《職業通りの世界》第52話 任務完了

「そろそろ日が沈むな。おい、臺所はどこだ?」

「そんなもの、ある訳が無いだろう。私たちは食事を必要としない。すべて日ので必要なエネルギーを摂っているのだからな」

 無事にツリーハウスに著き、カミラに臺所の在りかを聞くと、が出來るので無いと言われた。

 確かに、が出來るなら臺所はおろか、食事が必要無いだろうしな。おおかた、曇りの日だけ木の実でも食べているのだろう。

 ここで臺所を出して床にヒビがったら怒られるだろうし、どうするか。

 因みに俺とカミラはお嬢様たちが楽しそうにしているリビングの隅で話していた。そりゃ、お嬢様が楽しそうにしているのに夕飯の事が耳にったらいけないしな。

「まあ、ちょうどいいか。今日は刺にしよう」

 無限収納から氷漬けの魚を6匹取り出す。

 このリビングにはお嬢様たちが遊んでいるソファーと背の低いテーブルがあり、その後ろにはダイニングのような6人がけの機と椅子がある。

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 調理は機でするしか無いので、道で作り出したブルーシートをひく。

 刺なので鱗を取り、臓を取り出して頭を切り落とし、を切っていく。お嬢様は魚より派なのだが、魚も時には食べておかないとな。

 最終的にサーモンのようなもの、マグロのようなものでも中トロのようなもの、鯛のようなもの、鰹のようなもの、ブリのようなもの、ハマチのような刺が出來た。

 中トロとかは本來、マグロの部位のようなものなのだが、この魚は全が中トロになっていた。やっぱり、しズレているところはあるみたいだ。

 片付けと盛り付けを終え、お嬢様たちを呼ぶ。

「お嬢様!お刺が出來ました。メサとメイカも來い」

 自分でも態度の違いは分かるが、仕方ないだろう。執事だもん。

 お嬢様は何とも言えない表だが、あれはの方が良かったという顔だな。

 メサたちは刺は知っているらしく、特に驚く事なく席に著く。刺の文化は普通にあるらしい。ま、當たり前か。

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 そして、醤油を付けて食べたんだが……日本で食べていたものよりは癖がしあるじだったが、味しいものは味しいので、意外と満足出來た。

 食事も終え、風呂も無いので後は寢るだけなのだが、カミラとリーナがお嬢様と一緒に寢る権利をめぐって喧嘩し、結局機とかを排除してみんなでリビングで寢る事になった。

 俺はそんなところに居られる筈もないので、みんなが寢靜まった時間を狙ってリビングを出て、玄関の扉を開けて何も無い、登ってから歩いて玄関に向かう為の足場同然の床に腰を下ろす。

 寢袋も無限収納から取り出し、ここで寢れるようにする。風はし冷たいが、大して問題じゃないな。

「……隣良いか?」

「もう座ってるだろ」

 気配や足音で気付いていたが、カミラが族長らしさ全開で俺の隣に腰を下ろした。晝間の様子とは似ても似つかない様子で、気配も強者のものになっている。

「我々植人族は1年で人となり、壽命は100年ある。別はあって無いようなものだが、見た目はに限られ、によって自在に変えられる」

 突然植人族について語り出した。特に止める必要も無いので、そのまま聞いておく。

 それで分かったのは、全ての植人族はある一部を除いての一部がになって生まれ、2つ以上あるものは族長のとされ、年齢関係無く族長の地位に就く。

 木や木材があればの部分は修復可能で、により曇りや雨の日以外は食事を必要としない。

 魔法も使え、能力は人族より上で、基本的な戦闘はを使う。弱點は火屬魔法ぐらいだが、巖石族以外は実質魔法に対して耐が無いので弱點と言えるかは微妙だ。

 そして、植人族は森を信仰し、森に生き、森に死ぬ種族。異端者以外は生涯森から出る事は無いと言う。森はここだけで無く、他にも森は當然あり、そこに植人族は居るらしいが、族長は寶剣を持っているカミラただ一人らしい。

「ーーとこんなものだ。何か質問は?」

「いや、説明が上手かったから理解出來た。それにしても、何故急に話したんだ?」

 カミラはそっぽを向き、認めたくないような様子で言った。

「お前はもし、私たち植人族を良く知っていたら初戦で負ける事なく、勝っていたのではないか?」

「……否定はしないが、それは憶測に過ぎない。実際にそういった事態になってないからな」

 そうだ。もし、俺がこの話をこの森に來る前に聞いていたら、戦いを有利に進められただろう。だが、現実となっていない以上、憶測でしかない。憶測よりも、結果が全てなのが『地球』とは違う、この世界だ。

「私たちは閉鎖的なので、巖石族は魔法に耐があるのと獣人族は並外れた能力という事しか知らない。これから先、報を出來るだけ集めろ。死にたく無かったならな」

 「もっとも、閉鎖的な我々が言えた事ではないが」と自をこぼして帰った。

 カミラの言った事は事実で、俺には報が無い。城へ帰ったらカレナさんに一度話を聞いた方が良いかもな。

 パンにバターを塗っただけの手抜きの朝食になってしまい、お嬢様に申し訳なさすぎてツリーハウスから飛び降りるのを止められ、お嬢様を抱えて安全に降り、この森を出る時が來た。

 と言っても、《グノハ》はまだこの森だが、集落(?)を出る事には変わりない。付いて來るリーナはともかく、殘るカミラはかなり嫌らしく、

「ここで暮らす気は無いですか?何不自由ない暮らしを約束しますよ?」

「いや、それは結構かな…」

 お嬢様も火も起こしにくいこの森で暮らす気にはなれないらしく、ほば即答で斷った。

「なら、何か困った事や協力してほしい事があれば言ってください!力になりますので!」

「じゃあ、その時はよろしくね」

 勇者であるお嬢様と族長であるカミラが握手をした。立場的には同等なのだが、力関係ではお嬢様の方が上という謎の構図になっている。

「……陸人よ。お前は強いが、異界の戦士である事に違いは無い。先代族長が気にしていた奴と同じ末路になるなよ」

「……?ああ」

 先代族長が気にしていたのは、先代勇者か?そいつと同じ末路は魔王に負ける事か?俺は勇者じゃないんだが、まあ良いか。

「じゃあね!時間が出來たら遊びに行くよっ!!」

 お嬢様は手を振りながら後ろ歩きをしているが、付いて來ている。見えなくなるまで手を振るつもりらしい。

「リクトさん、これから《グレアノス》へ行くんですよね」

「ん?ああ、そうだが」

 この森ではほとんど喋っていなかったメサが話しかけてきた。聲を潛めている事からあんまり他の奴に聞かれたくないのか?

「《グレアノス》に著くまでに私の組織から襲撃が來るかもしれません。その時は……」

「分かってる、お嬢様がお前たちを守りたいと思っている限り守ってやる」

「そうじゃなくて……」

 メサは一度メイカへと視線を向けた。向けられたメイカはその視線に気付いていないらしく、最後にこの景を刻むべく辺りを見渡している。

 メサはメイカから俺に視線を戻して言いにくそうに言った。

「私の仲間にも、もしかしたら嫌々やっている人がいるかもしれないので助けてもらえませんか?」

 メサは自分の言っている事を理解している。理解していながら、言ったのだ。

 俺はメサとメイカだから、信じた。他の奴らはもしかしたら噓や偽りの表が上手い奴がいるかも知れない。なのに……、

「お嬢様が許可したらな」

 俺はメサの願いをその場で無下にする事が出來なかった………。

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 陸人がどんどん正常な人らしさを出してきましたね。

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