《職業通りの世界》第11話 特訓開始
國王様は無駄に広い食卓に並ぶ2種類の料理を見て、絶句していた。それは左隣にいる騎士団長であるカレナさんも同様で、それを見てティアナ様は気まずそうにしながらも料理を口に運んでいる。
國王様とカレナさんの前に置かれた料理は、かなり張り切ったのだろうが、ところどころがボロボロになってしまっているハンバーグ。付け合わせの野菜も焦げているところがあるし、何より彩りが無い。
対して僕たちの前に置かれた料理は、陸人くんが作った同じくハンバーグ。ただし細かく刻まれた野菜が中にっていて、尚且つ付け合わせの野菜は、小皿に移されている白菜らしき野菜の漬けだ。これが後半しつこくなってくる口をリセットしてくれる。しかもどちらもご飯と一緒に食べるものなので、ご飯が進み、特訓終わりのにエネルギーをしっかり補給してくれているだろう。
「……見栄を張んなかった方が良かったんじゃね」
小さな聲で向かいの席に座っている梶木くんがボソッと呟いた。その口の周りにはご飯粒が大量に付いている。
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「いや~、あの後の特訓は悠が張り切っちゃったから疲れたんだよな~!その後にこれは最高だろー!!」
隣に座っている空気を読めない巧くんは口一杯に食べを詰め込んで、箸で國王様を指しながら嬉しそうに咀嚼している。
「これは食べても良いのっ!?」
巧くんの橫に座っているくるみさんの向かいに座っている間宮さんは、ハンバーグと一緒に來たニコちゃんマークにが出來ているプリンを見つめている。
これは間宮さんだけなのだが何でも料理を手伝ったとか、料理を運んで來てくれるメイドさんが言っていた。
因みにそれを聞いた巧くんが「ズルイ!」とんだ瞬間、メイドさんが陸人くんに渡されたという水鉄砲をしてきたのはまだ記憶に新しい。
「…………」
無言で食べ進めるくるみさんと青山くんは、何を考えているのだろう?くるみさんは朱音さんの事だと思うんだけど、青山くんはあんまり話した事が無いから分からないな。
「………お父様、一口要りーー」
「要らんっ!!」
ティアナ様が國王様に陸人くんが作ったハンバーグを分けようとしたが、國王はふて腐れたようにぶと、目の前に置かれたハンバーグをフォークで1刺しし、口に放り込み、付け合わせの野菜を食べる事も無く出て行った。
「……一口もらえますか?」
「え、ええ。もちろんよ!」
その後に我慢していたのか、カレナさんがティアナ様に一口要求していたのを見て、僕は陸人くんの存在が大きくなりつつあるのをじ取っていた………。
「くそっ!何なんだあいつ!!」
俺は痛むをりながらやけ酒を口から溢れているのを気にせず飲む。腹が立つ事に勇者様と一緒に來た執事によって、王様も勇者様もあいつに取られてしまった。
あの廚房は俺たち料理人が居るべき場所だ!それを、執事が勝手に使い、挙げ句の果てには俺たちの仕事を奪おうとしている。これに腹立たない方がおかしな話だ。職業通りの仕事が出來ない事が、どれだけストレスか、あいつは知らないんだ!
この世界には暗黙の了解がある。それは職業を逸した事をしない、というものだ。
例えば、戦士が魔法を使っても良いが、戦闘で主軸としては使ってはいけない。何故なら、その行為が魔法使いの役割を奪う事になるからだ。あくまで、戦闘に軽く変化を與える程度しか使ってはならない。
この暗黙の了解は全ての人の共通の意識だ。それが例え植人族でも、獣人族でも、巖石族でも、……魔族でも同じだ。それをあいつは………。
「これは痛い目を見てもらわないとな……」
俺は隠す事なく笑みを浮かべた。これから起こす事が上手くいった時の事を考えてしまったからだ。上手くいけばあいつを追放して、再び俺たちが勇者様たちや王様の食事を作る事が出來る。待っていろよ、執事………!
「では、始めっ」
翌朝、騎士団長であるカレナさんの聲と共に重りを付けたクラスメイト達が一斉に走り出す。もちろんお嬢様もだ。重りの重量は5kg。走る時にはとても辛くなる重さだ。
俺はそんな訓練を見ながら重り50kgをに付けてお嬢様の隣を並走していた。
「……ねぇ……何で………陸人は………平気そうな……顔してるの…?」
「まあ、流石に重いですが、これぐらいなら支障は無いんで」
いつもの朝のランニングの時は30kgだったけど、50でも案外行けるかもな。こっちの方が汗も出るから鍛えれているだろう。
「さ、ゴールは見えているので頑張ってください!」
「……もうやだ~!!」
俺はお嬢様の周りを走りながらゴールである城の外壁を見る。順位でいうと、悠、巧、青山、梶木、間宮、俺とお嬢様、くるみだ。みんな苦痛の聲を上げていて、それを聞いたカレナさんが怒聲を飛ばしてくる。
「この程度で音をあげるなっ!!」だの、「ふざけるなっ!そこの執事!!」だの、「まだまだ序の口だそー!!」だの、口うるさいたらありゃしない。そもそも、お嬢様に訓練なんて必要ないだろ?俺が護るんだから。
「あ~!!やっと著いた~!!」
お嬢様が倒れ込むように地面に座り込もうとしたので、俺は素早く道作でシートを作り出して地面に敷く。
「あ、ありがと」とお禮を言ったお嬢様に一禮だけして応える。それから視界を走ってきた方へ向けると、小さなワイバーンが周りを飛んでいるのを気にせず、一生懸命に足をかすくるみがいる。
「くるみちゃん~!頑張って~!!」
お嬢様の聲援で一瞬だけ笑顔になると、しだけペースを速める。お嬢様が今まで寢込んでいたから、くるみは肩が狹かったんだろうが、お嬢様がいる今なら、くるみも素を出しやすくなるかもな。
「………、もう無理」
何とかゴールしたくるみはお嬢様に抱きつく。汗が凄く、眼鏡がずれ、息も絶え絶えになっている。俺は予め収納しておいた水のったボトルを取り出し、お嬢様にこっそり渡す。
お嬢様は口パクで「ありがとう」と言った後、くるみに水を飲ませた。その隣では心配そうにくるみを見つめるワイバーンがいる。
そんな様子を見たカレナさんは頭を押さえながらこっちに來て、次の訓練メニューを伝えた。
悠、巧、青山、梶木は引き続き力作りをメインとした訓練。魔法使いの梶木も力作りなのは、カレナさん曰く、戦場を走り回れる魔法使いになるためだそうだ。
間宮は向こうで言う病院である治療所を回るらしい。馬車を使わないらしいので、力もほどほどにつけれて、治癒魔法や回復魔法の練習にもなって一石二鳥らしい。
そしてくるみは完全にワイバーンを上手く指示するために騎士の人との訓練だ。カレナさんはくるみの事はもう放っておいて、ワイバーンの方を強くする方へシフトするらしい。
最後に俺たちはーー
「私との打ち合い。それしか無いだろう」
事前に俺とお嬢様との特訓の様子を聞いていたらしいカレナさんは中々キツイ事を言った。……限界突破を使わずにいけるか?お嬢様と一緒ならいけるか?
「頑張ろうねっ!陸人っ!!」
俺の隣でかなり意気込んでいるお嬢様を見て、俺は考えるのをやめた。限界突破を使わずとも、全力でやったらいけるだろ!!
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