《職業通りの世界》第46話 不可解な遭遇
「……言っている意味が分からないんですけど」
「文字通り、俺の娘をこのクソみたいな街から連れ出してほしいですよ」
 主人は本気で言っているみたいで、全く引こうともしない。
 お嬢様に視線を送ると、困ったような表になっている。お嬢様も今回ばかりは連れて行く気にはなれないみたいだ。
 確かに、これから任務に行こうというのに、ただの子供を連れて行くなんてあり得ない。
「すみませんが、自分たちは任務先へと向かっている最中でして」
「そ、そうでしたか……。すみません、困らせてしまって」
 悲壯が漂い、主人が立ち去ろうとした時、お嬢様が余計な事を言った。
「私たちの任務が終わったら迎えに行きます!」
 ……はい?お嬢様、何言ってんの?
「……!ありがとうございます!!」
 主人は大層喜び、お嬢様の手を両手で握って拝むように跪いて泣き始めた。
 お嬢様は俺と視線が合うと、「やっちゃった♪」とでも言っているようにテヘペロの形で返した。
Advertisement
 結局、お嬢様が約束をわしてしまったので帰りにここに寄って娘さんを連れて行かないといけないという、面倒な事態になった狀態で夜を越した………。
 翌朝、宿からの豪華な朝食を摂っていつも通りに買い出しをし、馬を預けた馬小屋へと行くと、そこには30人ほどのゴロツキが待ち伏せしていた。
「……お嬢様、素早く片付けて來ます」
「よろしく~」
 お嬢様の許可も得て、スキル威圧視を使いながら男たちへと向かって行く。威圧視でどっかへ行ってくれたらすぐに済むと思っていたが、誰も影響をけていない。それどころか、俺にヨダレを垂らしてまるで捕食者のような目でーー
「「「「「「「「「ぐるがぁぉ!!」」」」」」」」」
 というか、こいつらゾンビじゃね?
「おいおい!お嬢様~!!」
「ん~?何~?」
 流石に俺も30人ものゾンビを一掃出來る技も魔法も無いので、お嬢様の下へと走る。ゾンビどもは映畫とかの鈍くて遅い足取りなんかでは無く、普通に生きている時のような速度で走ってくる。その様子は飢えた猛獣のようだ。
「お嬢様!《ブリキアント》を一掃した魔法を!」
「え~?分かった」
 まだ眠そうなお嬢様は、仕方ないように手を突き出した。その手からチカチカと火花が散り始めている。
「いっくよ~」
「どうぞ!!」
 俺は強化魔法を使って思いっきり飛び、お嬢様の背後に著地する。
 それに気付いたのかは知らないが、お嬢様は俺が居なくなった瞬間に魔法を発した。
「"フレアバースト"~」
 気迫の無い聲とは裏腹に、凄まじい炎がゾンビたちに襲いかかり、片っ端から灰にしていく。ものの數秒で30ものゾンビは全て灰になった。
「…何なんだったんだ?というか、この世界にはゾンビは実在すんのかよ」
 朝から全力ダッシュをさせられた事に腹が立ってそれ以上考える事はしなかった。
「……ふぁ~あ、眠い」
 日當たりも良く、鳥たちも元気にさえずりをしているのが聞こえる。だが、今は馬車で移中なので、日向ぼっこも出來ないし、外で走り回る事も出來ない。ただただ眠気が促進させられるだけだ。
 後ろのカーテンを捲って馬車の中を見ると、お嬢様を始め、メサとメイカもこの圧倒的な眠気に負けて寢てしまっている。
 今日は絶好の晝寢日和。だが、明日には次の街《グノハ》に著くように馬を走らせないといけない。寢ている場合ではないのだ。
 ……寢ている場合では無いのに、やけに眠気が來る。それも、耐え難いほどの深いものが。
 ……もしかして、催眠ガスでも発生しているのかと考えついた頃には意識はもう消えかかっていた………。
「ーー人!」
 誰かが何かをんでいる。靜かにしてほしい、まだ眠いんだが。
「陸人!!」
 はっきりと聞こえたお嬢様の聲で、俺は飛び起きる。すぐさま辺りを見渡すと、どこかの森の中に居るみたいで、森の木々やキツネやサルのようながちょくちょく見える。
「良かった、みんな無事で」
 お嬢様は安心したように息を吐く。メサとメイカももう起きていたようで、俺を心配そうに見ている。
 そんな事よりも、馬車を縦している時に居眠りをこくなんて、執事として失格だ。
「お嬢様!申し訳ありません!!自分が睡魔などに負けて寢てしまった所為でこんなところに!」
 きっと馬車が転倒してこの森に吹き飛ばされたんだろう。運良くお嬢様に怪我は無かったようだが、もし、大きな怪我をされていたとしたら!俺はーー
「陸人!これは陸人の所為なんかじゃないよ!この森がおかしいんだよ」
 お嬢様が俺を勵ますために言ってくれているのだろうが、その心だけでーーあれ?
 顔をし上げて気づいたのだが、し歩けば著くところに馬車がある。しかも、特に外傷も無く、馬も気持ち良さそうに寢ている。一どう言う事だ?
「目が覚めたようだな」
 頭上からの聲に、すぐさま立ち上がってお嬢様を隠すように中腰になり、聲のした方を向くと木の枝に左腕がまるで植ののようになっているが立っていた。
 明るめの緑の髪をへそ辺りまでばし、右手には木製の弓を持って茶の目には警戒心が映し出されている。
「歓迎はしないが、わさわざ遠い地から來た事には敬意を表する。真っ當な志しを持つ異界の戦士よ」
「だが、この森に無斷で立ちろうとしたのは萬死に値する。よってこの場で大地の養分となれ!」
 最初は話の通じそうな奴だと思ったが、すぐさま右手に持った弓を構えて、#左腕__・__#を裝填して、左腕の一部を飛ばして來た。
「お嬢様!自分から離れないように!!」
「う、うん!」
「メサとメイカもこっちへ來い!」
「は、はい!」「いきなりなんて常識無いんじゃない!?」
 お嬢様たちが俺の背後へ回ったのを確認して、無限収納から刀を取り出して矢(?)を刀にらせて減速させて、左手で摑む。
 近くで見るも、普通の木のにしか見えないが、これがさっきまであのの腕にあったと思うとゾッとする。
「…ふっ、これだから異界の戦士は#狩りやすい__・__#」
「は?何がーー」
 の言っている意味が分からず、頭のおかしい奴だと思っていた矢先、左手に持っていたが増長して俺の首元へと絡まり始めた。
「ちっ!何だこれっ!?」
「一番劣っている人族は所詮、異界の住人でも人族に変わりない。數のいない人族など私一人でーー」
「"フリーズ"」「冷たっ!」
 木のをどうやって解こうと思っていたところ、お嬢様が凍らせてくれたので、冷たいながらも砕いて解く。
 それを見ていたはお嬢様に対して、恨みのこもった目を向けている。
「…やはり居たか。魔法を使える人族が」
「いつまで上から目線をしてんだよ!」
 お嬢様に失禮な視線ばかり送るめがけて刀を投げつける。多は驚いていたが、木の枝から飛び降りて俺たちの前に著地した。
 地面に降りてしまえばこちらのもので、瞬時に近付いて腹に回し蹴りをぶち込み、吹き飛ばす。
「カハッ!……おのれ、人族が……」
 巨大な木にぶつかってが気を失った時の一瞬、森が風でざわめいた。それがまるで、森が驚いたようにじた………。
============================================
3分小説
一話完結の短編集です。
8 143異世界に転生したので楽しく過ごすようです
俺は死んだらしい。女神にそう告げられた。しかしその死は神の手違いによるものだと言われ、さらに生き返らせてあげるとも言われた。 俺は、元いた世界ではなく、楽しく生きたい為だけに剣と魔法の世界を望む。すると何を思ったのか女神は、面倒なスキルと稱號を俺に渡して、転生させた。 あの女神は絶対に許さん!いつか毆ってやる! 俺はそう心に誓い、旅を始める。 これは、剣も魔法も有る世界に転生した男の苦労と苦悩と沢山楽しむ話である。 ※主人公の名前は出てきません。お話の最後あたりに出る予定です。 小説家になろう様でも投稿をしています。そちらもよろしくお願いします。 ※追記 第186話にて主人公の名前を出しました。
8 101創造の力で異世界無雙~言霊使いの異世界冒険譚
目を開けてみるとそこには見知らぬ場所が。そこで創造神やら何やらに世界を調整して欲しいと言われた。そして何かを戴けるそうなので俺は━━━━━━━━ 神様達からの加護で『創造』やら何やらの力(チート)を貰った俺は異世界を堪能しながら調整とやらを行っていった。現実世界でも最強の幸は異世界でも最強のようです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━処女作です。可愛がってください。 誤字脫字等あったら教えてください。逐次更新していきます。 週に1、2回にします。ちょっとキツくなりましたので。 もし、面白いと思ってくれたなら、高評価お願いします!
8 88精霊使いと冠位の10人
今から500年ほど前に世界各地に魔獣と呼ばれる異形な存在が出現し始め、その魔獣は人間を食い殺し、世界人口の約2分の1が魔獣によって殺された。 魔獣は銃や戦車による砲撃などの兵器を使用しても大したダメージを與えることができず、人類はなす術なく滅亡の危機に陥れられた。 しかし魔獣の出現と同時期に魔法という異能の力を持つ人々が現れ始めた。 魔法を扱える人間の數こそ少ないが、魔法による攻撃は魔獣にとって有効なものであるとわかり、各國で魔法を使えるもの達を集め、魔獣の討伐組織が結成された。 その組織の名は魔法省。 中でも最強と呼ばれる上位10人が冠位の10人(グランドマスター)とよばれており、今においてはヒーローのような存在だ。 そして現在、とある高校生入江康太もそんなヒーローに憧れ、魔法省への入るのを夢見る男子ではあるのだが、殘念なことに彼には魔法が扱えない。 世間の人から見れば魔法を使えない=一般人という方程式が成り立つのだが、彼にはそんな常識とはかけ離れた「力」を持っていた。
8 126闇夜の世界と消滅者
二〇二四年十一月一日、世界の急激な変化をもって、人類は滅亡の危機に立たされた。 突如として空が暗くなり、海は黒く染まり始めた。 それと同時に出現した、謎の生命體―ヴァリアント それに対抗するかのように、人間に現れた超能力。 人々はこれを魔法と呼び、世界を守るために戦爭をした。 それから六年。いまだにヴァリアントとの戦爭は終わっていない…………。
8 176クラス転移、間違えました。 - カードバトルで魔王退治!? -
カードバトル。それは、少年少女が駆け抜ける"夢の軌跡"。 季節は春。5月1日の暖かな時期。 修學旅行のスクールバスに乗る2年4組の生徒達は、謎のドラゴンと遭遇する。バスごと生徒らを連れ去るドラゴン。彼が向かった先は、とある美しい宮殿だった。 なんと! 2年4組の生徒は、契約により異世界に召喚されていた。そして、彼ら彼女らの知らぬ間に、魔王討伐の誓いを結ばれていたのだ。しかも話によると、その契約は手違いで、2年4組でなく、2年1組を召喚するはずだったとか言って、ふざけるなと激怒!! 権力も金もコネも力も無い、ただの高校生。そんな2年4組達が、魔王を倒す手段は『カードゲーム』での真剣勝負!? 超個性的なクラスメイト達が送る、全く新しいクラス転移ファンタジー! 果たして2年4組の生徒達は、無事に元の世界に帰還することができるのか!! ※第14話、デュエル回です。
8 118