《職業通りの世界》第36話 宿から出る時に
「お嬢様はそちらのベットをお使いください。自分は寢袋で寢ますので」
「明日、陸人は買い出しに馬の縦をしないといけないんだからしっかり寢るためにベット使って!」
 寢袋の中にろうとする俺と引っ張ってベットに寢かせようとするお嬢様の綱引きは均衡狀態にあった。
 お嬢様の力強さはこんな時だからこそ厄介で、けない事にこれは強化魔法を使わないと勝てなさそうだ。だが、俺が魔法を使ったらお嬢様も使うだろうし、結局変わらないような気がする。
「お嬢様!執事がお嬢様をおいてベットを使うなど正気の沙汰ではありません!!ベットはお嬢様がお使いください!」
「いや!そんなの関係ないもん!!明日、陸人に倒れてしくないから、自分の為に陸人にベットを譲るの!!」
 そりゃベットの方が良く寢れると思うが、紅葉さんに寢袋でも安眠する方法は教えてもらっている。寢袋があるだけマシだと思えるほどサバイバル能力はあるつもりだ。だが、お嬢様はそこまで寢袋に寢慣れてなくて、毎回中々寢付けていないのは知っている。
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 そんなこんなで、騒いでいると勢い良く扉が開かれ、あの係員が乗り込んできた。
「あんたらぁ!隣に聞こえるほどの聲量で騒ぐんじゃねぇよ!!これ以上騒ぐなら放り出すぞぉ!!」
 係員はかなりお怒りで、背中から覗き込んでいる、痩せこけた男が係員に呼びかけたらしい。隣の部屋に泊まっている奴だろうな。
「「すみませんでした…」」
「分かりゃ良いんだよ!テメェらはさっさとヤる事やって寢な!!」
 そう言い殘し、勢い良く扉を閉めた。その後、鍵が閉まる音が靜まり返った室に良く通った。やっぱりマスターキーを持っていたな。この宿では一応、夜中にって來た場合も考えて気配に敏になっておかないとな。
「…はぁ、なんか疲れちゃった」
「お嬢様、よろしければマッサージでもしましょうか?」
 余程疲れたのか、「おねが~い」と言ってベットに飛び込んで伏せてしまった。このままマッサージをして寢落ちする可能にかけてみるか。
「では、始めます」
「うん……」
 俺は足からゆっくりとみほぐしていく。力は強すぎず弱すぎずを心がけ、筋の疲れを取れるようにゆっくりと時間をかけていく。
 たまに艶めかしい聲が出ているけど、それにいちいち反応したら余計に気にしてしまうので、頭に円周率を浮かべながらやっていく。
 40分程度でうつ伏せで見えている範囲だけだが、マッサージが終わった。
「………すぅ…すぅ」
 お嬢様は完全に寢ていて、賭けには勝てたが、マッサージでが溫まったせいで、汗がし流れて艶めかしい気が出ている。聲を乗り越えた後にまさかの首筋や寢顔というさらに高い壁が現れた。
 仕方ない、スキルで解決しよう。
 執事たる者、空間を詳しく認識するべき。
 スキル
 ・空間把握 (執事たる者、空間は完全に把握すべき)
 を獲得しました。
 んだ通りのスキルを獲得でき、道作で目隠しを作って目を隠し、空間把握を使う。すると、ベットや寢袋の位置や部屋そのものの形が頭の中にシルエットになってよく分かる。
 お嬢様の姿が見えなければ、全く問題は無い!……と思って抱き上げたが、レモンのような甘酸っぱい汗の匂いがし、これまた心が揺らぎそうになったが、何とか堪えて仰向けに寢かせる。うつ伏せで寢るのは良くないって聞いた事があるからな。
「寢よ……」
 的にも神的にも疲れたので、寢袋にすぐさまり、電燈代わりのロウソクの火を"ブレスト"で掻き消して眠りについた………。
「おっ!?昨晩はお楽しみだったんかい!?」
 いつもなら眠たそうに目をるはずが、やけに元気で心なしかハリツヤがあるお嬢様と、珍しく疲れがし殘ってしまい、シャキッとしない俺が昨日と同じ席に座ると、係員が元気そうに話しかけてくる。
「お楽しみだなんて……、そんな事は一度もありませんでしたよ?」
「お嬢様は元気があって良かったです」
 お嬢様は小首を傾げて係員に言うが、この差を見て信じてくれるだろうか?現に係員はニヤニヤしているままだ。
 いちいち訂正するのも面倒なので、メニューに目を通す。朝だからあんまりこってりしたのは嫌だな。
「採れたて野菜と鶏のサラダをお願いします。お嬢様は?」
「あー、私はパンと甘仕立てのスープをお願いします」
「はいよぉ!!すぐもってくるぜ!」
 朝から元気の良い係員を見習うべきなのだろうか?まあ、そろそろこの疲労にも慣れる頃だろうから、買い出しとかに支障は出なさそうだな。
「今日はいつくらいに出るの?」
「買い出しを終えたらすぐに出ますよ」
 お嬢様と話しながら、何やら外がしだが騒いでいるのを耳で聞き取りながら、何も起こらない事を祈った………。
「よしっ、それじゃあお世話になりました!!」
「おうよぉ!また來いよなぁ!!」
 味しい朝飯を終え、チェックアウトをして宿を出る。何やかんや良い宿だったな。
「よし、じゃあ買い出しだね」
「はい、すぐに済ませましょう」
 し早足なお嬢様と足並みを揃えて、係員に聞いておいたオススメの八百屋や屋、パン屋を巡っていく。
 係員がオススメする事もあって、安く質の良いものがたくさん買えた。これで次の街に著くまでの5日間はもつだろう。
ーガチャガチャ
 ……さっきから時々武裝をしっかりとした冒険者に良くすれ違う。その冒険者たちは揃って俺たちが出る門、最初にった門と向かい合う門に向かっている。なんか面倒な事が無いといいが。
「後は馬を取りに行くだけだよね?」
「ええ、すみません。もうし観したいと思いますが、2週間で著くためにはもう出ないといけないので」
「あ、別に大丈夫だよ?ただ、さっきから騒がしくなってきたな~と思って」
 お嬢様は多強引に走っている冒険者を見ながら、心配そうに言う。お嬢様も気づいていたらしい。
「では、急ぎましょう」
 し早足で歩くと、お嬢様は何も言わずに歩調を合わせた………。
「あ~あ、こういう事ね……」
 お嬢様はし乗り出して俺の肩に手を置きながら、納得したように呟く。お嬢様と俺の視界には多くのアリのような魔と戦っている冒険者が映っている。
 馬車は無事に取れたのだが、どうやら門を開けていたら魔が徐々に攻めてきて、今はそれを何とか食い止めようとしているみたいだ。だが、その戦闘のおかげで通行止め狀態になっている。
「お嬢様、あれは《ブリキアント》です。火が弱いので広範囲の火屬魔法の準備を」
「…うん、やってみる」
 お嬢様はすぐさま俺の意図に気付いたようで、馬車の中に戻って集中し出した。それを確認してから道作で投擲用の槍を作り出し、構える。
「………よし、いつでもいいよ!」
「自分が今と言ったらを乗り出して撃ち込んでください。俺が支えるので思う存分やってくださいね」
 お嬢様は無言で頷いた。それを確認し、右手に持った槍を冒険者たちがし引いて出來た空間に投げつける。その空間は馬車一臺がるほどで、いきなり飛んできた槍に驚く暇も無く、俺は左手を馬車につけてスキル置換転移を使い、馬車と槍の場所をれ替える。
「お嬢様!今です!」
「"フレアバースト"!!」
 俺は背後に倒れこむのと同時に掛け聲を出し、乗り出したお嬢様が巨大な火炎放を撃ち込み、何十匹と居た魔を塵にした………。
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