《職業通りの世界》第23話 余興
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
「ん、早く帰ってきてね」
 口にサラダを詰めたお嬢様に一言殘して、音が鳴った方へ行く。どうやらこの城では鳴ってなかったらしく、玄関から出てし城の周りを歩こうとしたが、案外早く見つかった。
「……そいつは誰ですか?」
「…どうやら昨日の襲撃の為に報を奴らにリークしていたらしい」
 剣を払ってを振り払い、まみれの人だったものに冷たい目を向けながら言うカレナさん。どんなに酒を飲んでもこういう時は一気に抜けるタイプらしいな。
 それにしても、こいつはメイドだったのか。最も、がギリギリ付いてないところにメイド服が見えただけで本當はたまたま今日來てただけかもしれないが、今はメイドだったという事が分かっただけで良い方だろう。
 何せ、他の全はかなり斬り刻まれて男かかも分からなかったのだから、メイドだと分かっただけでという事が分かって良かっただろう。
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「…どうして分かったんですか?この方が裏切り者だと」
「……彼は左利きだったんだ。なのに、今日料理を配っていた時は右手だった」
 カレナさんは悔しそうに歯を食いしばり、まみれの裏切り者を見る。恐らく、俺があいつらを指導し始めてからこいつが本とれ替わったんだろう。全ては昨日の日のために。
 そして、本の方はもう死んでいると見て間違いない。こういう誰かにり代わって潛というパターンは、りかわる人の皮を剝いで完璧な変裝をするか、あらかたの口調や格を知り盡くしてから逃げられたり、また失敗した時に自分の事を言われる事を避ける為に口封じするのが一番確実だ。
 殘念だが、知らず知らずのうちに俺の同業者が殺されていたみたいだ。こればっかりは他人事とは思えない。だけど、俺には何も出來ない。例え、多くのスキルを持っていたとしても………。
「あ、おかえり。し長かったね……あれ?カレナさんと途中で會ったの?」
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「軽く手合わせをしてもらってましたので」
 あのを門番をしていた騎士の人に押し付けた後、カレナさんと部屋に戻るとお嬢様が口の端にケチャップを付けながら、パンプキンスープを飲んでいたので、ハンカチを素早く作り出し、ケッチャプを拭ってから席に著く。
 カレナさんは國王に何やら耳打ちしている。十中八九あの裏切り者の事だろう。いや、潛者だな。裏切り者はり済まされた彼に失禮だ。
 
「…ふーん。ま、いいけど」
 お嬢様はし拗ねたようなじで食事を再開した。し不思議に思いつつも、視線を目の前の料理に戻す。あとしで晝頃だが、こんなに飲んだり食べたりして良いのだろうか?
 そんな事を思っていると、急に國王が立ち上がった。その顔は完全に出來上がっていて、酔う前の威厳ある顔つきとは程遠いとまでは言わないが、そこそこ離れてしまっている。
「よーし!これより別れの腕試しをしてやろう!皆の者、付いて來い!!」
 國王が勝手に部屋を出ていき、一瞬戸ったが、諦めたような顔をしたカレナさんを見て、渋々お嬢様と俺、巧と梶木は部屋を出た。
 寢ている悠や戦う気の無いくるみと間宮は殘ったのだが、正直言って俺も殘りたかった。けど、行かなかったらそれはそれでなんか言われそうだったからな。
 そんな事を考えている間に城を出て、カレナさんと訓練していた場所に著くと、ノリノリでストレッチをしている國王がいた。その隣には鞘が付いた剣を両手の上に乗せて待機しているお姫様がいて、その近くには騎士の人たちが待機している。
 
「よーし、誰からでもかかってこんかい!」
 お姫様から剣を取り、鞘を投げ捨てて構える國王。それを見た巧と梶木が前に出る。巧は騎士の人からけ取った剣を構え、梶木は手に火花を散らせながら、國王を見る。
「國王様!あんたはいつも上から目線で気にくわないんだよ!」
 もろ本音が出ている巧の上段からの斬り込みを正面からけた國王。剣がぶつかり合う音が辺りに響く。
 力が拮抗しているのに橫槍をれたのは梶木で、右手から6発の小さめの火球を連続で國王めがけて撃った。
「この俺を舐めるなよ!!」
 國王は火球に左手をかざすと、火球がみるみる小さくなっていき、終いには消えてしまった。それを連続で來た火球一つ一つにやっている。あれは一……
「あれはディラス様が持つスキル、魔法衰弱です」
 俺とお嬢様の隣に來たカレナさんが國王から目を離さず言う。
「自が障害となる魔法と認識した魔法を徐々に衰弱させていくスキルで、魔法が弱かったりしたら消す事も出來ます」
 「私や梶木くんには厄介なスキルですね」とお嬢様はし嫌そうに國王を見る。確かに、厄介なスキルではある。けど、國王が障害と認識する前に素早く魔法を撃ち込んだらいけそうだけどな。
「おらっ、おらっ、おらっ!勇者だというのにこの程度かよ!」
 いつの間にか國王が巧に何度も剣を振るっている。しかも、雑で力任せな振るい方だ。あの程度なら対処出來るだろうが、それは巧には厳しいだろう。
 あの振るい方はスタミナ消費や疲れが出やすいが、その分、相手にプレッシャーをかけたり、一度け損ねたら、一気に重い一撃を何度も振るう事が出來る。ハイリスクハイリターンというところか。
「くっ!しゃらくせぇ!!」
 巧が半ば強引に剣を押し退け、バックステップをして距離を取った。息は上がっているし、あの冷や汗をかいている様子からしてあまり良い狀態じゃないんだろう。
「俺を無視すんじゃねぇ!!」
 さっきから様々な魔法を國王に撃ち込んでいる梶木だが、ことごとく無力化されている。あの調子だと魔力が盡きるのは時間の問題だな。
「梶木…さんでしたっけ?あの人は朱音さんとは違った方面の魔法使いで、朱音さんより魔力が多いんですが、朱音さんのように高度な魔法には適していないんですよ。どちらも必要で、どちらも並外れた魔法使いではあるのですが、あの人はどっちかと言うと、掃討戦に向いているものですので……」
 カレナさんが言いにくそうに言った。確かにあいつが魔力切れになっているところは見ていないし、お嬢様みたいな大規模な魔法を使っているところも見た事がない。つまり、お嬢様は強い敵、あいつは弱い敵に強いってことだろ。
「……どうします?參加しますか?」
「…うーん、一回私だけでやってみてもいい?」
 お嬢様に聞いてみると、まさかの乗り気だった。お嬢様がやる気を出しているのに俺が何か言うのは筋違いだよな?
「分かりました。いざという時は割り込みますので、思う存分やってください」
 お嬢様は「ありがと」と笑って言った後、國王のところへ走っていった。俺はスキルの特定転移をいつでも使えるように、お嬢様を凝視する。……どうかお気をつけて。
「國王様!次は私が相手です!!」
 私が巧くんのところへ追い討ちしようとしていた國王様に聲をかけると、國王様は嬉しそうに私を見た後、私に剣を構えた。
「カレナに俺のスキルの事を聞いたんだろう!?その上で來るとは、どんな策があるんだぁ!?」
 國王様は中々の速度で私に駆け込んで來ている。その顔は國王のものとは思えず、ただの戦闘狂に見える。そんな國王様の目を覚まさせないと。
「凍って、"フリーズロック"」
 私が創作した魔法は、國王様が気がつく事も無く、國王様を巨大な氷の中に閉じ込めた………。
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