《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》容赦なし
ウィリアムが展開したのは――『防魔法』『創造魔法』『付與魔法』だ。
それぞれ、〈防〉〈環境〉〈付與〉系統の魔法が発……リューズの目で見た限りでは、【ディフェンス】【クリエイト・フィールド】【エンチャント・フィールド】である。
環境創造は『創造魔法』の中でも高難易度に位置し、これらを展開している以上ウィリアムは無防備だ。加えてかなりの集中力を有するために時間もかかる……ウィリアムが渋っていた理由だ。
そんな無防備なウィリアムを前に、リューズは正面に立ち待つ。舐めているのではなく、ただ真っ向からそれを叩き潰すことこそが己の力を示せると考えているからだ。
平民だから?貴族だから?
そういう考えこそが愚かであり、稽。リューズは今こそ、そういう舊時代的考えを吹き飛ばし、新たに平民の……社會的弱者達の道を切り開こうとしていた。時代に刃向かう先駆者……それがリューズ・ディアーだ。
「いくぞ……リューズくん!これが僕の『固有魔法』【我が栄の舞臺上グランド・アルベルト】!」
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ウィリアムの『創造魔法』でアリーナの舞臺が作り変えられる。気付けばそこは、まるで夜會の會場。華やかな會場に、不恰好なリューズと、しい正裝を見に纏うウィリアムがいた。
「この空間は僕の創り出した世界さ。この中では、見合った格好していないと様々な制限がかけられる」
「ほう?」
と、リューズが軽く刀を振るうと凄い重力が、重圧がに負荷をかけてくる。が重く、思うようにけない。このウィリアムの世界に、一何の魔法が付與されているのかは分からないが……つまるところ、この世界のルールから逸すると制限を掛けられるわけだ。逆に、ルールに従えば相応にバフをけることができるのだろう。
「ふっ!」
ウィリアムは盾を捨て、剣を片手ににリューズに襲い掛かる。速度も正確さも先ほどよりも速く、鋭い。リューズがカウンターに放った一閃はにかけられた負荷により遅くなる。しかし、ウィリアムはその太刀をけるように立ち止まると……ガキンッと音を立ててリューズの刃はウィリアムの正裝すらも斬れずにその勢いを失ってしまう。
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「厄介だな……っ!」
直ぐに飛んできたウィリアムの攻撃を重いを引きずりながら躱したリューズは、そんな悪態を吐いた。
「さぁ!どうする、リューズくん!僕は本気だ!君も本気でこい!」
「言われなくても……」
リューズの『無効魔法』では、これほど緻なウィリアムの『固有魔法』を打ち消せない。『無効魔法』はそこまで萬能な魔法ではない。
リューズは幾度もウィリアムと剣をわし続け、さすがに重いが辛くなり、息が上がってくる。
「どうしたんだい?肩で息をしているよ」
「…………」
これはたしかに強いなと……リューズは思う。そしてそれは、観客席で見ていたフィーラも同様で、ウィリアムに賞賛を送っていた。
「リューズくんを追い込むなんて……強い」
「生徒會副會長は伊達ではありませんよ。勝負……ありましたね」
「…………」
エリーザはウィリアムの勝利を信じて疑っていないらしい。
たしかに、あの世界はウィリアムの舞臺だ。例えば、リューズがあの夜會に見合う服裝を裝ったとしてもウィリアムのような恩恵をけることはできない。あれは【我が栄の舞臺上グランド・アルベルト】というだけあって、ウィリアム個人に対しての恩恵が強い。
つまり、あの舞臺に上げったら最後……リューズはウィリアムに勝つことはできなくなる。
リューズは事実、ウィリアムに押されていた。未だそのにウィリアムの攻撃をけたことはないが……と、そこまで思考が至ったエリーザは驚愕し、フィーラはほくそ笑む。
「……この戦いが始まってから一度もウィリアムの攻撃が當たってない?」
「リューズくん……そろそろ終わらせるかな」
そのフィーラの期待に応えるように、誰から見ても不利な狀況であるとリューズは……そのから魔力を迸らせる。
何度も打ち合っていたウィリアムは既に理解していた。この戦いが始まってから、リューズは一度もウィリアムの攻撃をけていない。それは、ウィリアムの『固有魔法』が発してからも同じだ。
リューズは重くなっているはずので、信じられないような速度でウィリアムの懐にり込んだリューズは……刀を手放し、でもってウィリアムの肩の関節を外した。
「うぐっ!?」
「……」
リューズはさらにもう片方の肩も外す。臼は【ディフェンス】で己のさを増しても防ぐことはできないし、【リジェネイト】によって治癒力を高めてなおるものでもない。
両肩の関節が外れ、剣を振るうことが葉わなくなったウィリアムは肩を嵌めようとするが……リューズは手放した刀を創造し、ウィリアムの斬る。だが、それは先ほどと同じようにウィリアムのいを切り裂くことはできなかった。
リューズはやはり斬れないと見ると、徐にウィリアムの構に刀の先を突っ込む。無論、【ディフェンス】でくなっているために刃を突き刺したとしても斬れることはないだろう。ならばと、リューズは容赦もけもなく……魔力を刀に伝えてウィリアムのにある切っ先から【ファイア】を直接を叩き込んだ。
「んんーーっ!?」
「…………」
己のから燃やされ、発させられる未曾有の覚にウィリアムは悲鳴を上げる。それでもウィリアムの【ディフェンス】は破れない。
なんとかウィリアムは肩を嵌めると、直ぐ様リューズとの距離を開けようと腳を出すが……不用意に出した腳をリューズは腕で絡めとり、そして……再び関節技による痛みがウィリアムを襲う。
関節は【ディフェンス】でも勿論強化できるものだ。しかしながら、【ディフェンス】による化には部位ごとに差が出る。化合は本人の無意識に左右され
、大抵の魔法使いは急所を守ろうとする。だから、頭や心臓……それからの表面や目、がくなる。しかしながら、関節をくしようとする者はあまりいない。そこだけ、疎かになり……結果的に関節技が効果的となる。
【ディフェンス】をどこか鎧のようなものと考えているものには、先ほどリューズがウィリアムので【ファイア】を炸裂させたような攻撃が効果的だが……さすがに生徒會副會長であった。化もしっかりとしていた。そしてここまでで二回……関節を狙われたウィリアムが次にとる行は関節の化だ。もはや、簡単に関節を外すことはできないだろう。
だが、【ディフェンス】というのは大気のようなものだ。低気圧や高気圧のような違いが出る。つまり、全まんべなくくできないのはさっきの説明で明らかになったわけだが……関節に化が回った今、なからず急所以外の部分の化が薄くなっていると考えられた。
リューズは空かさず化の層が薄そうな肩口、脇腹のを削ぎ落とす。
「ぐあっ!……くっ」
痛みに悶絶しそうになったウィリアムは、何とか自分をい立たせ、全を再び化……【リジェネイト】で回復を優先する。
(大丈夫だ……僕のさをリューズくんは破れない。ゆっくりと……時間を掛ければぼくの勝ちだ!)
この時、ウィリアムはこのような思考だった。だが、ここでウィリアムは間違いを犯した。
『固有魔法』【我が栄の舞臺上グランド・ウィリアム】は、自が作ったルールの下で効果を発揮する世界だ。そのルールは、夜會に相応しいなり、そして男子として堂々とした佇まい、紳士としての立ち居振る舞い……様々なルール、制約がある。それを守っているからこそ、ウィリアムは自分創り出した世界から多大な恩恵をけられるし、逆にリューズは制限を掛けられている。
そして……今、ウィリアムの思考は逃げに走った。それは堂々たる男子の姿に非ず、それは己が創り出した世界のルールに反することとなる。
従って、ウィリアムに掛かる幾らかの恩恵が消滅……ウィリアムの尋常ではない【ディフェンス】が解かれ、リューズはそれを見逃すことなくウィリアムの四肢を神速の下に切斷し、その首元に刃を添える。
辺りはシンっと靜まり返り、やがて思い出したように実況者が試合終了の鐘の音を鳴らした。アリーナに響き渡る鐘の音に、それでも観客達は湧き上がらない。
所詮は平民であり、この試合はウィリアムの獨壇場で終わるとされていた。誰もがそう思っていたし、実際途中そうなっていた。
ただ一人、フィーラだけはこの景を見て靜かに微笑んでいた。
「この選抜戦で必ずリベンジするから……覚悟しててね」
リベンジに燃えるが一人……リューズはそんなことも知らず、敗者に目も向けずに舞臺から降りていった。
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