《職業通りの世界》第44話 ガチもんの暗殺者
 日も沈み、人々は家にこもり夜を越す準備をしだす時間帯。俺は1人、街の中でも一番ボロっちい宿で寢転んでいる。
 もちろん、ただ寢転んでいる訳でも無く、細い糸を張り巡らせて罠をはり、神経を研ぎ澄まさせてスキル空間把握と気配探知を使う。
 いつ來ても大丈夫な制で待ち構える中、頭に思い浮かぶのはお嬢様の事ばかり。
 もうご飯は食べたのか?風呂は?何か困っている事は無いか?メサたちと上手くやっているか?変な奴らに絡まれていないか?そんな事ばかりが頭に浮かぶ。
 こんな浮ついた狀態じゃ、凄腕の殺し屋でも來たら不覚を取ってしまうーー
ーガチィン!
 一瞬にして現れた気配は、俺の#下__・__#から現れ、ナイフを突き刺してきた。何とか気付いたので、を左に回転させて避けれたが、その時當たった糸によってトラップが発して、頭上からタライが落ちて來たので、それを気配に向けて蹴り飛ばすと、ナイフで防がれた後にまた気配が消えた。
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「何だ?今の現れ方は?」
 右手にリボルバー型の片手銃を無限収納から取り出して構える。
 あの現れ方は下の階をぶち破ってきたようなじでは無い。その証拠には空いていない。
 あれは俺の#影__・__#から出て來た。とても信じられないが、そうとしか思えない。
「我ら、闇夜に沈み、闇夜を……支配する」
 掠れた聲が部屋全から聞こえ、構えた瞬間、俺の足元の影からと真っ暗な部屋の壁からナイフを突き出して俺めがけて飛び出して來る。
 俺の足元から出て來た男のナイフを右足で逸らし、壁から出て來た方はナイフを持っている手首を持って部屋の壁に叩きつけた……と思ったが、壁に沈むようにして消えた。いつの間にか足元から來た男も居なくなっているし。
「……お前らがやってるのは、もしかして影魔法か?」
 影魔法というものは、俺も城で適當に本をあさっていた時にたまたま見つけた魔法だ。何でも、影を使った魔法や影に潛む魔法だったらしいが、何10年も前に國が使用及び教育を止して絶滅した魔法。
 まさか本を見れるなんて思わなかった。
「…闇夜を支配する…我らの力を……魔法などと…比べるな…」
 どうやら影魔法と言われるのが腹立ったらしく、まばたきをした間に4人が四方から現れ、ナイフを突き出して來た。
「めんどい!"ブレスト"!!」
 手をナイフに當たらないように突き出して、手から突風を出して吹き飛ばす。そのまま追撃をしようとしたが、ボロい部屋だったので、壁が吹き飛び、両隣の部屋と繋がった。
「何だ何だ!?」
「いきなり何しやがる!!」
 もちろん、部屋にいた奴は怒り出し、俺に摑みかかってくるが、壁と一緒にって來たはずの男たちはもう影に消えて居なくなっていた。
「あー………、すみません。お詫びにこちらでもっ」
 道作で作り出した煙玉を地面に叩きつけ、煙で姿を見えなくして俺は窓から飛び出した………。
「……あ~、眠い」
 瞼をりながら、もう明るくなった街中を歩く。窓から飛び出してから、なるべく街中を走り回っていたから疲れと眠気が半端じゃない。
 この時間帯じゃあまだ店を開けている奴は居ないが、そろそろ開き出す時間帯だ。
 早く馬を取りに行ってこの街から出ねぇと、変な容疑でもかけられてガエンに捕まるな。
「…どうだ?調査の合は?」
 俺の前に現れたのは、早朝なのに全く眠たそうにしないイグザ。どうやら、夜あった事を知った上で來たらしい。
「ああ、調査は順調すぎて、もう相手の闇を見ちまったよ」
「……『#闇夜の暗殺者__ナイトウォーカー__#』か」
 ナイトウォーカーなんて言うのかあの廚二病者たちは。
「あいつらに狙われて生きてたのはおめぇぐらいだよ」
「そいつは嬉しいな」
 適當に返して通り過ぎようとした時、ボソリと言われた。
「あいつらはガエンが雇った暗殺集団だ。せいぜいお仲間さんが狙われないように気をつけな」
 イグザはそれだけ呟いて歩き出した。イグザなりの忠告は有難くけ取っておこう。
「あ、陸人~!……かなり眠そうだね?」
「ええ、一睡も出來なくて…」
 宿のり口でお嬢様たちと合流し、あくびをしながら買い出しをする。まあ、俺は眠すぎてあんまり考えられないので、お嬢様に任せているが。
「昨日は何してたの?」
「…し……暗殺者と…鬼ごっこを」
 隣で驚くお嬢様たちに反応するのも面倒で、トボトボと歩きながらスキル空間把握は使っておく。晝間だからといって、來ないとは限らないからな。
「…なら、早く出ないといけないかな?」
「そうですね、次の街へは1日くらいしかかからないんで」
 お嬢様はメサとメイカにも金貨を渡して効率よく買い出しをしていく。俺はお嬢様に付いて行ったが、正直俺は何もしてない。
「よし、馬を取りに行こう」
 次は馬を取りに行くのだが、それでもお嬢様は先頭を歩いて馬を引き取った。こんな事はほとんど無いので、し変な気分だったが、眠くて思考が覚束なくーー
「……あ、起きた?」
 すっきりとした朝を迎えたように目を覚ますと、お嬢様の顔が見え、頭の後ろにはらかいと特有の甘い匂いがすぐ近くから來る。
 どうやら、膝枕なるものをしてもらったみたいだ。
「…すみません、すぐに退きますので」
「い~いよ、まだ寢てて」
 お嬢様は起き上がろうとした俺の肩を押さえつけて、頭をでてくる。まるで、子供を見ているかのような優しい表で。
「陸人の寢顔、可かったよ」
「ご冗談を」
 「冗談じゃないもん」と何故か頰を膨らませるお嬢様。
 し沈黙した雰囲気が続くが、お嬢様のお腹から鳴った音ですぐにぶち壊れた。
「……すぐにっ…お食事のっ……用意をっ!ふふっ!」
「あ~!!笑った!私が膝枕をしてあげたというのに!!」
 お腹をポンポンと叩いて來るお嬢様から寢返りを打って離れる。
「今馬をかしているのは誰だ?」
「私!」「どうかしましたか?」
 メイカが大きな聲を出した。その後にメサが覗いてきてので、近くに馬車を置けて馬を停められる木がある場所で馬車を停めるように言う。
「メイカに伝えておきます」
「ああ、頼む」
 メサは引っ込み、代わりにお嬢様が俺に摑みかかって來た。顔を真っ赤にして、どうやらお腹の音が鳴った時の記憶を抹消するつもりらしい。
「おやめください!俺はお嬢様のお腹の音を誰にも言うつもりはありませんから!!」
「當たり前でしょ!?ついでに忘れて!!」
「それは出來ません!ふふっ、墓場まで持っていきますからっ!」
 墓場まで持っていく宣言をした瞬間、お嬢様の目がガチになった。
「ふふふふ。陸人~、覚悟してね?」
「覚悟はとっくにーー」
 次の瞬間、視界が一回転した。それに気付いた時には背中に衝撃が走り、無防備になった俺のにお嬢様が乗り、膝で腕を押さえた。
「……え?一何が…」
「ふっふっふっ!これぞ紅葉さんに教えてもらった護の奧義!」
 お嬢様は得意げに笑う。お嬢様が得意げに笑う時は大概あんまり凄くない事ばかりなのだが、今回ばかりは凄い。
 寢起きとはいえ、かなり警戒していた俺が全く反応出來ずに組み伏せられるなんて……。
「……ここまで行ったのは良いけど、どうやって記憶を消すんだろう?」
 お嬢様は肝心の記憶を消す方法が無かったらしく、首を傾げるお嬢様を見て、やっぱり変わらないなと思った………。
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