《職業通りの世界》第47話 傲慢な種族
「さて、どうします?」
「どうするも……陸人が気絶させちゃったからね」
 お嬢様がわざとらしく困ったような表で見てくるので、顔を逸らして馬車の下へと向かう。ちょうど馬車の様子が知りたかったしな。
 馬車へと著くと、馬はまだ寢ていて、馬車の中も荒らされた様子は無かった。あのは俺ら全員が目が覚めるまで何もしなかったらしい。
 馬車をどうかすかと考えたが、こんな木の大きなっこやらでデコボコしたところを馬車で移出來るはずも無く、仕方なく馬を近くの木に停める。あのの仲間も馬を殺そうとは思わないだろう。
「お嬢様、馬は使えませんのでこれからは歩いて向かいましょう」
「そう…だね、ここは流石にね」
 お嬢様はをロープでぐるぐる巻きにして、メサに抱え込ませるように言う。メサはし嫌そうな顔をしたが、すぐに観念して背中に背負ってメイカがさらに上からロープで固定した。
「では、行きましょう。幸いな事に、道は分かりますので」
Advertisement
 一部の木々に付けられた傷。ナイフ等で付けられた人工的な傷なので、の仲間が目印として付けたんだろう。これを遡って行けば集落か村かは知らないが、の仲間が集まっているところに著けるだろう。
 気候的には問題無いのだが、デコボコした道のりなので思った以上にお嬢様たちの力が持たなかったので、今日中に著けず、野宿になった。
「このロープを解け!くっ、私が人族などに捕まるなんて…!殺せぇ!!」
 1時間ほど前からうるさいとともに。
「そんな事言いながら左腕でロープをしずつ削りやがって…!さっさとお前らのアジトを教えろよ!さもないと痛い目を見るぞ」
「ふっ、私の心が貴様などの拷問で屈する訳が無いだろう!私を屈服させたかったら、この森でも燃やしてみるがいい!!」
「お嬢様、よろしくお願いします」
「え~、知らないよ?」
「……はっ?ちょっと、待て。……ちょっと待って君っ!…ちょっと待ってくださいぃ!!やめてぇぇ!!」
 強なも森を燃やされそうになるのは予想外だったようで、お嬢様の手から発された巨大な炎を見て、すぐに心が折れた。
 大粒の涙を流しながら、メソメソと泣いている。ロープできが出來ないので、橫に倒れて涙をひたすら流しているのを見ると、凄くいけない事をしている気分になる。
「あんたには選択肢が3つある。
 まず一つは素直に報提供をして、仲間たちが居るところで解放されるか。
 二つ目は報提供をせずに、森が焼かれているのをよく見える場所で眺めるか。
 最後に3つ目は報提供をせずに、森が焼かれる悪夢を永遠と終わりなく見せつけられるか。
 どれが良い?」
 未だ涙を流すに笑顔で突きつけると、より一層泣き出した。背後では鬼畜とか聞こえるが、敵にはそれぐらいが妥當だと俺は思う。
「もう陸人!を泣かせたらダメでしょ!!」
「すみません…」
 お嬢様がを抱きかかえながら注意して來たので、素直に謝る。
 それにしても……見た目は20代なのに、まるで5歳みたいな涙腺の緩さだな。
 それほどまでに森が大事な種族なんだろう。だからと言って、って來た奴を片っ端から大地の養分にしようとするのは良くないと思うが。
「私が彼から々聞くから、陸人は夕飯の用意してて!」
「承知しました」
 し機嫌が悪い様子で、を連れてテントにって行った。全く、あのの所為で、お嬢様にし嫌われたかもしれないじゃないか。
 あのに対して苛立ちが収まらず、し雑に料理する。
「私たちは空気、良いね?」「分かってる」
 メサたちのそんなやり取りすら、俺には聞こえなかった………。
「ほらっ、見えてきた」
「お嬢様、別にそのから聞かなくても、元から目印通りに進む予定でしたよ?」
「良いの、確証が持てたんだからっ」
 朝食を終えてからそこそこ歩いていると、木々の中に木の枝で出來た祭り事の時に吊るす本來なら赤白の紐が吊るされている。森鎮祭の會場はそろそろらしい。
 実は、ってすぐのと戦闘したところが《グノハ》で、《グノハ》は《カタハの森》の隅の地名らしい。
 言ってしまえば、あの時にはもう既に《カタハの森》に著いていた事になる。あの地図は植人族が騙したのか、人族が意図して間違ったように書いたのかは知らないが、何にせよ、現地に著いたのだ。これから任務を遂行して、さっさと帰れば良い。
「また襲われませんか?」「それはもう嫌!」
 メサもメイカも逃げ腰だが、こっちには依頼狀は無いが、分証明書があればすぐに任務で來たと分かるだろう。
「誰だ!?人族?何故ここに!?」
「カミラ様を呼べ!」
 俺たちに気付いた植人族は慌ただしくき始めた。まるで、敵が攻めて來たように。
「おい、お前が説明して來い」
「はい?そんなの出來るわけがないですか」
 お嬢様が背負っているロープ姿のに仲介役をさせようと思ったが、清々しいほどの否定で出來ない事を知った。確かに、こいつも最初は何も訳を聞かずに問答無用で攻撃して來たしな。そういう気の短い種族だと思っておこう。
「……!リーナが囚われているぞ!!」
「この人族めっ!同族を盾にでもする気かっ!!」
「人族に負けたリーナなど放っておけっ!我らの尊き森を守る事の方を優先せよ!!」
 リーナとか言うを連れているせいで余計に反を買い、俺たちを正面に見據えて橫に広がり、もう矢をつがえて構えている。
 どの植人族も腕や腳の一部や片方が植ののようになっていて、そこをばしたりしての一部を矢にしている。このスタイルが植人族の基本的な戦闘スタイルらしい。
「待てっ!俺たちは王國にこちらから來た依頼を達する為に來たっ!俺たちの分証明書はこちらにあるっ!それを見て判斷していただきたい!!」
 俺は腹の底から呼びかけた。全て真実で、誰かしらが確かめる為に來ると思ったが、來たのは嘲笑うかのような嘲笑のみ。
「……何笑ってるのっ?」
「よせ、メイカ」
 自分が任務をけた訳ではないが、俺たちを思って怒ってくれているメイカには悪いが、ここで怒ったらそれでこそ相手のつぼだ。ここはこらえろ。
「我ら植人族が人族に依頼ぃ?」
「ありえない、あり得るはずがない!」
「もっとマシな噓をつきなさいよっ!」
「知能と數ぐらいしか誇れるところの無い人族ではそれが限界ってわけぇ?」
 偶然か知らないが、俺たちの目の前にいる植人族は皆、なので、余計に腹が立って來る。それに、有象無象のゴミどもとお嬢様を一緒にした事も腹が立つ。
 お嬢様に視線を向けると、お嬢様は確かな表で、悪口なんて聞こえてないかのように微笑んだ。何もするなと。
 俺は頷いて返した。お嬢様が耐えているのに、執事である俺が耐えないでどうするっ。
 そんな腹の立つ嘲笑は一瞬で止んだ。そして、どもは次々と自分たちの列の中心を向いて跪き始め、最後の中心にいたが一歩前に出て橫にずれて跪いた事によって見えた。
 エメラルドグリーンの髪を地面までばし、茶のトパーズのような目で俺たちを靜かに見るというより、の子は俺たちに向かってなさが殘っている機械的な聲で言った。
「よく來たな、猿ども」
 たった一言でお嬢様を馬鹿にしたあいつに俺は殺意を抱いた………。
============================================
【書籍化決定】ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~
【書籍化が決定しました】 都內在住の大學3年生、天童蒼馬(てんどうそうま)には2人の『推し』がいた。 一人は大手VTuber事務所バーチャリアル所屬のVTuber【アンリエッタ】。 もう一人は大人気アイドル聲優の【八住ひより】。 過保護な親に無理やり契約させられた高級マンションに住む蒼馬は、自分の住んでいる階に他に誰も住んでいない事を寂しく感じていた。 そんなある日、2人の女性が立て続けに蒼馬の住む階に入居してくる。 なんとそれは、蒼馬の『推し』であるアンリエッタと八住ひよりだった。 夢のような生活が始まる、と胸を躍らせた蒼馬に『推し』たちの【殘念な現実】が突きつけられる。 幼馴染で大學のマドンナ【水瀬真冬】も巻き込み、お節介焼きで生活スキル高めの蒼馬のハーレム生活が幕を開ける。
8 197【書籍発売中】【完結】生贄第二皇女の困惑〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜
【書籍版】2巻11月16日発売中! 7月15日アース・スターノベル様より発売中! ※WEB版と書籍版では內容に相違があります(加筆修正しております)。大筋は同じですので、WEB版と書籍版のどちらも楽しんでいただけると幸いです。 クレア・フェイトナム第二皇女は、愛想が無く、知恵者ではあるが要領の悪い姫だ。 先般の戦で負けたばかりの敗戦國の姫であり、今まさに敵國であるバラトニア王國に輿入れしている所だ。 これは政略結婚であり、人質であり、生贄でもある。嫁いですぐに殺されても仕方がない、と生きるのを諦めながら隣國に嫁ぐ。姉も妹も器量も愛想も要領もいい、自分が嫁がされるのは分かっていたことだ。 しかし、待っていたのは予想外の反応で……? 「よくきてくれたね! これからはここが君の國で君の家だ。欲しいものがあったら何でも言ってくれ」 アグリア王太子はもちろん、使用人から官僚から國王陛下に至るまで、大歓迎をされて戸惑うクレア。 クレアはバラトニア王國ではこう呼ばれていた。——生ける知識の人、と。 ※【書籍化】決定しました!ありがとうございます!(2/19) ※日間総合1位ありがとうございます!(12/30) ※アルファポリス様HOT1位ありがとうございます!(12/22 21:00) ※感想の取り扱いについては活動報告を參照してください。 ※カクヨム様でも連載しています。 ※アルファポリス様でも別名義で掲載していました。
8 73【WEB版】灼熱の魔女様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】
◎アーススターノベル大賞にてコミカライズ大賞と審査員賞を頂きました。6月1日に書籍が発売されました!第二巻も出ます! 「魔力ゼロのお前など辺境に追放だ!」 魔法の使えない公爵家令嬢のユオは家族から『能なし』と疎まれていた。 ある日、彼女は家族から魔物がばっこする辺境の領主として追放される。 到著した貧しい村で彼女が見つけたのは不思議な水のあふれる沼だった。 彼女は持ち前の加熱スキル、<<ヒーター>>を使って沼を溫泉へと変貌させる。 溫泉の奇跡のパワーに気づいた彼女は溫泉リゾートの開発を決意。 すると、世界中から様々な人材が集まってくるのだった。 しかも、彼女のスキルは徐々に成長し、災厄クラスのものだったことが判明していく。 村人や仲間たちは「魔女様、ばんざい!」と崇めるが、主人公は村人の『勘違い』に戸惑いを隠せない。 主人公の行動によって、いつの間にか追い込まれ沒落していく実家、ラインハルト公爵家。 主人公は貧しい領地を世界で一番豊かな獨立國家に変えるために奮闘する。 全ては溫泉の良さを世界に広めるため! ビバ、溫泉! 自分の能力に無自覚な主人公最強のスローライフ領地経営+バトルものです。 戀愛要素なし、ギャグタッチで気軽に読めるようにしています。 ※R15は念のためとなっております。 誤字脫字報告、ありがとうございます! 感想は返信できておりませんが、とても勵みにしています。感謝です。 現在は月曜日・水曜日・土曜日に更新しています! ※書籍化に合わせてタイトルを変更しました。舊タイトル:灼熱の魔女はお熱いのがお好き?魔力ゼロの無能だと追放された公爵令嬢、災厄級の溫めスキルで最強の溫泉領地を経営する~戻ってこいと言われても絶対に嫌です。あれ、気づいたら実家が沒落してた~
8 118學生騎士と戀物語《パンドラボックス》
入學式とゆう大事な日に堂々と居眠りをしたり、授業を真面目に受けないこの物語の主人公 月影亜紀斗(つきかげあきと) ただ力を求めるだけの少女 月野蛍(つきのほたる) 彼のいる世界は自分の持つ固有スキルが強いほど権力があり、弱い者は権力がない。全てが力で決まる世界。 そんな世界で二人が起こす物語とは⁉︎青春ドタバタSFコメディー
8 185転生したはいいけど生き返ったら液狀ヤマタノオロチとはどういうことだ!?
いじめられ……虐げられ……そんな人生に飽きていた主人公…しかしそんな彼の人生を変えたのは一つの雷だった!? 面倒くさがりの主人公が作る異世界転生ファンタジー!
8 184都市伝説の魔術師
ゴールデンウィークが明け、六月。『事件』後、家族と仲睦まじく暮らしていた柊木香月とその妹夢実。 彼の本業である學生生活と、『裏の仕事』も順風満帆に進んでいた。 彼の裏の仕事は魔術師だった。それも魔術師として優秀な存在であった。 最強の魔術師にも弱點はある。 「私は……仕方がない。都市伝説に『殺されても』仕方ないのよ……!」 「そうであったとしても、罪を裁かれようとしても……女性が涙を流している。それだけで助ける理由には充分過ぎると思うのだが?」 魔術師柊木香月は都市伝説から彼女を守るべく、取った行動とは――! 「……どうしてお兄ちゃんは毎回のように女の子を助けてくるのかな? もうこれで數えきれない程の回數なのだけれど。お兄ちゃん、慘殺か虐殺、どっちがいい?」 「ちょっと待ってくれ夢実! いつから君はヤンデレになったんだ! 頼むからそのコンパイルキューブを仕舞ってくれ! なあ!? 頼むから!!」 現代に生きる魔術師とその爭いを描く、シリーズ第二弾登場!
8 85