《職業通りの世界》第67話 新しい任務
「ああ……どうしようか」
 目の前に転がる死の數々。どうしようもない衝を抑えられず、もうすぐ日が真上に來る時間帯にも関わらず、殺してしまった。
 あまり殺してはいけないと言われていたというのに、いつも衝を抑える事が出來ず、現在のような狀況によくなる。
「…まあ、いいか。…さて、次に仕留める相手は…」
 暗黙から時間帯に相応しい日差しのある、賑やかな景へと移り変わるその瞬間を一瞥しつつ、フードを被って大通りへと出る。
 何知らぬ顔で歩きつつ、楽しく會話をする人たちを見て、またも衝が込み上げて來たのをじ、足早に去る事にした………。
「皆、揃ったか」
 朝ご飯を終えてすぐに集められたのは、修復の目処が立っておらず、そのままになっている王の間。
 玉座に座る國王とそのそばに佇むカレナさんとお姫様。その表からして、またも任務の話らしい。
「今回の任務はし人員が必要だ。よって、陸人、朱音、巧の3人態勢で挑む事にする。悠と加奈は《スクード》へ戻って引き続き、護衛任務をしてもらう」
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「よっしっ!護衛なんて、暇だったからラッキー!」
 いつの間にか全員の名前を知っていた國王が告げた任務のわけに、巧は大層喜んでいる。俺からしたら、し面倒な奴が居るからもう怠いのだが。
「んんっ!!任務の容を説明する。ここから1週間で著く《ナサーハ》にて、殺人鬼を仕留めてもらいたい」
「……殺人鬼…ですか?」
 殺人鬼という単語に思わず反応してしまう。暗殺者と幾度となく出くわしたとしては、し気になってしまう。
「ああ、『闇夜の暗殺者ナイトウォーカー』と呼ばれる組織の中でも鋭と呼ばれている『暗転クロッド』だ」
「『闇夜の暗殺者ナイトウォーカー』か…」
 どうも俺には暗殺者ととことん縁があるらしい。それも、あの奴らと同じ鋭部隊。
 ……あの時はスキル職業適極みが発したから何とかなったが、その発條件はかなり厳しいものだ。それはカレナさんとの戦闘で一度も発しなかった事から明らかだ。
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「あのー……私は?」
 気まずそうに手を挙げたのは、唯一何も言われていないリーナだ。
「あなたは使者であり客人です。その様な方にしてもらう訳にはいきません」
「……私は植人族と人族との関係をより良いものにする為に來た者です。なら、この國の汚點なども見ておきたいと思うのは、あなた方にとって不都合ですか?」
 初対面した時のような差別的な事は言っていないが、そこそこ威圧的にリーナはカレナさんに尋ねる。
 し顔をしかめた國王がカレナさんに耳打ちをし、それを聞いたカレナさんは困った表を隠さずに言った。
「…今回の任務は恐らく誰かしら死者・・が出る任務です。私がついて行きたいのはやまやまですが、近々控えている『大陸會議』へ警戒や用意をしなくてはならないので」
「……我々植人族は朱音さんの意思に賛同してそちらに歩み寄る事を検討しました。その朱音さんが居なくなる可能がある任務を私が見逃すと…?」
 確かに、リーナの言う事はもっともだ。俺もお嬢様が危険な任務に行くのは賛同出來ない。あのカレナさんが死者が出ると言ったんだ、それに鋭の強さはに染みている。
 一番この中で任務を達出來る可能があるのは……
「自分が行きます」「私が行きます」
 ……俺が言ったのとほぼ同時に誰かが同じく名乗りを上げた。聲でもう誰だが分かっているのだが、信じたくなくて、恐る恐る聲のした方である隣を見る。
 すると、お嬢様と目が合った。まるで、全く同じきをして出くわしたように。
「……お嬢様が自ら危険なところへ向かってどうするのですか?ここは自分一人で構いません」
「陸人こそ、前に戦ってボロボロだったじゃん。もう陸人が傷つくところは見たくないの。……だから、私が行く」
 何を言っているんだお嬢様は。お嬢様が危険な目に遭うのが良くないとリーナが言ったばかりじゃないか。それを、俺なんかを気にしてついて行く?本末転倒もいいところだ。
「お嬢様、自分は執事です。なら、お嬢様の危険を全て取り除くのが使命であり、義務です」
「いつもそんな事言って、心配するこっちのになってよ。前だって鋭部隊の一つと戦ってギリギリだったんでしょ?今度も生き殘れる保証は全く無いじゃん」
 「え?陸人さん、前に戦った事が?」とカレナさんが信じられないと言いたげに呟くが、そんな事なんてどうでもいい。今はお嬢様を説得するのが先だ。
「ですから、一度経験がある自分が行くんです。お嬢様は下っ端とでさえも一度も戦った事が無いんですから、危険過ぎます」
「私なら魔法の知識もあるし、いっぱい対抗策がある。陸人みたいに刀一つで戦う必要も無いし」
「刀だけではありません」
 気付けば俺とお嬢様は喧嘩腰でお互いの額をくっ付けて言葉の銃弾を撃ち合っていた。
「そもそも、お嬢様は自分の事を気にしすぎです。俺は執事なんですから、何ら心配される事は無いです」
「陸人が危なっかしいから気にしちゃうの!それに、私が陸人を心配して何か不都合でもあるの?」
 だんだんとヒートアップしてきた言い合いで薄っすらと青筋が浮かんできた。それはお嬢様も同じで、まるでお互い譲らない子供のようだった。
「鎮まれぇ!」
「「………っ!!」」
 まだ続けようとしていた言い爭いは、國王の年季がった怒聲によって落ち著きを得た。
 ……あまりにも絶え間無く言い合っていたせいで、お互いにし息が荒い。
「……では、ガレトを連れて行きましょう」
 呆れた様子のカレナさんが呼んだのは、俺がカレナさんと初めて戦う前に倒したあの副騎士団長さんだった。
「……団長、どうして俺が?」
「相手はあの『暗転クロッド』だ。萬全を期したい」
 副団長さんは『暗転クロッド』という名前を聞いて、さっきまでの面倒そうな表から一転、カレナさんに劣らずの鋭い目つきになる。
「いよいよ『闇夜の暗殺者ナイトウォーカー』を掃討する時が……」
「ああ。『大陸會議』が控えている今、首國としてのメンツを保っておきたい」
 さっきも出た『大陸會議』。恐らくんな國や街の代表者が集まって會議でもするんだろう。確かに、そんな時に『闇夜の暗殺者ナイトウォーカー』がでもしてきたら、會議どころでは無いだろう。
「分かりました、心して任務にあたります」
「頼んだぞ。では、そういう事だ。リーナさん、我が國の副騎士団長を信じてもらえませんか?」
「……分かりました」
 お嬢様とついて行きたいというリーナの魂膽は見事に覆され、リーナは肩を落として項垂れた。
「……陸人、特訓しよ」
「ええ、構いませんよ」
 お嬢様はし怒っているようで、右手に炎、左手に氷を纏わせたまま立ち去った。
「……前に戦ったという鋭部隊って、もしかして10人構の?」
「そうですが、何か?」
 カレナさんは心底あり得ないとでも言いたげな顔で驚き、どうやって勝ったのかを真剣に考え始めた。
 まあ、カレナさんはスキル職業適極みを使った時の俺を知らないから無理も無いだろう。
「……陸人さん、本當に勝ったんですか?」
「本當ですよ、カレナさんと戦った時には見せる事が出來なかっただけで」
 ししつこいカレナさんから離れる為に、足早に王の間を出ようとした時、話を聞いていたらしいガレトが鋭い目で俺を睨んでいたが、早く出て行きたかったのでそのまま扉を開けた………。
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