シューバッハ騎士爵邸の朝は早い。

まず、朝は早く起きなくてはならない。

理由は簡単だ。

シューバッハ騎士爵邸には、客室がないからだ。

居間で寢ている俺とアリサは、簡単に言うなら騎士爵邸の共有スペースで寢ていることになる。

そして居間というのは、朝食を食べる場所にも使われる。

さらに言えば、この世界には炊飯や電子レンジなどの調理技が存在しない。

全て薪で賄われる。

――と、言うことはだ……。

食事の用意に凄まじく時間がかかるのだ。

なので、いつまでも寢ているわけにはいかない。

ただ、一つ問題があるとすれば……。

今は、夏から冬に気候が変化している時期であり夜と朝方が、とても寒い。

――なので……。

「アルス、そろそろ起きないと、お義母さまが起きてくるわよ？」

「もうしだけ……」

俺は一緒に寢ているアリサ先生のに顔を埋めて至福の時を味わう。

やっぱりが大きいのは正義だ。

たぶん、俺の予想だがＥカップは固いと思う。

本當、異世界に転生してよかった。

「ねえ？　アルス。あまり、適當なことをしているとお義父様から、怒られるかも知れないわよ？　もしかしたら、息子がダメになったから婚約は認められないとか言われるかも……」

「――！！」

たしかに……。

母親は、何だかんだ言って人間的に問題があるが、俺にはやさしいし尊敬できる母親だ。

逆に父親は、アリサが俺にとって、有益ではないと思ったら婚約を反対してくる恐れがある。

貴族は、當主の力が絶対だ。

もし反対されたら、せっかく婚約したおっぱ――じゃなくてアリサを失うことになりかねない！

婚約破棄だけは男として！　いいや、前世の４７年間彼が居なかった俺にとって回避するべき最優先課題だ。

――という、ことをアリサの大きなの中に顔を埋めながら何度も深呼吸して考える。

やっぱり、の匂いはいいものだ。

アリサの匂いは最高だ！

俺は満足いくまでアリサの匂いを嗅いだあと、ベッドから出て洋服に著替えていると、アリサが話かけてきた。

「ねえ？　アルス」

「――ん？」

「昨日って、アルスは地震って言っていたけど……」

俺はアリサの言葉に首を傾げる。

「そんなこと言った？」

「うん、言っていたよね？」

「気のせいじゃないかな？」

俺はとぼける。

昨日、大きな揺れがあったので、思わず「地震かー……」と呟いてしまったのだ。

當然、夕食の準備をしているアリサと母親ライラと父親であるアドリアンは、パニックになった。

その中で、一人だけ平然としている俺は、すごい神の持ち主だと思われてしまい、父親なんて、さすがは次期當主だ！　と褒めてくれたりした。

ちなみに、父親は、しばらく足が小鹿のように震えていたりしたが、俺は突っ込むことはしない。

話に聞く限りでは、地面が揺れたことなんて両親やアリサが生きている間には一度もなかったらしいのだ

そりゃ初めて起きた地震に対して足が生まれてたての小鹿になっても仕方ないと思う。

それに地震なんて言葉、この世界には存在していないと思う。

何せ、青銅石の時代なのだ。

地震なんて概念すら存在しないだろう。

むしろ、アリサ先生が言っていた魔法の概念。

想像や空想が魔法を使う上で必要となったら、地震のメカニズムなんて教えたら、それこそ大量殺戮魔法が出來てしまう。

そんなことは教えられない。

異世界だからと言って、何でもかんでも教えたらいいわけではないのだ。

俺は一人、考えながら本格的な冬の到來が近づいてきて寒い中、上著を羽織ったところで、寢室に繋がる戸を空けて母親が居間にってくると「アルス！」と、母親が抱きついてきた。

「あの、今日は、これから魔法の修行が……」

「――ええ！？　待って！　まだ、ダメよ！」

何がダメなのだろうか？

母親は、俺のことを強く抱きしめてくると、首元に顔を寄せると何度も深呼吸してくる。

「ああっ――。やっぱり息子は最高よね！」

母親が呟いた臺詞に似たのを俺は前世で聞いたことがあったが、どこで聞いたか思い出せない。

それよりも、人の匂いを嗅ぐのをやめてほしい。

そういう、特殊癖を隠さなくなったら、もう人としてダメだと俺は思う。

正直、普通の人から見たら引かれると思う。

俺は、アリサに母親が特殊癖の持ち主で無いことを誤魔化すために、「お母さん！　僕はこれから早朝の修行があるので！」と言いながら離れようとする。

「大丈夫よ！　私も朝食の準備があるから！」

何が大丈夫なのか意味が分からない。

とりあえず、そういう人の迷になるような人の匂いを嗅いで悅に浸るような真似はよしたほうがいいと思う。

だけど、もし俺が言ったら母親は傷つくかもしれない。

――くそっ！　どうしたらいい！？

「お義母様、アルスが困っています！」

俺がどうしたら迷っていたところで、アリサが母親に注意してくれた。

ただ、アリサが言うと角が立ってしまうわけで……。

母親はアリサを睨んだあと、目に涙を溜めて、涙を流しながら「ううっ。アルス、お母さんが嫌い？」と、聞いてきた。

「――え？」

いきなり母親が泣き出すなんて理解できなかった。

俺は、どうしたら……。

「アリサ……し言いすぎ――でも……なくも……ないかな……とか……思ったり、思っていなかったり……」

アリサにし言いすぎと言おうとしたら、アリサも泣きそうな表をしたので、俺は何も言えなくなった。

もう、どうしろっていうんだ！

「お前たち、朝から何をしているのだ……」

父親が呆れた聲で母親であるライラの頭を軽くたたく。

「アルス。お前は、アリサ殿と朝食前に魔法の修練に行ってこい」

「はい……」

俺は父親の言葉に頷くとアリサを共だって家を出た。

昨日、魔法の練習を一度だけした川原に到著すると、俺は首を傾げる。

山の中腹に存在していた城の部分が、何か発があったような形跡を殘して山を出させて消えていたから。

「なるほど……」

俺は理解した。

おそらく、昨日、魔法の練習でアリサ先生が使った炎の魔法が城の中の何かに引火して大発を引き起こしたことを。

おそらく、その発の威力があまりに大きすぎて地震のようなが発生したのだろう。

さすがは、俺に魔法を教えにきた魔法師だけのことはある。

「アリサ先生！　魔法を教えてもらえますか？」

「いいわよ！　手とり足とり教えてあげるからね！」

「いえ、普通に教えてくれればいいですから」

俺の言葉にアリサ先生は、しだけ落ち込んだ表を見せていた。

どうやら、俺の周りのには変態しかいないらしい。

まともなを持っているのは俺と父親だけか……。

これから大変そうだな。