《俺が斬ったの、隣國の王様らしい……》VSイージス

☆☆☆

し、場所を変えましょうか。【クリエイト・フィールド】」

エリーザがそう発すると、殺風景な円形闘技場が、見晴らしの良い高原に変化する。

かなり高度な『創造魔法』だ。これだけの〈環境〉作が行える者は、そう多く無い。

「綺麗な景だが、何故高原なんだ?」

「選抜戦は観客が見ていますから。魅せる事も、重要だと思っています」

「流石、生徒會長……」

で観客が盛り上がっている。うるさい……。

ふと、俺が苦い顔をしていると。

「使わないのですか? 三回戦、四回戦と続けて見せた、あの『固有魔法』を」

エリーザは俺に挑戦的な笑みを浮かべて言った。

俺は更に苦い顔を濃くして。

「そちらさんは、俺の手のを知ってるが。俺は知らないんだ」

「なら、あの場で使わなければ良かったのでは?」

「……手加減が苦手なんだ」

エリーザは俺の回答に、暫し呆気に取られた様子を見せ、コロコロと笑う。

「そうですか。では、私の手のも明かしましょう。どうぞ、どこからでも掛かって來てください」

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「……それじゃあ」

俺は不敵な笑みを浮かべ、攻撃をうエリーザに向かって、刀を上段に構え、場を支配する。

と、その時點で俺は眉を顰めた。

広げた俺の支配領域で、エリーザは平然と立っているのである。

「……なるほど。これが【一閃】ですか。『固有魔法』というよりも、殆どが剣。とても、魔法とは呼べないものです」

エリーザは盾を構えたまま。

「リューズさんは、殺気を飛ばして相手の運機能を麻痺させていますね。実際、目の前にしなければ分からないものですが……」

「……正解だ。あんた、凄いな」

「いえいえ。しかし、殺気でけなくなるのは、普段から命の危険とは無縁な貴族くらい。その様な手品で、私のきは封じられません」

「そうみたいだ……」

俺は肩を竦め、上段に構えた刀へ力を送る。

「では、いつでもどうぞ」

エリーザが再び盾を構え直すのを見て、俺は靜まり返った會場で。

「【一閃】」

上段に構えていた刀を振り下ろすと、その延長線上の地面、空間が一瞬にして縦に切斷。

高原を縦に切り裂く斬撃が、エリーザに向かって前進する。

全てを切斷する俺の渾の一振りに対し、エリーザは。

「【イージス】」

大盾を地面に突き立て、バリアの様なものを前方に展開する。

直徑にして數十メートルの巨大なバリアに、斬撃が衝突。

大気も波打つ衝撃が一帯に走り、高原の草木が大きく揺れ、會場風が駆け抜ける。

やがて、風が治ると、エリーザの展開したバリアの裏側以外、地面が吹き飛ばされていた。

エリーザは立ったまま。

「……【一閃】を防いだのか?」

「ああ、とても重い一撃で、私も防げるか分かりませんでした。しかし、どうやらリューズさん。あなたの切り札は、この私に、通用しない様ですね?」

勝気な表で俺を見下ろすエリーザ。

俺はしムッ思った。

「おい、勝ったつもりか? こんなのは、序の口だぞ!」

「ああ、そうなのですか? しかし、どの様な攻撃も、私の盾の前では無力ですが、ね?」

い、言うじゃないか……。

【一閃】を防がれたのは、驚いた。

しかし、フィーラクラスの魔法使いなら、あれを防ぐために手立てもあるだろう、こんな事で、一々驚いていられないな。

俺は気を取り直しつつ。

「しっかし、【イージス】か。【イージス】といえば、『固有魔法』の中でも最高峰の、理・魔法を問わず。あらやる攻撃を無効にする魔法。元々の使い手がイージスという名前であった事から付けられた名前で、現在の『固有魔法』の防系で最も難易度が高いんだだったか。それを會得してるとはな」

「お褒め頂き嬉しいですね。リューズさんの言う通り、【イージス】は鉄壁。これを破る手段が、果たして殘っていますか?」

どこまでも挑発的だな。この……。

エリーザ・カマンガは、怠惰な人間じゃない。そう、俺が嫌う墮落した人間ではなく、勤勉で努力家だ。

だからと言って、別に手を抜いている訳ではない。今まで通り、全力を盡くしている。

努力し、結果を出そうという相手に手を抜くなど、それは俺の矜持に反する。

俺は、俺の矜持に従い、正面からエリーザと戦う事にした。

そう、今までも。そして、これからも俺は出し惜しみなんてしない。

「お前の守りを破る手段があるか……? あるさ、あるとも。俺の切り札が、【一閃】だけとは言ってないからなあああ!」

俺はそうび、荒れ果てた高原を駆け出す。

を低く保ち、刀を地面に這わせる。

同時に【エンチャント・エレメント】を刀に施す。すると、地面を這う刀が火花を散らす。

地面は土で、によるものでは無く、刀に炎屬を宿したからだ。

エリーザは接近する俺に構え、そして。

「【火柱】ー!」

「【イージス】!」

下から上に刀を振り抜くと、炎の塊が柱の様に下から上へと発。

エリーザの【イージス】を焦がしに行く。

炎と熱波が、今度は會場を襲う。

と、エリーザが炎の中から飛び出し、俺に向かって大盾を突き出してきた。

「ちいっ!? 【火柱】も防いだか!」

「危なかったですがね! まさか、下からくるとは……。咄嗟に盾を地面に向けたので、助かりました」

なるほどな。

判斷力、反速度も並外れている。

なら、今度はエリーザの反速度を超える速度で――!

俺はエリーザの突きを躱し、カウンター一閃。

を翻し、両手で柄を握り、橫薙ぎに払う。

「……【瞬水】!」

水すらも斬られた事に気が付かない程に速く、正確な一振りから名付けた技。

高速の一振りを前に、エリーザは小回りの利く小盾を用に使い、これをける。

しっかりと、盾の中心でけたエリーザだったが、【瞬水】はその速さが故に、威力も高い。

エリーザはけた衝撃を捌き切れず、そのは地面から引っこ抜かれ、思い切り円形闘技場の壁に吹き飛び、激突した。

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