《職業通りの世界》第29話 馬車での移事
「あ~あ、本當にみんなと別れちゃったな…」
「任務ですから仕方ないですよ」
 現在、ひたすら野原の道をただただ走る事に飽きたお嬢様が、俺にもたれかかってボヤいている。らかなが背中を通して結構的にじられ、さらに首元と耳元の近くを甘くて暖かい吐息が通り、昔にの滲む教育をされなかったらしていたところだ。
 それにボヤかれても、この景が変わる事はないんだが、お嬢様はかなり退屈そうだ。
 何か1人で遊べるものはなかったっけ?トランプ、UNOのカードゲームはもちろん、オセロ、將棋、チェス、人生ゲームのようなボードゲームも遊び相手がいるな。
 スマホも本も無いし、うーん……。
「あ、うさぎさんが寢てる。……平和だね~」
 お嬢様は視線を斜め左に向けて、生気の無いように言う。そんなやる事が無くて退屈くらいで生気を失ってほしくないな。
 そうだ、お嬢様は目が良いんだし、これは練習にもなるかもな。
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「お嬢様、撃ゲームはどうでしょう?」
「え?撃?」
 お嬢様が俺の背中から離れて首を傾げている。そんなお嬢様に、武作で作ったゴム弾仕様のスコープ無しの茶の狩猟銃を作り出す。
 それを片手で申し訳ないが、半ばの所を摑んでお嬢様に近づけると、お嬢様は戸いながらも両手でけ取った。3kgもある銃だが、お嬢様は見た目に反して意外とは丈夫で力持ちだから、し重めのカバンを持つくらいの重さくらいにしかじてないだろう。
「お嬢様、あそこに垂れ下がっている黃土の桃のような果実が見えますか?」
「……うん、あれだよね?」
「はい、それを撃ち落としてみてください」
 「え?あれを?」と言いながらも、お嬢様はし楽しそうに銃を構えて狙いを定めている。ここから39°の角度、距離76m、走行中により風力3、風向は南東といったところか。
「落ち著いて照準を定めて、ほんの僅かに左にズラすといいですよ」
「う、うん。やってみる」
 お嬢様の集中の度合いは、背中越しからでも分かる。お嬢様が撃をするのは確か初めてだったはず。お嬢様の腕前はどんなものかな?
「えい!」
 可らしい掛け聲と共に、ゴム弾なのでかなり軽い音を立ててゴム弾が真っ直ぐと木の実に進んでいき、そして左側面を掠らせて通り過ぎていった。
「あれ~?」
「意外とズラしすぎたみたいですね、あれはもう止めて、次は左側をご覧ください」
「よしっ、次は何にするの?」
 待ち遠しそうに左側を見るお嬢様に一瞬見惚れるが、すぐに心をれ替えてさっきよりも大きめの赤いぶどうのような実をぶら下げている木を指差す。
「次はあちらの果実です。さあ、早くしないと通り過ぎますよ」
「え、うん。弾はまだある?」
「はい、裝弾數は20発でマガジンになっていて、オートマチックなんで気にせず撃って頂けて構いません」
 「よ~し、次こそは!」と意気込むお嬢様を見て、良い暇つぶしが出來て良かったが、これも飽きる可能があるから次の遊びを考えなくてはならない事が頭によぎった………。
「……そんなに拗ねないでください」
 至って順調に今日の移は終了し、森の木々に馬を繋ぎ止めてその近くに道作で作り出したテントを張って、中にはお嬢様専用のマットレスと布団、枕を置いた。
 さらに近場にそこらの木の枝を集めて魔法で火を付けて、そこに燃え移らない距離に木の枝を刺してY型の支えにし、木の枝をかけてそこに道作で作った小さな鍋を吊り下げて、無限収納にれておいた食材でシチューを作っている。
 シチューの材料である牛は日持ちがしないので、シチューにした訳だが、お嬢様はさっきから俺からし離れた場所で膝を抱えてそっぽを向いている。
 晝間にたくさんのターゲットを設定してお嬢様に撃たせたのだが、惜しいところに當たっても肝心なところに當たらなかったり、落ちなかったりして、お嬢様は絶賛ひねくれ中なのだ。
「お嬢様?ご飯ですよ?」
「……いい、お腹空いて無い」
 こうなったお嬢様は長いな。こっちが折れても、何かが変わる訳でもないだろし、仕方ない。
「お嬢様、栄養を摂取するのは生きる上で必要不可欠です。それに、お晝食べたおにぎり程度では栄養は足りません」
 火に土を被せて勢いを極端に弱くした後、蓋を閉めてお嬢様のところへ歩く。お嬢様は足音が聞こえているはずなのに、移しないという事は何を言われても意思を変えないとでも思っているのだろう。だが、俺のこの策はとっておきだぞ。
 俺はお嬢様の肩を摑み、左手でブルーシートを引いた後に、お嬢様を若干無理やり押し倒す。お嬢様が下に、俺が被さるように四つん這いになる。
「え?あの……え?」
「お嬢様、言う事を聞いてもらえないと………食べちゃいますよ?」
 俺はなるべく意地の悪くなるように微笑んだ。それを見てお嬢様は夜でも分かるほど顔を赤らめる。
 これは楓さんに教えてもらったお嬢様に言う事を聞かせる奧の手だ。これをすると、お嬢様は絶対に言う事を聞くと、楓さんが自信満々に言っていたので、今回試してみた。
 上手くいったらお嬢様はこまり、恥ずかしそうにするらしいが、今のお嬢様はまさにその狀態だな。あともうひと押し。
「お嬢様…、シチューを食べるか、自分に食べられるか。どっちにします?」
「………………シチューでお願いします」
 お嬢様が負けを認め、絞り出すようにお願いしたので、執事として葉える為にお嬢様から離れて、鍋を取りに行き、お嬢様のところへ戻る。
 お嬢様は座り込み、しれた髪や服を整えて俺を待っていた。
 道作で小さなテーブルを作り出し、その上に鍋と木のお椀を1つ作り出して置く。
「お召し上がりください」
 中に立てかけてあったお玉でお椀にシチューを注ぎ込み、スプーンと一緒にお嬢様に手渡す。お嬢様はゆっくりとけ取ると、ゆっくりとした調子で食べ始めた。
「お嬢様、今回も食事を共にする事をお許しください」
「………うん」
 お嬢様に許可をしっかりと貰ってから、お嬢様の隣に座り、お椀を作り出してシチューを注ぎ込んで、スプーンで食べる。
 ……うん、上手くは出來てるとは思うが、やっぱりしっかりとした設備のあったところでやった方が良いな。
「…ごめんね、変に意地張って」
 黙々と食べていると、お嬢様がスプーンをお椀の縁にかけてボソリと呟いた。意地を張っていた自覚はあったみたいだ。
「いえ、自分もお嬢様の心境をしっかりと把握せず、次々と撃をさせてすみません。つきましては、明日はーーー
「明日もやるっ」
 お嬢様は俺の言葉を覆い被すように、大きな聲で言った。橫に振り向くと、負けん気が溢れる強い目をして俺を見ていた。
「明日も明後日も、當てれるまでやるっ。出來ないままじゃ逃げた事になるからっ」
 お嬢様は拗ねやすいのと同時に、かなり一度やった事は出來るまで何度でもやるほどの引き下がらない格だった。
「……分かりました。明日は1つ、明後日は2つ、明々後日は3つと、しずつでも良いので、落とせるようになりましょう」
 俺の言葉に、お嬢様は強く頷くと、今度はテンポ良くシチューを食べだした。それを見て、シチューの殘りは足りるかと心配になった………。
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