《職業通りの世界》第57話 執事vs暗殺者たち
 『#闇夜の暗殺者__ナイトウォーカー__#』は影魔法を使う。全ての影に注意しながら、10人の暗殺者の攻撃をけ続けるのは流石に厳しくて、時間が経つに連れてかすり傷が増えていく。
 鬱陶しい事に、足下の影からナイフは飛んでくるわ、地味にコンビネーションの良い攻撃を仕掛けてくるわ、數の理を存分に活かして絶え間ない攻撃と隙のない攻防を兼ね備えた戦を使ってくるわで、まだ3分も経って無いのにもうしんどい。
 疲労と絶え間ない攻撃でだんだん集中も薄れてきて、意識が及ばない攻撃、2人がかりの回し蹴りをけて部屋の隅へと飛ばされた。
 無理やり腕でけたので、衝撃も威力もそのままだ。
「カハッ!」
 背中に強い衝撃が訪れ、口から空気が出る。普段なら捌けていた攻撃をけてしまった事から、相當限界が來てるな…。まさか數分でここまでやられるとは思ってなかった。
「……執行、闇夜の下に……」
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 5人が俺にめがけてナイフを投げる。これに當たれば死ぬ。……それは駄目だ。せめて、お嬢様がこの世界で心の底から幸せになるまでは!!
 スキル限界突破を使い、ナイフを避け、男たちの背後に回る。殘りの5人は影に潛んでいるとみて、間違いないだろう。
「……続行する」
「……チッ、人形みたいな奴らだなっ!!」
 あんまり使いたくなかった限界突破は、リスクに見合うだけの効果はあり、5人を捌きながらきを読み、あれだけ苦戦したコンビネーションの、攻撃と防がれ替わる瞬間を見極め、5人を刀を一気に振り抜き、上下を分斷する。
 すぐさま限界突破を解き、リスクを最小限にしたが、それでも目眩が起き、その隙を突くかのように俺の影からナイフが飛び出して來た。
 躱したというよりよろめいたという形だが、ナイフは避けれたが、は地面に倒れる勢になり、それで出來た影からナイフが飛び出した。
 完全に死角、それに意識が定まっていない狀態で躱せる筈も無く、俺の心臓と肺、脇腹にナイフが突き刺さった。
ービジャァッ!
 口から勢い良くを吹き出し、そのまま背中から倒れた。ナイフの柄が地面に當たり、なお深く刺さる。
 傷口は熱く、は徐々に冷えていく。……薄れていく意識の中、男たちが俺を見て、何を思う訳でもなく、ただ死を迎える俺を観察するかのように見下ろしていた。
 ……俺は死ぬのか?お嬢様を置いて?お嬢様に恩を返さずに?……駄目だ、それは。それだけは、何があっても駄目だ。
 俺にはお嬢様を幸せにする義務がある。幸せになるよう見守る義務がある。このを捧げ、最期までそのを護らないといけない。
 死ねない。死んでられない。死ぬ訳にはいかない。死んではならない。
 ……執事たる者なら……、こんなところで死ぬ訳にはいかねぇだろっ!なあ、執事っ!!
 スキル ー非常時発型
・職業適極み (執事たる者、執事たれ)
 を獲得しました。
 そのスキルは反則気味で、もしかしたら後でとんでもない代償があるのかもしれない。だが、そんなのは気にしない。今、ここでくたばるよりは!
「…………あぁぁぁっ!!」
 突如みなぎった力を使い、すぐさま男たちから離れる。
 男たちは何が起こったか分からないような顔をしている。確かに俺も分かっていない。だが、分からなくていい!
 痛みに耐えながらナイフを抜く。が吹き出すかと思いきや、吹き出す間も無く塞がった。これはスキル超速再生か。
 ナイフが突き刺さっていて発出來なかったらしいが、ナイフが抜けて漸く発したらしい。
「……対象、再度執行」
「もうお前たちのきは見切ってんだよっ!」
 男たちへ勢い良く踏み込み、自分でも驚くほどの速度で近づいたこの距離で刀を振り抜き、全員上下に両斷する。
 男たちの上半が落ちる音を聞きながら、を見渡す。特に何も変化は無いが、劇的に能力が上がっている。
 まあ、どんな力にせよスキルのおかげで切り抜けたなら謝すべきだ。おかげで俺は執事として、これからもお嬢様の下へと仕える事が出來る。
 スキルが解除されたのは、急に重くなったで分かった。重いでこの屋敷に、しかもまだ居るであろう使用人にバレずに出るのは無理だな。……仕方ない。
ーピコン
『陸人っ!やっと連絡くれた!!今どこにいるの!?』
 すみませんが話は後で……。今からそちらに転移したいのですが、大丈夫ですか?
『……うん、宿屋にいるから大丈夫だよ』
 では、向かいます。
 スキル意思疎通を切り、特定転移を使った。
「本當にいきなり現れたっ!」
 転移した先はお嬢様が言っていた通り、宿屋の部屋だった。だが、転移した時はし宙に浮いているので、そのまま床に落ちた。
「イタタ……」
「ちょっと陸人っ!このの跡は何!?」
 床に落ちて疲労で立ち上がれずにいる俺を抱き上げたお嬢様は、俺の服に付いたに驚いている。……しまった、せめて服を変えてから転移すべきだった。
「……すみません、敵との戦で……深手を…」
 お嬢様に事を説明しようとしたが、お嬢様たちがいる安心からか、耐え難い睡魔が訪れ、必死の抵抗も虛しく、俺は眠りについた………。
「……寢ちゃった…」
 服をまみれにして戻って來た陸人は、私が抱きかかえたまま眠ってしまった。まるで子供の寢顔のように穏やかな表で眠る陸人を起こす訳にはいかないし、それに……生死の境を彷徨ったであろう傷をけたのは私でも分かる。
 陸人は前にも異常な再生をしたけど、それを使って助かったのなら良いけど、そんなスキルがあったとしても……陸人がこんなにも傷付くのはみたくない。
「……もしかして、『#闇夜の暗殺者__ナイトウォーカー__#』に…」
 そんな陸人の様子を見たメサちゃんが何か言った。それは恐らく、陸人を襲った連中の名前だ。
「メサちゃん、そのナイトウォーカーって言うのは何?陸人をここまで傷付けた人たちの事、しでも良いから教えてくれる?」
「……教えますけど……!」
 至って普通に話しているつもりなのに、メサちゃんは私に怯えたような表になる。……そんな怖い顔をしているのかな?
 そんなメサちゃんに代わるように、いつの間にか部屋の扉の近くで壁にもたれている男の人が居た。
「……アホみたいに魔力を垂れ流しているのはあんたか?」
「…誰?」
 もしかしたら、ナイトウォーカーとか言う人たちの仲間なのかもしれない。私は陸人を抱き抱えながらいつでも魔法を行使出來るようにしていたけど、意味は無かった。
「俺はそこに寢ている奴の知り合いなんだが……、簡単に言うとそんな目に遭うきっかけを作ったような奴だ」
 きっかけを作った、それを聞いただけで私はもう自然というより反で男の人に氷の槍を地面から生やして元のすぐ近くに突き付けていた。……すぐにを貫かないのは、陸人に散々人を殺さないように言っていたのに、自分は殺して良いのかと思ったからなのかもしれない。
「……化けの主人が化けなのは道理か」
「…私を化けと言うのは許すけど、陸人は化けなんかじゃない。すぐに取り消さないと氷がっちゃうよ」
 男の人の撤回を聞いたので、し先が刺さっちゃっていた氷の槍を消す。
「聞かせて?全て、陸人がこうなった理由も経緯も」
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