくんが私に興味を持ってくれた時にでも、話してあげる。復讐に燃える愚かなお姫様の話し」
「たしかに愚かだな……そいつは」
俺の言葉に苦笑したフィーラは頬をポリポリ掻きながら、返すように訊いてくる。
「ねぇ、リューズくんはどうして魔法使いになろうと思ったの?」
「ふむ……々あるが、強いて答えるなら自分のためだな」
「そっかー本は私とあまり変わらないんじゃない?」
「一緒にするな」
「手厳しいなぁー」
フィーラは楽しそうに笑うと、再び橋の上を歩き出した。軽やかな足取りに、俺は後ろから付いていく。すると、タイミングを見計らったように風が吹く。突発的な強風で、思わず顔を守るように手を顔の前に出した俺は……視界に可らしいピンクのものが見えたのを見逃さなかった。
どう見ても風で捲れたフィーラのスカートから見えたパンツだった。
フィーラが咄嗟にスカートを抑えて後ろにいる俺に目を向けてくる寸前に、俺は視線を夕日へと向ける。
「見た……?」
「夕日が綺麗だ……」
「隠すの下手くそすぎないかな!?」
我ながら紳士的対応だと思ったのだが、どうやら俺の紳士度が足りなかったらしい。慣れないことはすることじゃないと俺は頭をふり、やれやれと肩を竦めた。
「可らしいピンクのパンツが見えた」
「見たかどうか訊いてるのにどんなパンツかなんて訊いてないよ!?変態!スケベ!バーカバーカッ!」
「おい待て。変態とスケベはともかくバカは許さないぞ」
「前者の方が問題でしょ……」
いや、それはいい。ある意味で紳士的だ。
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