《職業通りの世界》第14話 お嬢様と執事

俺が彼に初めて會ったのはあの寒い日の事。くそ親に嫌気が差して家を出て、行く當てもなくただ歩き、疲れ果ててあの橋でただ凍えていた。

俺はあそこで凍え死ぬとい頭ながらも理解していた。でも、あのくそ親のところで一生を過ごす事よりは斷然良かった。けど、い俺は死ぬのが怖くないと言える事は出來なかった、……死ぬのが怖かったのだろう。今から生きたいと願っても、葉う事は無いと理解していながら。

「…ねぇ、寒く無いの?」

そんな僕に救い手を差しばしたのは、他でも無いお嬢様だ。だから、いながらも決意した。この人の為に、俺の生涯全てを捧げようと………。

俺は目を覚ます。誰かに聲をかけられた訳でもなく、ただ目が覚めたから。

俺は起き上がり、周りを見渡す。時刻はもうすぐ夕方に差し掛かりそうというところだろうか、日はまだ橙を帯びてないが、晝の日よりは赤くなっているような気がする。

「…………」

そして、俺が寢ているベットに伏せて寢息を立てているのは、俺が仕える存在であるお嬢様だ。本來なら、お嬢様を置いて俺がベットで寢る事なんて考えられないが、きっと倒れた俺を寢かしつけてくれたんだろう。それには謝している。だから……

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「………別にもう眠くないよ」

お嬢様を抱き上げて運ぼうとしたところで、お嬢様は目を開けた。その目は寢起きの目とは違い、しっかりしている。どうやら貍寢りをしていたらしい。

「そのようですね。お嬢様の貍寢りを見破れないようでは、自分もまだまだですかね」

俺はお嬢様を下ろして半歩下がって軽口を言いつつ、スキル一覧を見る。そこには気絶する前には無かったものがあった。

スキル一覧 ー非常時発

・超速再生 (執事たる者、治療に時間をかけていられない)

通常のスキル一覧の下にある非常時発型のスキル一覧。そこにある超速再生が俺のを治したのか。どうりで、間宮じゃ修復出來ないであろうが跡形もなく無くなっている訳だ。

「……ねぇ、陸人」

「………何でしょう?」

お嬢様が真剣な表で呼びかけてきた。俺も、取り敢えずお嬢様の方へ集中する。その顔はどこか寂しさというか、後悔というか、どれにも當てはまらないような顔になっている。

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「…もう、執事はやらなくて良いよ」

…………俺は頭の中が真っ白になった。言われた事が理解出來なかった。が、心が、お嬢様の今の発言を全力でれる事が出來ないようになってしまっている。

「………もう一度、仰って貰えますか?」

「私の執事をやめて」

今度は深く、深く心に刺さった。お嬢様は俺が執事をする事を止めてしいと言ったんだ。今までの間、一度も言われなかった事を。

俺の中で何かが壊れていくような覚が襲う。足が震え、視界がグルグルと回り、頭に酷い頭痛が生じる。立っていられない……。

「大丈夫っ!?ねぇ、しっかりして!!」

お嬢様が心配そうな聲で呼びかけてくる。でも、俺の視界はもうも判別出來ないので、お嬢様がどんな顔をしているのか分からない。

「……俺は何かお嬢様に気にるような事をしましたか?」

俺はお嬢様の執事として、相応しく無かったのか?どこが?どこがいけなかった?立ち振る舞いか?言か?料理か?戦闘技か?

「何がいけなかったのですか?何が、何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が何が」

全く分からない。確かに俺はお嬢様の執事としては、分不相応なのかもしれないが、でも、あの日に俺はーー

ーパチンッ

頰に熱を伴う痛みが走る。首が右を向き、そのまま右に倒れる。何が起こったのか理解出來なかった。俺は急にクリアになった視界でお嬢様を見ると、お嬢様は目に涙を溜めているのに、大量の涙を流していた。

そして、倒れている俺に思いっきり抱きついた。

「馬鹿っ!そういうところよ!何でもかんでも私に盡くす事ばかり考えて!自分の事は後回しどころか、気にも留めてないでしょ!?」

お嬢様は俺のを力の無い拳で叩き始めた。

「私はっ!忠実なる僕しもべがしくてあなたを助けた訳じゃない!!私はっ!あなたに生きていてしかったから!あの死んだような目をしたあなたに生きる機會をあげたかっただけなのっ!私はっ!!!」

「……もう結構です」

俺は拳を振るっている事なんて気にも留めず、力強くお嬢様を抱き締めた。そしてに置かれた頭に顎を置いて、子供をあやすように話しかける。

「お嬢様の気持ちは大変嬉しいです。とてもお嬢様らしい。ですが、自分の生き方、生き様はもう決まっているのです。それは、お嬢様に生涯盡くす事。あの日、救い出してくれたお嬢様を執事として盡くす。これ以上の幸せはありません」

「でもっ!!」と頭を急に上げたお嬢様のに人差し指を當てて黙らせる。

「お嬢様は自分に生きる機會をあげたと言いました。なら、自分が真にこう生きたいという生き様をお嬢様が否定なさるのですか?」

お嬢様はそれを聞いて俺のに顔を埋めた。「……そんなの、卑怯よ…」と力無く言うお嬢様に、「執事とは、知恵がまわるものです」と笑ってお嬢様の頭をでた。

この俺の生き様を聞いた奴のほとんどが、自由が無いだの、偽りの想いだの、強迫観念によるものだの、過去に縛られすぎているだの、言って認めようともしないだろう。

だが、そんな周りの目なんて気にしない。俺はお嬢様に盡くす。この世界で命を懸けて護り、元の世界に戻れなくても必ずお嬢様を幸せにしてみせる。

ーグゥー

お嬢様のお腹から鳴った音に、思わず吹き出してしまう。

「笑わないでよっ!お晝食べてないんだから、仕方ないじゃない!!」

「笑ってなどいま……ふふふっ」

堪えたくても、堪えきれなかった笑い聲にお嬢様は顔を真っ赤にして今度は力強く俺のを叩く。

「痛いです!もう忘れますからおやめください!!」

「本當にっ!?本當に忘れるっ!!??」

かつてないほどの大聲で反的に首を縦に振る。それを見たお嬢様は納得はしていないような顔だけど、俺から離れた。

俺は頑張って思い出し笑いをしないように頭の中にこないだの數學の問題を思い出しながら起き上がる。

「お晝は如何致します?」

「……おっ。それも噛みごたえのあるものっ」

ふて腐れたように言うお嬢様に「承知しました」と頭を下げて部屋を出ようと扉まで歩く。そんな俺を思い出したようにお嬢様は呼び止めた。何故呼び止められたのか分からず、首を傾げながら振り向く。

「……もうあんな無茶はしないでねっ」

お嬢様はまた顔を赤らめて言った。あんな無茶は今朝の事を言っているんだろう。

正直、もう一回同じ事があったらまた同じ事をすると思う。けど、これを言ったらお嬢様はまた怒るだろう。なのでーー

「ええ。今度はしっかりと全力で完璧に誰一人としてを流さないようにします」

お嬢様はこの返答に納得したような、何か引っかかっているような顔をしている。俺はそんなお嬢様を見て、不覚にも笑みを浮かべてしまった。

「大丈夫ですから。では、食事の支度をして參ります」

それだけ言って、逃げるように部屋を出た。部屋を出て、まだ緩む頬に手で喝をれ、調理室へと歩き出した。晝の獻立を考えながら………。

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