《職業通りの世界》第20話 襲撃後

「あ~、もう魔力が無いよ…。死んじゃう……」

 間宮が魔力切れになったようで、顔を青ざめてガクガクと足を震わせている。度重なる負傷者の治療で、もう魔力も神も盡きかけている。これはもう休ませた方が良いんじゃないか?

「…お嬢様、間宮…さんに休ませるように言ってもらえませんか?」

 回復魔法を使うまでも無いが、手當てが必要な人に手當てをしているお嬢様に話しかける。お嬢様は俺を見て、何故か悪戯っ子のようにニヤけた後、俺から怪我人に視線を戻して、手當てを続行しながら言った。

「私はここの人たち手當てに忙しいから、陸人が言ったら?」

「……え?俺が言うよりも、お嬢様が言った方が聞いてくださると思いますが」

 「あ、今そっちに行きます!」とお嬢様は勝手に話を切り上げて、し離れたシートのところへ行ってしまった。チラリと間宮の方を一瞥すると、何やら飲みを飲まされそうになっている。魔力回復とかそういった類いの飲みだろうが、神的に持たないだろ。……仕方ない。

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 間宮に何やら飲みを飲ませようとしていたローブを著た魔法使いらしき人を無理やり退かして話しかける。

「……間宮、ちょっとこっちに來てくれるか?」

「…え?……でも、もう治療は……」

「いいからっ」

 俺は強引に手を取って城のへと連れて行く。間宮は意識もあまり定まって無いのか、引かれるがままついてくる。

 治療ベースからそこそこ離れたところまで來たので、道でシングルのマットと薄めの布団を作り出す。

「ほら、そこで休め。もう意識もしっかりしてないんだろ?」

「……え?でも、……怪我人がまだ……」

 ここまで來てまだ治療をしようとしている間宮の肩を摑んで、軽くかかとを足でらせ、マットにそのまま寢かし、布団を上からかける。これは小さい頃のお嬢様が夜更かしし過ぎて、ベットにらなくなった時に、紅葉さんがやっていた技だ。覚えていたが、真似をする機會が無くて、今日は真似出來て丁度良かったな。

「……俺がそばで見張っといてやるから寢ろ。もうお前は充分仕事した」

 間宮はそれを聞いて、僅かに微笑むとすぐさま眠りについた。回復魔法ってのはよっぽど疲れるみたいだな。試しに習得してみようかなっと思ってたが、やめとこう。

 ………それにしても、警戒心が無いのか、疲れが溜まり過ぎていたのか、男が近くに居るっていうのに、隨分とまあ深い眠りについてるな………。

 襲われたティアナ様の自室も、その奧にあったディラス様の自室も、現場の確認と清掃でれないので、治療ベースに一際大きいテントにると二方が居た。

「………カレナか」

「はい。ディラス様もティアナ様もお怪我が無くて何よりです」

 ディラス様は不機嫌そうに鼻息をらし、ティアナ様はまだ冷や汗を流しながらも苦笑いを浮かべた。

 ディラス様は賊が侵して來た程度では何ら問題は無い。だが、ティアナ様はまだい。勇者たちはまだ戦意のある、その間はまだ戦える。けど、ティアナ様はそんなものは無い。心が清く、民や國を重んじるの子。あまり、危険には曬したくは無い。

「……ティアナ様、ご提案があるのですが」

「…何でしょう?」

 私の提案を聞いたディラス様は特に問題無いような顔ですが、ティアナ様の顔はとても困ったような顔になってしまった………。

「……チィッ、何だよアイツら……」

 隣で左膝を立てて座っている梶木くんは右腕に沢山の包帯を巻かれながら、恨めしく呟く。

 左隣で寢転んでいる巧くんは、頭を打ったらしく目を覚まさない。僕は中に包帯を巻かれ、回復魔法を使える魔法使い待ちだ。どうやら、限界突破で必要以上にに負荷を加えてしまい、回復魔法じゃないと治すのに時間がかかるらしい。

「……あのっ、えっと、……ごめんなさい。私が……もっと早く駆けつけていれば……」

 オドオドしながら、僕たちに謝るくるみさんに容赦無い睨みをする梶木くん。それを見て、「ヒッ」と怯えた聲を出して、テントの隅にこまってしまった。

 くるみさんの事も何とかしないといけないけど、それよりもーー

「青山くん?どうして後から來なかったんだ?説明してくれる?」

 テントの出り口付近で佇んでいる青山くんに尋ねる。青山くんは、僕たちがペースを上げてくるみさんたちから離れた時には一緒に走ってた。けど、僕が更にペースを上げて部屋にってから、一度も青山くんを見ていない。それは一どういう事なんだ?

「……別に、勝てないと悟っただけだよ。勝てない相手に挑むほど、馬鹿じゃないからね」

 「何だと!?」と梶木くんが聲を荒げて、メイドの人に包帯を巻かれているのに立ち上がろうとして、メイドの人に抑えられる。だけど、怒っている顔を見て、青山くんが口を開いた。

「僕のスキルに、敵勢視判というスキルがあるんだ。それで相手と自分の強さの差を數値化して見れるんだけど、それで見たら何をどうやっても勝てなかった。館山……の執事の方が居ないと全滅していたからね」

 サラッと言われた事実に、言葉が出ない。青山くんにそんなスキルがあったのも驚いたけど、あんな強い4人が居ても、陸人が居たら問題無かったという事にも驚きを隠せなかった。きっと、彼1人であの4人を倒せるという事なんだろう。

「……じゃ、俺はこの城を出るから」

「え!?どうして……!」

 流石に青山くんが出て行くのは予想外過ぎて、起き上がろうとしたけど、痛みが全を走ってそのまま寢転ぶ。けど、顔は青山くんに向けて呼び止める。

「青山くんが居ないと、誰が前で攻撃をけ止めてくれるんだ?僕たちには、君が必要なんだよ!」

 思っている事をそのまま伝えたけど、青山くんの顔はもう決意したように揺るぎない表だった。

 そして、あまり聞きたくない事を言った。

「ここに居ても、あまり強くなれない。俺は俺で、自分1人で強くなる。仲良しごっこはしたくない」

 青山くんは僕たちを軽く一瞥すると、テントから出て行ってしまつった。それを誰も、止める事は出來なかった………。

「……ふぁ~ぁ」

「ん、起きたか」

 私がまだ覚束ない視界で起き上がると、1人の男の人の聲が聞こえ、そちらに目を向けるとそこには陸人くんが居て、私をジッと見ていた。

「え…!?どうしてここに!?」

 私は布団を抱えて離れようとするけど、壁にぶつかって背中に軽く衝撃が來る。あれ?私の部屋のベッドってこんなにも狹かったけ?

「…お前が疲れている様子だったから、みんなが見ていないところに寢かしてやったんだろ。ほらっ、疲れが取れたんだったら早くベースに行け」

 陸人が顎を左方向に向けてさっさと行けと言う。そもそも何で私がここに………あ、そういえば、魔力が切れているのに魔法を使わせようとする人から私を引っ張ってくれたのは…陸人くんだった。

「あ、ごめん。陸人くんが私を休ませてくれたのに、警戒なんてして…」

「別に良い。男に警戒するのは普通だからな」

 陸人くんは警戒したくなかったのに……って言っても仕方ないよね。もう遅いし…。

 私は布団から出て、陸人くんにお禮を言ってベースへと走った。お禮を言われた陸人くんは特に何かをしたという訳でもない顔をして、私を見送ってくれた………。

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