《職業通りの世界》第48話 植人族の族長
「私はそれなりに骨のある奴を頼んだのだが………、狂犬を頼んだ覚えは無いぞ」
「何も狂犬が初めから牙をむいているとは思うなよ?それに、お前が相対しているのはお前たちと同じ知ある人だ」
 お前たちと同じという部分に、偉そうな奴だけで無く、周りの奴も表を変え、罵詈雑言を浴びせて來た。
「黙れ」
 その一言は俺か周りの連中か。どっちにせよ、たった一言で騒がしかったのは噓のように、知らん顔の風と大きな木々の葉れの音のみとなる。
「口には気をつけよ。私と貴様とでは天と地の差がある事を知れ」
「なら、それを埋めてやるよ」
 いい加減腹の立っていた俺は右手に手頃の石を持って、奴に投げつける。それは當然、當たるはずも無く、奴の顔の橫を通ったので、スキル置換転移で石と俺をれ替える。
 そして、右手に無限収納から刀を取り出して奴の中段に振り抜いたが、地面から現れた木製の刀が細い両刃直剣によって防がれる。
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「ほらなっ、簡単に埋まっただろ?」
「……なるほど、なかなかこの森をしてくれているようだ。進んで養分になりたいとは」
 奴は煩わしいように睨んでくる。
 それにしても、さっきの剣の現れ方はが柄を摑んで引っ張り出して來たようだった。……奴のの部分は右足と左腕。2箇所あるのは面倒だな。
「…人族はいつも異界の戦士に頼る。本來ならば、己たちの力でし遂げるべき事に決まっているのだがな」
「知るかよ、お前たちの事やら理屈は。ただ、俺が仕えている人を汚した。それだけで、執事がお前の首を離す理由には事足りる」
 俺にはこいつらに有効的な火屬魔法は大して使えない。弱い火を起こす程度だ。だが、自分たちが上だと勘違いをしている子供を教育しやすいハンデでしかない。
「執事が族長である私に楯突くだと?笑わせるなよっ、人族風が」
 本を現したように、地面に刺さった剣を取り、俺に向かって來た。その速度は大して速くない。簡単にタイミングを計れる。
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「っ!そういう事か!」
ーガギィン!
 悠々と躱してがら空きになった腹を両斷してやろうと、足を踏み出そうとした時、足にが絡まり、きが止まってしまい、奴…恐らくカミラが上段から振り下ろして來た剣をけ止めるという、あまり得策では無い対処を強制させられた。
 さらに、け止めた剣が蠢いたと思った時には、ツルがび、刀を持つ手を刀と固定するように縛り付けられる。
 これだと刀を投げつけたり持ち手を変えたりする事が出來ない。
「その剣は何だ?」
「知らないのか?貴様ら人族が我らに拮抗出來ている最大の要因である『寶剣』だ」
 寶剣?何だそれ?そんなもの、聞いた事も見た事も無い。……いや、もしかしたらカレナさんの剣が……
「貴様らの最強の騎士であるカレナが持っている剣だ。…カレナがいるせいで貴様ら人族を滅せないのだ」
「……あの剣が…」
 一瞬だけ輝いたところを見た事があるあの剣がカミラが言う寶剣というものなのか。かなりの武だという事が理解出來た。
「寶剣というものがどんなに強い武だろうと、きで分かるぞ。あまり剣を握った事がないのが」
 図星だったのか、眉をひそめる。
 さっきの上段、悪くは無かったが、あの後にするのが手と刀の固定だなんて、慎重派にも程がある。だが、こいつの格からして、慎重派だなんて、あり得ない。
 つまり、剣においては素人まではいかないが、半人前でしかない。
「來いよ、剣の指導をつけてやる」
「……人族が、この私に指導など、の程を知れっ」
 だいぶお怒りのようで、剣を地面に突き刺し、手を地面につけた。恐らくお嬢様が前にやっていた魔法とかでも使うのか?
「…"フォレスター"」
 急に俺を囲うように8本の幹の細い木が生える。
「"ブロウ"」
 一斉に俺めがけて幹がムチのように攻撃してきた。その速度はそれなりに速く、2本くらいならけ止められるが、4本からかなり強くなってくる。
 それに足が縛られて避けられないので、斬り落とすしか無いのだが…
「そんなもので私の罰を防ごうなど……。素直にせよ」
 刀と手を固定していたツルが地面にび、を張ったようにピクリともかなくなった。
 ならば、左手にと思ったが、左手には地面から生えたが絡まりかないように固定された。
「さあ、せよ」
 俺が完全に防ぐ手段が消えたのを待っていたように、幹たちは反って準備をしていたのだが、カミラの一言で抑えが無くなったように勢い良く俺めがけて振り下ろしてきた………。
ーズダダダダッ!
 とても幹とは思えないほどのムチの応酬が陸人に襲いかかっている。砂埃で何も見えないし、出て來た時點で陸人の様子は見えなかったけど、陸人なら何とかしてる。
「…原型を留めているのは流石は異界の戦士と言うべきか」
 この森でも偉いであろう、誰かが呼んでいたカミラという名前らしきの子がギャップのある口調で気になる事を言った。
 原型を留めているって、どういう事?まさか……
「そらっ、貴様の使用人なのだろう?」
 いくつもの幹の中から一本が何かを私のところに投げつけて來た。それは全に打撲の痕が痛々しく殘っている陸人だった。
 服は所々が破れていて、服が破れるほどの攻撃が打撃だなんて、信じられない。
「……陸人、ねぇ陸人」
 陸人を揺する。とても、呼吸や心拍を確かめる気にはなれない。確かめたら、現実が明らかになる。そんなの、知りたくない。
「陸人、ねぇ……陸人ったら!」
 痛々しい痣の殘る顔に涙が落ちる。
 私はいつから陸人を一人にしたんだろう。陸人だって、一人の人間なのに。人間が一人で出來る事なんて限られている。
 私は陸人を信じすぎていた。……いや、陸人に頼り過ぎていた。こんなの、私が見殺しにしたのと同じ……。
 私が魔法を使えば、陸人がこんな事になる事は無かった。私が陸人を真に想っていたら……!
「連れて行け。明日の明朝に大地への捧げものとする。それまで牢へぶち込め」
 私の意識はもう陸人にしか無く、隣でメサちゃんたちやリーナちゃんが何やら話しかけて來ているけど、全く聞こえない。
「これはどうしますか?」
「…一緒にぶち込んでおけ。大人しくなるだろう」
 私の脇に腕をれられ、無理やり立たされ、陸人も2人がかり同じように持ち上げられて連れていかれる。
 陸人、私の陸人。陸人と一緒ならこの地で死ぬ事になっても………。
 森鎮祭。それは植人族が崇めている森を年に1度、自らの繁栄と森の安全を祈り、1年を通して行った木の実採取や伐採などを良く思っていない森を鎮めるために、生贄、もしくは捧げものとして人を殺して埋めて養分としてもらう。
 その為にわざわざ森を出て人族狩りをする年もあったが、大は迷い込んだ人族を殺して保存し、この祭りへと備えて來た。
 だが、人族が思いのほか集まらなかった今年。友好関係を築くためのきっかけ作りという名目で人族を呼んでみては?という案があがり、実行。
 結果、4人の人族と1人の植人族を用意する事が出來た。植人族に関しては、人族に捕らえられた時點で裏切り者判定をけたので捧げものとされた。
 植人族のも涙も無い非道な祭り、森鎮祭は明朝、行われる………。
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 どうでしょうか?初めて説明のみ部分で切ってみました。
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