《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》様と姉、時々伯爵令嬢

☆☆☆

俺の試合の後、一部崩壊したアリーナの修理のために第2試合が延期……二時間後となった。第2試合に出場予定だったフィーラにし申し訳ないことをした。

俺は舞臺から降りて、観客席には行かずに人気のない講義棟裏までやってきた。時間的にはお晝頃に當たり、晝食を取るためにここへやってきたのだ。

とはいえ、俺は別に弁當を持っているわけではない。そこで暫く待っていると、ゾロゾロと子分を引き連れたミラが両手に弁當を持ってやってきた。元々、今日の晝飯はミラと食べる約束をしており、俺はそのためにここへきた。

「よっ、4回戦進出おめでとさん」

「あぁ、あんがと……とりあえず腹減ったわ。ミラ、早速食おうぜ」

「おうとも〜」

と、ミラと俺が木に並んで座って弁當を開けたところで子分達がどこか気を遣って様子で、並んで言った。

「「じゃあ、後はお二人で!」」

「え?お前たち?」

「「いえいえ!後はお二人で!」」

お前にたちも食えと顔で言うミラの言葉を蹴り、驚いたことには子分たちはゾロゾロと去っていった。おかげミラと二人っきりとなったわけだが……それだけならいつもと同じだなと、俺はミラが作ってきた飯を食った。

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ミラの好きなのてんこ盛りで野菜が見當たらない。

「おい、野菜はどうした」

「はぁ?草食系男子なんて流行らないぞ?やっぱ、男は食だろ?」

「そういう話をしてるんじゃないんだよなぁ……」

まあ……俺もの方が好きなわけだが。ただ、やはり食事はバランス良く摂るべきだ。どちらか片方に偏っているのは、あまり好ましくない。

「ん〜!味いな!」

「…………そうだな」

が、幸せそうに食べるミラを見ているとそんな無粋なことを指摘する気も失せてしまう。仕方ない……と、俺があきらめて普通に食べようとすると、ズイッと隣に座るミラがを寄せて、フォークでぶっ刺してステーキの一切れを俺に差し出してきた。

「ほれ、あーん」

「お、おう……あ〜ん…………うん。味い」

「――ッ!……そ、そっか。そいつは良かったよ……」

おい、テレテレするな。俺も恥ずかしくなるだろ。恥ずかしいなら最初からやらないでしいのだが。

それから俺たちはあーだーこーだと楽しく喋りながら弁當を食べ……。

「おっおお……おやおやぁ〜?リューズくーん?だ、誰かな〜?その綺麗なの人はー!」

と、どういうわけかフィーラが人気のない講義棟裏まで來ており、そこで食事をしていた俺とミラを見るなりそう聲を掛けてきた。

俺が驚いていると、ミラがあからさまに不機嫌になって立ち上がり、こっちに向かって歩くフィーラと対峙するように向かい合った。

「……誰?」

「それはこっちの臺詞だっつーの」

お互い睨み合い、一歩も引かない様子。まず最初に名乗ったのは、フィーラからだった。

「私はフィーラ・ケイネス・アグレシオ。アグレシオ公國の第一王よ」

「アタシはミラ・テキラノードだ。テキラファ…………た、ただの馴染だ!」

おい、ミラの奴危うくテキラファミリーとかいいかけたぞ。俺がファミリーと繋がりがあるなんて知られたらどうしてくれるんだ……。

二人の乙は名乗った後も睨み合い。俺はその様子を、ミラの弁當を食いながら眺める。

モグモグ……。

馴染ぃ〜??」

「王様だぁ〜??」

モグモグ……。

「私、リューズくんとは學院で毎日で仲良くしてあげてますぅ〜」

「アタシは毎日リューズの飯を作ってあげてますぅ〜」

「「…………」」

モグモグ……って、おいお前ら。

まずフィーラ、仲良くしてあげてるってなんだこの野郎。たしかに、割といつも一人でいる俺に話しかけてくる奴なんてフィーラか、シンセスティアだけだ。こうして言うと、二人が凄く優しい人間であるかのように聞こえるから不思議だ。

そして、ミラよ。お前も何言ってんだ。飯を作ってもらうのは有難いが……別に頼んじゃいない。作ってあげてるってなんだ。

俺が心でツッコミをれても、無論二人にそんな俺の聲が聞こえるわけもなく……尚も不な爭いを続ける。

「ぬぁにが王様だ!このスットコドッコイ!」

「なっ……なんですって!?このバカアホドジマヌケ!」

ミラの弁當を食べ終えた俺は、容をその場に置いて立ち上がり、ソッとその場を離れる。らぬ祟りに何とやらだ。

俺が去った後も、ギャーギャーと二人のの罵詈雑言が聴こえてくるが……聞かなかったことにしよう。そして、見なかったことにしよう。あんな馴染も、王様も見たくねぇよ。なんだ、あの鬼の喧嘩。

俺はテレテレとアリーナの方まで戻り、観客席へと歩を進めていると今度はシンセスティアに聲をかけられた。

「あら!ド平民じゃない。まさか、4回戦まで上がってくるとは……わたくしに座學で勝つだけはあるわね」

「実技も負けてるだろ」

「せ、績はともかく!実踐なら負けないわよ!」

シンセスティアは言い訳するようにそうぶ。こいつは本當に平常運転だ。こういうところ、本當に凄いと思う。君の金魚の糞は、俺を見てプルプル震えているというのに……。

シンセスティアは一頻り一人でペラペラ喋った後に、本當はこれが訊きたかったかのようにスッと真面目な顔つきで俺に問い掛けた。

「……ねぇ、先ほどの試合の最後に見せたあれ。あれは『固有魔法』かしら?」

「は……?あぁ……まあ?」

「…………そう」

今までに見たことがないほど細められたシンセスティアの瞳は冷たく、冷酷。底冷えするような絶対零度の視線を俺に向けていた。とても、あのお転婆娘の半端ないシンセスティアとは思えなかった。

しかし、次の瞬間にはそんな雰囲気もどこへやら……いつもの調子のシンセスティアで高笑いしていた。

「おーほっほっほっほっ!げふっ!?…………」

「…………」

高笑いしていて噎せたシンセスティアがお嬢様らしからぬ聲を上げていた。何とか笑いを堪えるも、震える肩は抑えられず……シンセスティアがそれを見て頬を紅させた。

「――ッ!で、では……わたくしは第3試合があるから失禮するわよ!」

「あぁ」

シンセスティアはふんっと鼻を鳴らし、踵を返した。その後をゾロゾロ金魚の糞共が追いかけていく。

俺は頭の後ろを掻き、次はフィーラの試合だなと……改めて観客席へ向かった。

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