《職業通りの世界》第19話 盜賊の目的
「ぐぅっ……あっ…」
 斬られてもまだ立っている男に剣を振り下ろしてトドメをさす。
 それを見たリーダーらしき男はどんな顔をしているか分からないけど、國王様は見直したような顔で、ティアナ様は顔を赤らめて僕を見ている。
 いけるっ、このままこいつも……!
「調子乗るなよ!たかだか元Bランク冒険者を倒したくらいで!俺は元Aランクだぁ!!」
  
 さっきまでの奴とはレベルが違うほど、限界突破を使っていても速いとじるほど凄まじいスピードで駆け寄ってきた。
「死ねっ!」
「このっ!?」
 上段から、下段から、斜め、縦、橫、様々な角度、高さで斬ってくる。それを何とか防ぐけど、徐々にかすり傷が増えてくる。それに心なしかきが鈍くーー
「うっ!!」
 一瞬出來た隙を見逃す事もなく、懐にり込まれ、剣の柄頭をデコにぶつけられ、派手に吹っ飛ぶ。部屋の壁にぶつかってし壁に埋め込んでしまう。
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「はぁ、はぁ……、何できが……」
「何にも知らねぇ若造に教えてやるよ。限界突破は確かに強いスキルだが、時間経過と共に弱化するんだよぉっ!!」
 こっちに走ってきているけど、もうがかない。このままじゃーー
「……!?チィッ!」
  
 急に扉の方を見たかと思うと、思いっきり飛び退く。さっきまで男がいた所に炎が通り過ぎた。その炎を吐いたのは、
「よく出來たね、トゲちゃん」
「チィ!」
 くるみさんのトゲだ。トゲの口から炎がまるで冬の日の白い息のようにれている。
「よくここまでもってくれた。ここからは私がやろう」
 凜々しい聲と共に部屋にって來たのは、僕たちが待っていたカレナさんだった。カレナさんは口では普通な様子だったけど、顔は目の前の盜賊をすぐにでも殺しそうな顔になっている。
「どうします!?まさか『#瞬斬__しんざん__#』が帰って來るなんて……、調査では今日帰って來るなんて分かってなかったんで、裝備は離用ばかりですよ!?」
 男はさっきまでの高圧的な態度とは打って変わって、リーダーらしき男に助けを求めるような態度で完全に逃げ腰になっている。
 
「……心配するな、今頃門近くの騎士を倒してあいつがーー」
「あいつってこれか?」
 もう1人、陸人が部屋にって來て、首元を摑んで1人の男を持ち上げた。その男は中の至る所に斬り傷があり、鼻は派手に凹んでがダラダラと出ていた。
「……あれって、今回雇った元Sランク冒険者のダレスクだよな?」
「…はい」
「簡単にやられているな」
「はい」
 男2人はお互い見つめ合うと、剣を構えた。けど、足はガクガクで、何とも頼りない様子になっている。
「……私がやります。一応、主人が襲われた訳ですし」
「…分かりました」
 カレナさんが陸人より前に出て、腰に下げた剣を抜いた。それを見た男たちは更に顔を青ざめる。もう完全に戦意を失っている。でも、カレナさんはゆっくりとだが、著実に進んで、彼らを斬ろうとしている。
「……一応聞きたい。ダレスクを倒したのは誰だ?」
「最初に戦っていたのは彼だが、私が倒した」 
 それを聞いた男たちは陸人を見る。見られた陸人はすまし顔で立っているだけで否定はしなかった。
「さあ、王城を襲った事をあの世で後悔するがいい」
「畜生っ!!」
 男たちはやけになって斬りかかったが、一瞬で見えない速度で縦に両斷され、上半が落ちる音だけが鳴った………。
「あ、おかえり」
 俺たちは玄関近くで騎士の人たちが作った治療ベースのような所に行くと、間宮とくるみ、お嬢様が居て、手の空いていたお嬢様が俺たちを出迎えてくれた。
「ただいま戻りました。あれから賊は來なかったようですね」
「うん、何にもなかったよ」
 お嬢様の無事な姿を見て、ずっとじていた不安が消え去った。
「そっちも上手くいったみたいだね」
「ええ、これも騎士団長様の活躍だと思います」
 後ろへ振り返るとカレナさんが俺を見て、呆れたような顔をしていた………。
「アッハハハハ!弱い、弱いぞ!この程度で騎士を勤めているのかぁぁ!!」
 男に聞き出した作戦が本當なのかどうか、城門へ行くと、瀕死になっている騎士たちが地面に倒れている。そして、數人の騎士が戦っている相手は、2mくらいのスキンヘッドの大きな斧を持った男だ。こいつが元Sランク冒険者のダレスクか。
ーピコンッ
 お嬢様、今大丈夫ですか?
『え?………どうしたのっ、今っ、走ってるところっ、何だけどっ』
 お嬢様の聲は息が上がっている。どうやら走ってあの連中のところに向かっているらしい。だけど、今お嬢様が行っても意味が無いと言うことを知らせないと。
 彼らの作戦が分かりました。
『え!?……本當っ!?』
 驚いているお嬢様に、彼らが國王かお姫様を攫い、門から進んで來るダレスクと合流し、撤退するという作戦を伝えた。
『つまりっ、盜賊の目的はっ、國王様かっ、ティアナっ、ていう事?』
 正確には、代金とカレナさんの命です。
 そう、彼らを始めとした闇の連中は大陸最強と言われる『四寶』の1人であるカレナさんを消したがっているらしい。その為に、今回の襲撃をした。
 早く戻って來てください。今は出り口である門を守った方がよろしいかと。
『……でもっ、ティアナにっ、盜賊がっ』
 悠が行っているのでしたら、問題ないかと。
 お嬢様はし納得してない様子だったけど、戻ってくるようだ。これで、お嬢様を危険な奴のところに行かせなくて済む。
「ぐぁぁっ!!」
「ふん、もう終いか。さっさと城にーー何だお前?」
 お嬢様と通信を終えたところで、男が騎士を倒し終わり、俺に気づいたようだ。
 さっさと済ましてお嬢様と合流して、悠たちのところへ駆けつけたいが、この男、普通に強いな。
「貴様は隨分と変わった服裝をしているな、何者だ?」
「…そんなの関係無いだろ?ただの執事と認識しとくだけで良い」
 俺は右手に刀を作り出し、左手には重りの付いた鎖を作り出す。
 それを見た男は、見るからに警戒した。警戒された方がめんどくさいんだけどな。
「相手が誰だとしても、殺すだけだぁぁ!!」
 思いっきり振り下ろして來た斧を躱したが、斧の下に鎖が挾まり、男はそれを見てにやけるが、俺は鎖を斧を持っている手に鎖を括り付け、垂れ下がった重りを足場にして飛び上がり、刀を振り下ろす。
 だが、青白いを纏った左腕に阻まれてしまう。
「くっ、邪魔だぁ!」
 腕を振るって振りほどいて來たので、左手に弾2つを投げて相手も吹っ飛ばす。
「くぅぅっ!小細工を!」
「よくここまで持ちこたえました!」
 男が拳を振り上げたところで、俺の前に1人の騎士らしき人が凄いスピードで割り込んで來た。銀の髪をなびかせた彼は、奴らが一番気にしていた人、カレナさんだった。
「カレナだと!?馬鹿な!?まだ帰ってくる筈が!?」
「任務なら案外簡単に済んだ。早く帰ろうと思って馬を走らせたら、この有り様。説明してもらうぞ」
 カレナさんの威圧に一瞬慄いたが戦意を取り戻し、鎖が巻きついた手を振り上げたのを、靜かな様子で見ているカレナさん。
 剣を軽く抜くと、一言言った。
「輝け」
 一瞬だけ、鞘から見えた刀がったかと思いきや、気づいたら男の背後にいた。男は膝を地面に付いた途端、中に無數の斬り傷が現れ、が飛び散って倒れた………。
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