《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》準決勝――エリーザ
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ウィリアムが去った後、俺は大きく溜息を吐き、椅子の背もたれに重を預ける。
「……はあ。思いの外、疲れるな」
「リューズは、口よりも先に手が出るからなあ。渉事には向かない格だよな〜」
「…………」
自分で分かっているが、ミラに言われるのは釈然としない。
ミラはガサツそうに見えて、繊細だというのは俺が一番よく知っている訳だが。
それにしたって、ミラは元々臆病な格で、しかも人見知りが激しい。そのミラに、渉云々で指摘をけるとは……。
「な、なんだよ……? その目は。まるで、あたしに言われるのは納得できないみたいな」
「みたいなじゃなくて、納得できない。昔のミラは、俺の歳上の癖に、いつも俺の後ろにちょこちょこくっ付いて、可げがあったというのに……」
「ちょ、昔は昔だろ!?」
俺は橫で騒いでいるミラを無視し、今は亡き昔のミラに想いを馳せる。
あの頃は、可かったな。本當に。
いつも、今日フィーラにファミリーの関係者だとバレた時みたく泣きじゃくっていた。
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「さて、寢るか」
「おい! あたしを無視するなあああ!」
「……俺は明日、準決勝なんだ。今日は沢山戦った上に、慣れない事もしたから疲れてんだ。早く休ませてくれ」
俺は欠をしながらミラに訴えかける。
ミラは口を引き結び、納得してない表で不貞腐れた様に頬を膨らませているが、結局文句は言わなかった。
「まあ、リューズがみんなのために頑張ってるのは知ってるからよ……。でも、選抜戦なんて出る必要あるのか? 結局、前々からかしてた暴計畫を使うんだろ?」
「ん……ああ。選抜戦に意味が無い訳じゃない。元々、あれは世界的催しの大魔法祭に向けての前準備。選抜戦に出る意義は充分だ」
「だけど、お前、暴起こすとして。そしたら、首謀者として名前が上がるよな? そんな奴が、選抜戦で勝ったとして、大魔法祭に出場できる者なのか? ほら、他國からしたら々と……」
俺はそこまで考えておらず、思わず頬を引き攣らせる。
な、なるほど……。
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「……なら、顔でも隠すか。適當な名前で、仮面を付けた謎の人が暴を起こした首謀者とでもしておけ。幸い、暴計畫に賛同している民衆で、俺の顔を知ってる人間はファミリー以外にはいない」
この計畫は、主にファミリーの連中に進めてもらった事だ。
所詮、俺が魔法使いとして大し、王國を部から変えていくというのは、ただの代替案でしかない。本命は、この暴計畫にある。
「顔を隠すか……。何かカッコいいな! テロリスト……みたいなじだな」
「というか、テロリストだろ……」
我ながら、テロリストなど呆れてしまう。
「とにかく、俺は寢るから。決行日までに準備を整えておく様に。あと、ウィリアムとの話でもあったが。帝國の干渉・介が予測される。対応できる様にな」
「おうとも〜」
俺は全てミラに丸投げし、自分のやるべき事に専念するため、早めに就寢した。
そして、案の定俺のベッドにり込んできたミラを再び家の外に放った。
☆☆☆
『さあ! 本日は準決勝、そして決勝が行われます! 昨日のルーレットにより、五回戦第一試合は、我が學院の誰もが知る生徒會會長――エリーザ・カマンガ様と、その対戦となるのは! 選抜戦始まって以來の異端児――リューズ・ディアーだあああ!』
既に、俺とエリーザは戦いの舞臺に上がっており、司會兼実況の聲が聞こえる中、俺達は対峙する。
「リューズさん。調子の方はどうでしょうか?」
エリーザが、大歓聲の中でもよく通る、き通った聲音で俺に訊ねてくる。
「問題ない。し寢不足なくらいだ」
「ああ、それは大丈夫なのですか?」
「睡眠不足でパフォーマンスが低下する事はないさ」
俺が言うまでもなく、それをエリーザが知らない筈も無く、エリーザは微笑みを浮かべて。
「睡眠不足は集中力を低下させます。気力は足りていますか? 余所見しながら躱せる程、私の攻撃は甘くはありませんよ?」
「理解しているつもりだ……」
エリーザ・カマンガ……。
選抜戦でし実力を拝見したが、恐らく並みの上級魔法使いを大きく上回る実力がある。
彼の主武は特徴的で、盾・だ。
大盾と小盾を、それぞれ右手と左手に裝備した、異の二刀流使い。
エリーザの長は、一六十センチ半ば。
その全をすっぽりと覆い隠す大きさの大盾と、前腕に裝著された円形狀の小盾は、小回りが利く。
全を覆う大盾は鉄壁。
その守りを崩すのは困難であり、高い防技の前に対戦相手は戦意を喪失するという。
しかも、小回りの利く小盾が厄介で、い所にまで手が屆き、大盾程では無いにしろ。
エリーザの冴え渡るセンスは、的確に相手の攻撃を小盾で防ぐ。
右の大盾と左の小盾をスイッチさせて戦う戦闘スタイル。
大盾は完全防勢で、攻撃に転じる際に左の小盾にシフト。相手の攻撃をけ流しつつ、右の大盾からカウンターが飛んでくる。
その破壊力は計り知れず、巨大な質量で吹き飛ばされた選手を何人も見た。
自ら仕掛ける事無く、大盾の隙間からこちらをジッと伺う鋭い瞳。
その圧迫は、実際に対面しなければ分からない。
『それでは、場も溫まってきたところで。準決勝――第一試合を始めます! 両選手は所定の位置について下さい!』
指示通り、所定の位置に足を著く。
そして、會場に沈黙が落ちた時。
『……始め!』
鐘の音共に、俺とエリーザがき出す。
俺は『創造魔法』の【クリエイト・ウェポン】で、いつもの刀を手に駆け出す。
エリーザもまた、【クリエイト・ウェポン】を使い、大盾と小盾を裝備。
「すぅ……っ!」
俺は息を吸い、腹に力を込め、気合い一閃。
エリーザに両手で握った刃を振り下ろす。
それに素早く反応し、大盾で防ぐエリーザ。
大盾の後ろで、俺を覗き見ているエリーザは、出方を伺っている様子。
俺は構わず、刃を盾の上でらせ、を一回転。勢いそのまま、橫薙ぎに払う。
すると、エリーザは大盾でそれをけず、瞬時に小盾にシフトチェンジ。
俺の刃に対し、斜に構えた小盾で衝撃をけ流し、俺の攻撃の反を利用。大盾による鋭い突きが、目の前に飛んできた。
「っ!」
正確さ、速さ、全ての技量が卓越しており、俺は目を見開く。
大盾は十字架にも似た形狀で、先が尖っている。
そのため、首をし大きく傾ければ避けられた。
だが、エリーザの攻勢はそこで止まらない。
カウンターが主であったエリーザだったが、今回は大盾を突いた後、引き戻す力で小楯を突き出してきた。
俗に言う、シールドバッシュにも似た攻撃。
俺は、上を大きく仰け反らせるスエーバックで、エリーザのシールドバッシュを回避。
同時に、そのまま地面に手をついて、大きくバク転。
エリーザと距離を取ると、見計らった様にエリーザが魔法を唱え、追撃してくる。
「【ファイアボルト】」
『攻撃魔法』〈三屬〉【ファイアボルト】による追撃。
速度が速く、避けられないと踏み、俺は『無効魔法』【キャンセル・エレメント】を、『付與魔法』【エンチャント・キャンセル】を併用して行使。
右手に握る刀に『無効魔法』を付與し、エリーザの【ファイアボルト】を斬り払う。
會場に炎が渦巻き、やがて、それが消えるとようやくエリーザの攻撃が止んだ。
俺の視線の先には、平然と大盾を構えているエリーザが立っている。
「……これは、予想以上に強いな」
俺の呟き聲が聞こえたのか、盾の裏でエリーザが。
「ああ、お褒めのお言葉。ありがとうございます」
と、謙虛に答えた。
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