《職業通りの世界》第73話 靜かな異変
「グルガァァァー!グルゴォォォー!ィギィィッ!」
 俺に付けられたから右後ろ足までの斬り傷から黒く濁った赤いを流し、苦痛に悶える《グランドウルフ》。恐らく、ここまで傷ついたのが初めてだったのだろう。深さはそれなりにあるが、致命傷にはなり得ない程度なのに、奴は強い痛みを知らなさ過ぎた。
「お嬢様!」
「これで終わって!"フレイガスト・フリーズブレイク"!!」
 お嬢様が放った、勢いの強い炎の霧のようなものが《グランドウルフ》の全を焼き、炎が消えた瞬間に大きな氷に閉じ込め、大きな音を立てて側から発したように破片となった。
 《グランドウルフ》は原型こそ保っていたが、流石に全からを流していた事による失によって倒れた。大きな巨が倒れた事により、軽い地響きが起こる。
「ハハッ……、まさか本當に倒せる…とはな…」
「巧っ!」
 かなりの重傷だった巧は張によってギリギリ意識が保っていたようで、その張の糸が切れた今、背中から倒れた。
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 駆け寄って手當をしようとしたが、中に出來た傷からは何故かは出ていなかった。もしかして、この世界で強くなった事で出を抑える小板も……。
「ご無事ですか!?」
 巧の様子に呆気を取られていた間に、メサとメイカが馬車から降りてこっちに向かって來ていた。
「メサ!お嬢様を馬車の中へ!!」
「はいっ!」
「メイカ!巧の傷の手當てをするから手伝え!」
「了解!」
 魔力が欠乏した事で顔を青ざめて、合を悪そうにして座り込んでいるお嬢様の事はメサに任せ、刀はなおして、道作で消毒、包帯、合用の針と糸、ハサミ、ガーゼを作り出す。
 巧は《グランドウルフ》の爪によってを抉られ、大きくが欠損している。合するにしても間が空き過ぎているため、ここは新たにスキルを手にれるしかない。
 執事たる者、傷の手當てを完璧にこなせるべき。
 スキル
・応急処置 (執事たる者、応急処置レベルの処置は出來るべき)
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 を獲得しました。
 くそっ!相手がお嬢様じゃないからか、回復魔法レベルのスキルは獲得出來なかったみたいだ。でも、今はこれでどうにかするしかない。
「メイカっ、この布にこのをかけて傷口を拭いてくれるか?」
「わ、わかった。やってみる!」
 メイカにガーゼと消毒を渡し、俺は目を閉じ、スキルに集中する。このスキルはどうやら出を抑え、欠損している部位は欠損したままだが、特別な魔法みたいなもので外部からの菌などを防ぎ、歩くなどの程度の運なら出來るようにするスキルのようだ。
 スキルの詳細も覚的に理解出來たので、目を開けて素早く合する準備をする。合の技も紅葉さんに教えられたものだ。本來は自分が怪我を負ってもある程度けるようにと教えられたものだが。
「ある程度出來たわ!」
「ありがとうな。よし、やるか!」
 メイカによって清潔に綺麗になった傷口は改めて見て結構グロいが、こんな事で狼狽えるほど俺の神はやわではない。
 素早く傷口の端、間がそれほど空いていないところを合していき、大きく空いたところにはスキル応急処置を使う。
 一つの傷につき5分程度で終わらせ、計13箇所の合とスキルの使用が終わった。
「すごいっ、糸と針で布をうように傷を塞ぐなんて…」
「俺たちの居た世界ではむしろ、魔法で治せる事の方が驚きなんだけどな」
 本當に凄そうに目を輝かせるメイカを軽く流し、し苦痛そうな顔をしている巧へと視線を向ける。
 ……こいつがここまで傷付いたのは俺のせいなんだよな。俺がもっと早くこの刀を作り出せていたら…。
 俺は無意識に無限収納から真っ黒な刀を取り出して両手で持っていた。
 その刀は俺の心境なんか気にも留めていないように黒い沢を放ち、俺を宥めるかのように所々に散りばめられた白いが時々チカチカとる。もちろん、當たっている日のの加減だと思うがまるで意思を持っていると思ってしまうほどの存在を放っているのが不気味だ。
「その剣……もしかして"古代石エンシェリト"?」
 橫からメイカが俺が手に持っている刀を覗き込んだ。好奇心80%、呆れ20%という表だ。
「ああ、俺が作り出した最後の剣だ」
「"古代石エンシェリト"製の武なんて…國寶級なんだけどねっ」
 あ、呆れ100%になった。
「まあスキルを失ったんだから、相応の対価だろ」
「……はぁ、リクトと話してなら常識が分からなくなっちゃう」
 メイカは完全に呆れた顔で肩を落とした後、巧の腕を持ち、肩を貸して、右腕で支えるために腰辺りに腕を回して馬車へと歩き始めた。
 急に何も言わずに進み出したので俺が手伝おうとしたところ、「これくらい出來るわよ」と言われてしまった。
 メイカが男を抱えて歩けるなんて思ってもみなかったのでし呆気に取られたが、馬車の近くで手を振るメサの聲で意識が戻り、既にかなり進んでいるメイカと巧の背中を追うように、俺は駆け足で馬車へと向かった………。
「………これはっ…」
 既に日は落ち、晝間の騒がしい騎士たちの掛け聲が消えて風のささやき、蟲の音だけが聞こえる靜まり返った夜。私はし陸人さんたちが気になって《ナサーハ》の事を調べるためにランプのみで照らされた書庫で資料を漁っていた。
 住民の名簿、金の流れ、出りした商人や商業団の記録を見ても特に異常は無かったのだが、死亡者の死亡原因をまとめて種類別に死亡率が書かれた資料を見て唖然になってしまった。
 あの街には『暗転クロッド』が居るため、刃による他殺が主な割合を占めていると思っていたのだが、この資料には魔・・による死亡が半數も占めていた。
「何故魔による死亡者が多い?あそこはそこそこ強い魔こそ居れ、高くてもAランクかどうかの魔しかーー」
ーコツンッ
 あらゆる可能を頭の中で模索していたのに気を取られたからか、この部屋に誰かがって來た事に足音が鳴るまで気付かなかった。
 足音はゆっくりと私の方へと向かっている。もう今更隠れる事も出來ないだろうし……何より來ている奴は騎士ではない。
「何者だ?」
 獨特の雰囲気をじ取り、腰から寶剣を抜いて足音のする方、本棚が向き合っている通路へ剣を構える。
 私の近くに置かれたランプが次第に近づいて來ている奴を照らしていく。
「お前は……」
「お久しぶりです、カレナさん。いえーー」
 闇夜に紛れ込むための黒い外套をに付け、顔に右耳の付けから顎先まで痛々しい刃による傷を付けた男。
「あり得ないっ、貴様は私がこの手で殺したはずのっ!!」
 目の前の景が信じられなくて私は資料が雑に置かれた機にぶつかるまでたじろいてしまった。
「ええ、殺されましたよ。カレラナ・・・・・ホォード・・・・」
 男の言葉に耳を澄ましても、目を見開いて男を凝視しても、目の前の男が本であると頭が訴えている。だが、あり得ないっ!こいつは私が生死を確認したはず!
 私は柄にもなく、酷く揺していて目の前にまで迫っていた私の白銀の寶剣と真逆の赤黒い魔剣に気付かなかった………。
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