《職業通りの世界》第18話 盜賊と対峙
「俺は元Bランク冒険者だ。お前らみたいな見習いは、サクッと片付けてやるよ!」
 ナイフを構えた男が、僕たちに向かって勢い良く駆け寄ってくる。その速度は確かに、ベテランの騎士の人に引けを取らないと思えるほど。だけど、カレナさんや陸人ほどじゃない。
「疾っ!!」
「はあっ!!」
 剣とナイフが十字にぶつかり合う。衝撃が伝わるけど、男の苦痛そうな顔を見て、僕以上に伝わったんだろう。ならっ!!
「ふうっ!!」
「なっ!?」
 力は同じだろうけど、こっちの剣の方が衝撃が大きい。力任せに男を跳ね除け、ガラ空きになった腹に手をかざす。
「"ブレスト"!」
 陸人がやってた風魔法を男の腹に撃ち込み、吹き飛ばす。……かなり習得するのに苦労したけど、それに見合った使いやすさと威力だ。
「くっ……!魔法を使う騎士見習いなんて……、そんなのふざけているっ!騎士なら堂々と剣でーー」
「なら、やる?」
 を起こして吠えるだけの男に、巧くんが剣を見せつけて睨む。あの狀態だと、あの男が巧くんを跳ね除けて反撃するよりも、巧くんが剣を振り下ろす方が速い。
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「……チィッ!」
「朱音さん、拘束をお願いしても良い?」
 「あ、うん。大丈夫」とし驚いていた様子の朱音さんは、男の近くの床から巖を生やして手首と足首を床に固定するように拘束した。
「ほらな、出來ただろ?」
 こうなるのを予知……いや、確信していた陸人を見て、自分が強くなった事を再確認した。それと同時に、すぐさま盜賊を追わないといけないという気持ちが込み上げてくる。
「どうする?この男は置いて追う?」
「……いや、逃げられても面倒だし、何より報がしいな」
 「だけど、早く行かないとお姫様がな…」と悩んでいた陸人だったけど、解決法が思いついたらしく、僕の肩を急に摑んで真剣な表で言った。
「俺はこいつを見張るから、お前たちだけで追え」
「……大丈夫かな…」
 ソワソワした様子で歩く巧くん。みんなも同じような様子で、朱音さんに至っては何度も振り返ってしまっている。
「大丈夫だろ、あんな奴居なくても」
「……問題無いと思うけどね」
 居なくて清々した様子の梶木くんと、楽観している青山くん。くるみさんは涙目でトゲから離れようともせず、さっきからトゲが迷そうにしている。
 間宮さんは不安しかないというじだ。確かに、僕たちの中でも一番強いと認めざる得ない陸人が居ないのは不安になるけど、それでも僕たちは確実に強くなっているはずだ。
「陸人の事は今は切り替えて!一刻も早くあの盜賊に追いつかないといけないんだから!」
 僕は走る速度を上げる。巧くんや梶木くんは苦にもなく速度を上げているけど、朱音さんや間宮さん、特にくるみさんは辛そうだけど、急がないといけないのは変わらない。
 
 僕は食事室の扉を勢い良く開けた。けど、誰も居ない。代わりに國王様の部屋やティアナ様の部屋に繋がる扉が開いてしまっている。し遅かったみたいだ。
「ごめん!ちょっと急ぐから巧くん達はついて來て!朱音さん達は後から來て!!」
 僕はかなり速度を上げて扉の奧へとる。後ろから巧くん達もしっかりついて來ている。
 …それにしても、初めて通っているけど、カーペットも敷いていない石レンガだけの廊下は不気味だな。それに、中々長い。
ーバァン!
 奧から扉を勢い良く開ける音が聞こえた。どうやら先にってしまったらしい。急がないと!!
「おいっ!それ以上ペース上げると戦闘に支障がーー」
 巧くんの忠告を無視して、見えた開きっぱなしの扉の中へとる。そこには剣やナイフを構えている4人とティアナ様を庇って剣を構えている國王様が居た。
「悠さん!!」「……小の勇者か…」
 ティアナ様は喜んでくれたけど、國王様はって來たのが僕だと分かった途端、落膽した。でも、僕も強くなっている事を見せつけるチャンスだ。ここでこいつらを倒したら、認めてくれるかもしれない。
「……あいつはどうした?」
 
 リーダーらしき男が僕を仮面越しからでも分かるほど、怒りのこもった目で見て來ている。その威圧はカレナさんや陸人ほどじゃないけど、それなりに圧がある。
「僕が倒した。次はお前たちだ」
 僕は剣を構えて男を見據える。でも、リーダーらしき男は國王様に視線を戻し、殘り3人が僕に剣やナイフを構える。……僕なんか放っても大丈夫だとでも言いたいのか?
「……はぁ、はぁ、おい!悠、先に行くなよ!!」
 背後から巧くんと梶木くんが來て、3人が警戒心を強めた。
「取り敢えず、3人を倒さないと…!」
「そんなの、楽勝だろ!!」
 安全に、速やかに3人を突破する為に2人に呼びかけたのに、梶木くんが先走って、3人に人の頭くらいの3つの火球を撃ち込んだ。
 それを見た3人は……、簡単に火球を斬り伏せた。
「なっ!?」
「この程度で勇者とは……笑わせるなっ!!」
 中央に立っていた男が梶木くんの火球より倍以上大きい火球をそれぞれに撃ち込んで來た。
 急に來たので驚いたけど、刃を自分と平行にして盾のようにして防ぐ。し地面をったけど、大して衝撃は來なかった。けど……
「うおっ!?」「チィィッ!!」
 巧くんは完璧な形で防ぐ事が出來なくて、吹っ飛んでしまい、梶木くんは自分も火球を撃って相殺しようとしたけど、威力が違い過ぎて右腕にけてしまい、腕を焼かれてしまった。
「……はっ、今のを防げたのがたったの1人……。今回の勇者は歴代最低だな」
 それだけ吐き捨てるように言うと、真ん中の男はリーダーらしき男の方へ行ってしまい、代わりに殘りの2人がこっちに歩いてくる。
 ……このままじゃ、僕は何とか捌けても、2人を殺されてしまうかもしれない。それは駄目だ!僕が守らないとーー
 スキル
 ・限界突破 ー自の基礎能力、魔力を何倍にも跳ね上げる
 を獲得しました。
 よし!このタイミングにピッタリなスキルが來た!!これで守る事が出來る!
「限界突破!」
 僕がそう高らかに宣言すると、中が熱くなり、視界がスローダウンになってくる。僕の前じゃ、お前たちの剣をかしているきが遅く見える!
「はあぁっ!!」
 2人に向かって走り、近くで回転して2人を両斷する。初めて人殺しをする事になったけど、不思議と何ともじなかった。
「……限界突破……、勇者によく見られる強力なスキル」
 さっき火球を撃って來た男が手に持った剣を構えた。どうやら、僕を敵として認識したらしい。
「行くぞ!」
 男が踏み込み、一気に駆け寄って來たのと同時に僕も走り出す。そして、男が下段から右肩へ振り上げてきたのを、上段からの振り下ろしで防ぐ。
ーガギィィン!!
 ジンジンと手が衝撃で痛むけど、そんな痛みはどうでもよくなっていた。
 どんどん力を込めて押し込んでいく。押されているのをじた男が僕の腹を蹴られて跳ね除けられ、出來た隙に剣を振り下ろされる。
 けど、僕は何度も陸人にこれをやられていたんだ。そんなの、通用しない。
 僕は剣を地面に突き刺して勢を整えて、左手を向けて"ブレスト"を撃ってし勢いを弱めたのと同時に剣を地面から抜いて、逆手のまま、剣を振り上げた………。
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