《職業通りの世界》第85話 初めの活
 雲一つ無い満天な青空、風も弱く心地良いぐらいの良い日。俺はお嬢様たちと共にそこそこテンション低めで街中を歩いている。もちろん、テンションが低いのは俺だけだ。
「あ~嫌だ、何でこんな事をしなくてはいけないんだ……とか思ってるだろ?」
「……思ってねぇよ」
 巧に思っていたような事を當てられて意地になって認めなかったが、それすらも見かされているのかニヤニヤと笑っている。本當にこいつは人をからかうのが好きだな。
「大丈夫ですよ、リクトさんの蕓はこの世界で一番です」
 昨日大変な事があったばかりだと言うのに、何故か余裕があるメサが勵ましの言葉をかけてくれる。隣でメイカもうんうんと頷いているのも自信がつくようなつかないような…。
「陸人は何でも出來る凄い執事なんだから、自信持って?」
 お嬢様は俺の前に回り込んで笑顔で言う。こういう事を平然と言えるのはお嬢様らしいし、誰の言葉より元気が出る。
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「ええ、分かりました。お嬢様のご期待に応えてみせますとも」
 その場に跪いて柄にも無く微笑んで言うと、お嬢様はしキョトンとした後、飛びっきりの笑顔を見せてくれた……。
「聞いたか?あの曲蕓師はこの街で初めて蕓をするみたいだぞ」
「大丈夫か?下手したら殺されるかもしれないぞ。昔偉かった奴とかにさ」
「何でも門番の1人が期待しているらしいぞ。勇者様のような蕓をするんだと」
「へぇー!そいつは期待出來るな!」
 蕓を行う広場にはもう既に多くの人が集まっていて、集まっている人の話し聲が聞こえてくる。そんな中、俺は道作で生み出したテントを広場からし離れたところに置いて外を伺っていた。
「そろそろ時間じゃねぇのか?」
「分かってるよ、もうし待ってくれよ。タイミングがよく分からないんだよ」
 ニヤニヤしている巧には後で鉄拳制裁をするとして、本當にタイミングが分からない。集まっている人たちは待つのはそこまで苦では無いのか、思った以上に會話が弾んでいるように見える。
「そこまで気になるなら魔法で演出をしようか?」
「……お願いします」
 お嬢様が察してくれたのか、助け船を出してくれたので有り難く乗る事にした。…さあ、もう腹をくくれ!お嬢様が後押ししてくれたんだからな!
 俺は普段の執事の服裝をベースに金と赤のキラキラが散りばめられた裝をなびかせ、俺は高らかに宣言した。
「レディースアーンドジェントルメン!本日はよーこそおいでなさいました!此度の蕓はまだ世に出ていない珍しいものばかり!決して!皆様を退屈させないことを宣言しましょう!!」
ードドォーンッ!
 俺が両手を上げて言い終えたのと同時に背後から花火のようなものが飛び、大きな音を立てて派手にる。
 がゆっくりと消え、完全に消えたのと同時に頭を下げて腰を折り、禮をすると大きな歓聲が巻き起こった。出だしは文句なしの良いものに違いない。
 だが、これからが重要だ。出だしは良くても中がしょぼいものだったら帰ってしまう。それはこの街で曲蕓師としてやっていく上で何としても避けなくてはいけない。
「まず皆様にお見せしたいのはこちらっー!」
 俺は地面に片手をつけ、仕込んであった小型弾のスイッチを地面についてない方で押して弾を起させる。
 小さな起音とともに辺りに薄く砂煙が舞う。砂煙によって姿が見えなくなっている間に無限収納から様々な道を出す。
 灣曲になった臺に油が塗られたフラフープ、高い棒の頭に小さなっかのある鉄棒、そして一車。
 それらを臺、鉄棒の順に2m間隔に並べ、右手にはフラフープを持ち、左手で一車をすぐ近くに寄せた。
 準備が完了したタイミングで砂煙が晴れ、観客の驚いたような聲が聞こえて來た事からそこそこ驚いて貰えたらしい。
「これから私はこちらの乗りで高くジャンプをし!こちらの大きめのっかを投げて、あの小さなっかと連続してくぐり抜けてご覧に見せましょう!!」
 深く禮をして一車へ乗ろうとするが、観客の視線はそんな事が出來る筈も無いと馬鹿にしたようなもので、一気に落膽したような雰囲気がある。だが、これを功させれば大きく印象を変えられるだろう。
 俺はスキル無限収納を発しつつ、フラフープを持つ。これによって火を付けても熱くならない。これは野営などで検証して知った事実だ。
 それを知らない観客は火の付いたフラフープを平然と持っている俺に驚いたのか、先程とは違った雰囲気が漂い始める。
「それでは參ります!まばたき厳ですよ!!」
 一車に乗り、し位置を調整してから思いっきりこいで臺へ移り、すぐさまが宙を舞った。臺が見事にらかに飛ぶジャンプ臺のような役目を果たしたのだ。
 そして、火の付いたフラフープを投げるのと同時に風屬の魔法で調整し、フラフープとっかが中心から直線上に重なるタイミングで一車を離さないようにしっかりと足を締めて、両手で"ブレスト"を使い、をよじって一気に通り抜ける。
 その後、"ブレスト"を使って勢いを殺して著地し、一車に乗ったまま移して落ちてくるフラフープをキャッチした。
「いかがだったでしょうか!?ヒヤリとした張の後に訪れているであろう高揚は!?」
 フラフープの火を水屬の魔法で消しながら言うと、大きな歓聲が巻き起こった。この場に居る全員が聲を上げて賞賛の言葉を投げて來る。
 このバランス覚も、この蕓をり立たせる為の能力も、全て紅葉さんの地獄のような訓練によって得たものだ。まさかそれでこんなにも人々に褒められるとは思ってもみなかった。
 ……こんな気持ちは初めてだ。これが、周りに認められるって事なのか。お嬢様や紅葉さんたちに認めてもらうものとはし違ったこの充実は一何だろうか……。
「ありがとうございます!この度はこの街での初めての活という事もあり、ここらでお開きにさせていただきます!よろしければ、々の褒を頂けると幸いです!では、これにて!!」
 スキル特定転移でお嬢様の居るテントへ転移した後も、會場には大きな歓聲が巻き起こり、金貨を投げる者が大勢居たという……。
「大功だね!」
 テントに転移した俺に始めに聲をかけたのはお嬢様だった。とっても嬉しそうでし興し過ぎているような気がする。
「はい、お嬢様が背中を押してくださったおかげです。それに、お嬢様の前でけない姿は見せられませんから」
 執事たる者、常に主人からの命令を聞けるよう、あるいは貰えるようにしなくてはならないと教わった。それを守ってきたのにこんな所で破る訳にはいかない。
「お見事でした!」「前に見せてもらったものより凄かった!」
 次に聲をかけて來たのはメサとメイカで、興が全く抑え切れていない。前のめりでこっちに迫って、やれここが良かっただの、あれは驚いただの言って來て、正直し恥ずかしいのでやめてほしい。
 観客が帰るまでテントから出れないので、テントで待機していたのだが、お嬢様とメサにメイカが次はどういったものをするのかをしつこく聞いて來て、全然休めない。
 本番の張から疲れがある俺はこの時、巧が全く話しかけてこない事に気が回らなかった………。
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 とても久しぶりな投稿ですね。學校生活に進路の問題とやる事が多過ぎて、この話も合間にしずつ考えて書いたのでこんなにも遅くなりました。
 まだ落ち著く気配はありませんので次の話も遅くなると思います。そこら辺はご了承ください。
人類最後の発明品は超知能AGIでした
「世界最初の超知能マシンが、人類最後の発明品になるだろう。ただしそのマシンは従順で、自らの制御方法を我々に教えてくれるものでなければならない」アーヴィング・J・グッド(1965年) 日本有數のとある大企業に、人工知能(AI)システムを開発する研究所があった。 ここの研究員たちには、ある重要な任務が課せられていた。 それは「人類を凌駕する汎用人工知能(AGI)を作る」こと。 進化したAIは人類にとって救世主となるのか、破壊神となるのか。 その答えは、まだ誰にもわからない。 ※本作品はアイザック・アシモフによる「ロボット工學ハンドブック」第56版『われはロボット(I, Robot )』內の、「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とする3つの原則「ロボット工學三原則」を引用しています。 ※『暗殺一家のギフテッド』スピンオフ作品です。単體でも読めますが、ラストが物足りないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。 本作品のあとの世界を描いたものが本編です。ローファンタジージャンルで、SFに加え、魔法世界が出てきます。 ※この作品は、ノベプラにもほとんど同じ內容で投稿しています。
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