《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》魔法師アリサ。
――と、思っていた時期が俺にもありました。
魔法指南書は魔力の有無を確認するためだけのだった。
それと、魔法指南書という名前はついているが、構は幾何學的な文様が描かれた青銅の板を重ねただけので、本とはなんぞや? と! 突っ込みをれるレベルで……。
まぁ、そもそも
鉄すら見たことないのに、パルプを作る技があるわけがない。
紙というのは、技的には難しいものではないが、文明の進化過程というのはいくつか段階を隔てることで前に進む。
青銅文化ということは、パピルスか羊皮紙かあたりを使っているのだろう。
そういえば、父親の執務室というか書斎にはったことがない。
一度、執務室にれてもらって何に文字を書き記しているのか確認するのも良いかも知れないな。
そんな父親だが、俺に魔法の才能があることが判明したため、その報告に行くため現在は領地を出ている。
一萬人に一人の才能と言われる魔法の才能。
それは、國の防衛、領地運営を含めて、とても有用で有益。
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魔法を教える人間を國や領地の偉い人が派遣するほど力をれているのだ。
ちなみに、俺の家――つまりシューバッハ騎士爵の寄り親は、フレベルト王國アルセス辺境伯のため、父親であるアドリアンは、アルセス辺境伯領の首都に當たる都市アルセイドに向かった。
そして……。
父親が出かけてから、すでに3週間近くが経っている。
母親の話だと、アルセス辺境伯領の首都アルセイドは、馬で片道一週間の距離らしいので、もうとっくに戻ってきていてもいいのだが……。
まぁ、もしかしたら辺境に魔法師が誕生するなんて思っていなくて噓だと思われた可能もありそうだ。
なんと言ってもシューバッハ騎士爵が治めている町というか村というか農村というか山村は、人口が200人しかいない。
そんな山村で、一萬人に一人の割合でしか見つけることが出來ない魔法師が、誕生したとしたら、俺だったら! まずは疑う。
まぁ、貴族同士なのだから、噓などを言ったら大変なことになるのは目に見えているので、そんなバカな真似にはならないと思うが……。
「本當に、魔法が使えるのかな……」
魔力があると判定されてから3週間近くも魔法が発する様子が一度もない俺としては、自分自、本當に魔法が使えるのか? という疑問が湧き上がってきてしまっている。
「まぁ、使えなければ使えなくても問題ないけど……」
俺は、青銅製の鍋に川から水を汲んで家に帰る途中で一人呟く。
しかし、ゲームも何も無いから、そろそろパソコン斷癥狀が出始めてきてやばい。
もともと獨貴族だったから、別に異世界に転生してきても問題ないと思っていたが、これほど、パソコンが無いことが苦痛だとは思わなかった。
「パソコンがほしい……」
心の奧底から切実に願った。
あとはネットに繋がる回線とか……。
し現実逃避しながら、水をれた鍋を持ったまま両脇が草むらの道を歩いていると突然、一人の綺麗なお姉さんが茂みから飛び出してきた。
「――あっ!?」
思わず聲を上げた。
――だけど……、考え事をしていた俺は、咄嗟によけることが出來ずぶつかってしまい、青銅製の鍋にっていた水をに掛けてしまっていた。
「あぶない!」
はぶと俺を抱き上げて跳躍した。
すると、さっきまで俺とが立っていた場所に2メートル近くの熊が姿を現し、頭上を見上げると大きく吼えている。
「しつこいわね」
「あ、あの……」
事態がまったく理解できない。
簡単に説明するのなら、川まで水を汲みに行っていたら途中で綺麗なと出會ってをのにかけたら、抱きつかれて熊が出たというじだろうか?
ふむ……。
まったく分からないな。
「ウィンド・カッター!」
は俺を片手で抱き上げたまま、無數の言語を呟いたと思ったら魔法を放ち、それと同時に熊は、その巨を真っ二つに切り裂かれて絶命したと思う……。
地面に下ろされた俺は、熊の死骸をもろに見て吐いた。
日本人である俺には、耐えられるレベルのではない。
頭の中に埋め盡くされていくのは、嫌悪とよく分からない苛立ちと恐怖――。
「僕、大丈夫?」
は心配した表で俺に話かけてくる。
「大丈夫……です……」
「そう? 顔真っ青よ?」
「問題ないです」
一通り吐き終わったこともあり、し気分は落ち著いていた。
「本當に?」
は、本當に心配しているのか手をばしてくる。
その手を俺は、咄嗟に振り払ってしまっていた。
「……あっ――」
気がつけば、は振り払われた右手を左手で押さえていた。
たぶん、そんなに力はれてないから痛くはないはず。
「ごめんね……、魔法師って怖いよね?」
「えっ!?」
薄々は気がついていた。
が使ったのが魔法だと言うことを。
「……えっと、その……」
俺は、何も言えなくなってしまう。
が熊を連れてきた可能だってある。
だけど、が居なくて熊が居た場合だってあった。
そしたら、俺は間違いなく熊の餌になっていたと思う。
ただ……。
頭では理解していても、心が目の前のに恐怖をじていた。
だから……。
助けてもらった可能もあるだけに、俺は何も言えなくなってしまったのだ。
「おお、アルス。ここにいたのか?」
「お父さん……」
「どうした?」
父親であるアドリアンは、長旅から帰ったかのように薄汚れていたが走ってくると俺を抱きしめてくれた。
「その子がアドリアン騎士爵様のご子息アルス様ですか?」
――一切のが抜け落ちた聲。
それが、俺の鼓を揺さぶった。
まるで、先ほどまで悲しそうな聲で俺を心配していたのが噓のような冷たい聲。
「ああ、俺の息子のアルスだ」
「そうですか……」
どうやら、二人は顔見知りらしい。
「アルス様、私はフレベルト王國アルセス辺境伯様より、今日から貴方様に魔法を教えるように派遣されましたアリサと申します。しの間ですが、よろしくお願い致します」
父親に抱きついたまま、震えている俺に向けては片膝をつくと自分自の名前を告げてきたが、その瞳は……どこか寂しそうなを湛えていた。
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