《職業通りの世界》第12話 謀という名の嫌がらせ
「では、行きますよ」
「はいっ!どうぞ!!」
構えたお嬢様に接近してくるカレナさんに向かって、俺は武作で右手に刀を作り出し、振り下ろす。それを左に避けて躱し、回し蹴りをしてきたので、左手に盾を作って防ぐ。
「いけっ!」
お嬢様が手を地面に向けた瞬間、カレナさんの足元から10本の木のツルが飛び出し、一斉に襲いかかる。俺は巻き込まれないように後ろに下がり、追い撃ちとして右手の刀を投げつける。
「この程度では止められませんよ!」
カレナさんは剣を抜いた瞬間、目にも止まらないスピードで木のツルを切り刻み、俺が投げつけた刀を打ち落す。
「……どうされました?この前とはえらいきが鈍いですが」
「…これは訓練なんですよね?なら、普段とは違う條件でやらないと効果が薄いと思いまして」
両手に剣を作り出し、を屈める。一瞬で決めるために強化魔法をかける。
「いきますよ、お嬢様」
「うん、頼んだよ!」
お嬢様はそう言うと、俺の頭上を20にもなる氷の鳥を通過させてカレナさんに向かわせる。それからしした後に、俺は全力で飛び出した。
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「これは……、し手を焼きますね」
カレナさんは氷の鳥を全て切り落とし、俺を待ち構える。ここまでは予想通り。後は俺が決めるっ!
「うおぉぉっ!!」
「はぁぁあっ!!」
俺の2本の剣とカレナさんの1本の剣が凄まじいスピードで斬り合う。お互いが相手の剣をけ、僅かな隙間を狙って斬り込む。それをしているうちに俺の剣にひびがいった。もうそれに気づいた時には剣が壊れる數秒前。壊れる事を悟り、柄に小型の弾を道作で作り、セットし、壊れた瞬間に大きく後ろへ飛び退く。
ードォン!
小型ながらもそれなりに威力のあった弾が発し、砂煙が舞う。そんな砂煙から腕をクロスして発を防いだカレナさんが出てきた。まあ、これで終わるとは思ってなかったが、ここまで予定通りだ。
「……これには流石に驚いたがここまでーー」
俺たちの方へ歩こうとしていたカレナさんが立ち止まった。いや、止められたのだ。お嬢様が急速に大気の溫度を低くした事による、に纏わり付いた氷によって。
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もちろん、大気の溫度を低くした程度で氷は出來ない。だが、さっきに付いた氷のかけらはどうだ?外気によって溶けた氷が再度氷結。それにより、氷の拘束が可能になった。
「これまでですね」
俺は右手に刀を作り出してカレナさんの元に突きつける。カレナさんは諦めたように両手を上げた。
これが俺たちの初めての連攜が上手くいった証明になった。お嬢様には戦ってしくは無いが、やっぱりお嬢様と息がぴったりだと言うのは嬉しい。
「やったね!」
「ええ。お嬢様のおかげですよ」
「そんな事ないよ~」と、お嬢様は照れたように顔を赤くして否定するけど、実際お嬢様の魔法は全てその場その場に合っていたような気がする。
「お二人共、お見事です。えーと……「朱音です!」…朱音さんの魔法はどれもつい最近につけたとは思えないほど洗練されていますし、その時に応じた魔法の判斷もお見事です」
カレナさんの言葉を聞いて、俺の服を何度も引っ張って輝いた目で見てくることから、かなり嬉しそうだ。
そして、カレナさんの言った事から、お嬢様には魔法使いとしてのセンスがあるんだろう。それは嬉しいのだが、これを機にお嬢様が戦闘に駆り出される事があるかもしれない。そう思うと素直に喜べないのは事実だ。
「次に執事の…「陸人と申します」……陸人さんはずば抜けた狀況判斷能力と、接近戦でのな攻撃は私でも學ばされます」
いや、俺のこの戦法は武が使い捨てだから出來るものであって、その立派な剣に弾とは付けたら駄目だろ。
そんな事なんて全く考えていないお嬢様は、俺をべた褒めしてきたり、つま先立ちして頭をでてくるほど嬉しそうだ。…お嬢様に頭をでられるのは何気に期ぶりだな。むずいけど、嫌じゃない。
「お褒め頂き栄です。もっとお嬢様に相応しい執事になるため、進します」
俺はお嬢様に跪いて頭を下げると、し元気が無いというか、諦めたような口調で「そんな事、この世界に來たんだからしなくても良いのに」と言って、俺の頭をでた。
「それは無理でしょう。彼は執事なのですから」
橫から至極當然のようにカレナさんはお嬢様に言い放った。本當は俺が何か言った方が良いんだろうが、カレナさんの言う通り、この世界では職業が強く作用するらしいんだから、執事を違和なく続ける為にはこの世界に影響をけているようにしないと。
「すみませんが、騎士団長様の仰る通りで、今の自分は執事である事を止める事は出來ないのです」
「…………ならいい。帰ろっ」
お嬢様はふて腐れたように城へ向かって歩き出した。そういえば、まだ朝飯を食べてなかったな。
俺はお嬢様の背後に近づき、朝飯の要を聞く。お嬢様はまだふて腐れているが、サッパリしているものとリクエストしたので、俺はお嬢様に先に行く事を伝えて走り始めた。
「…あっ!私の分もお願いします!!」
背後から聞こえた、し恥ずかしそうに言ったカレナさんの聲で立ち止まって振り返り、「かしこまりました!」と言って頭を下げた後にまた走り始めた。
……サッパリしていて、尚且つ訓練終わりだからそれなりに腹に溜まるものは………野菜をベースにしたサンドウィッチかな?
「……は?どういう事だ?」
俺は調理室に備え付けられた大きな冷蔵機能のある完全に冷蔵庫の見た目の魔道を開けて頭を傾げていた。その冷蔵庫の中には昨日まで沢山の食材が詰まっていた筈なのに、今は何一つって無かった。
「…おおっ、これはこれは執事殿。今からお料理…ゲェ……失禮。お料理をされるのですか?」
この前に叩きつけたコックをはじめ、10人ものコックが俺に眼を飛ばしながら大きく膨れたお腹をさすっている。
「……はぁ、あれだけの量を10人で食べきるのは苦労しただろうな」
「…ふんっ、何の事かゲェ……分からないな」
調理室にある扉をひたすら開けて何か食品がないか探す。調理室からかき集めて集まったのは、非常食として備蓄されていたであろう、堅パンと干し芋、そしてさっきメイドによって屆けられた葉野菜だ。
こうなったら仕方ない、これだけで作るか。お嬢様の要通りにはいかないけど、それは俺の実力不足として怒られよう。
「すみません、し遅れました。それに、お嬢様の要であるサッパリしたものではありません。これは予想外の事態が起きてしまったのでご容赦ください」
俺はメイドたちと一緒に配膳していく。そして國王以外の全員の配膳が終わったところで説明をする。
「今回は堅パンと干し芋、葉野菜しかありませんでしたので、干し芋を軽くふやかし、食べやすくカットしたものをバターで焼いた干し芋のバター焼きと、醤油をベースにした特製のドレッシングをかけたサラダ、ミルクティーに付けてお食べ頂けるとらかい狀態で食べられる堅パンです」
自分でもかなり強引に作ったのだが、味は大丈夫だったはず…。俺はお嬢様を背後から見て反応を伺う。
「…あ、このお芋味しい…」
「この野菜も味ぇな」
「ミルクティーと堅パンがこんなに合うなんて……!」
お嬢様を始め、みんなが食べる順番を考えずに食べている。それも、味しそうに。……良かった、何とかなって。
「ふざけるなっ!そんな余りで満足出來るはずが無いだろう!!」
楽しげな食卓に大聲を上げたのは、國王に朝から重い焼き鳥を配膳して待機していたあの年長者のコックだった………。
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