《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》アルセス辺境伯。
「アルスか? もう、大丈夫なのか?」
もう大丈夫なのか? と、言うのはどういうことだろうか?
昨日、魔法の練習をしたあと、魔法の才能が無いことに対して悲嘆に暮れていたところ、――だめだ、その後が……記憶が曖昧でよく思い出せない。
には、どこも怪我は無いし問題ない。
「アドリアン様、その件に関しましては……」
「そう……だった……な――」
何故か分からない。
ただ、何か腑に落ちない……そんなじが――。
「その子がアドリアン騎士爵の息子なのか?」
考え事をしていると、50歳ほどに見える細の年配の男に聲をかけられた。
口調と、上質な服を著ていることから貴族なのは間違いないように見える。
「はい。今年で5歳になった私の息子のアルスです」
父親の態度を見て、直する。
間違いなくお偉方だ!
「始めまして、アルス・フォン・シューバッハと申します。よろしくお願い致します」
「ほほう……。5歳とは思えんな。アドリアン卿、本當に、この子は5歳なのか?」
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「はい、そうですが何かありましたでしょうか?」
「そうか……たしか、この子はアドリアン卿の始めての子であったな?」
「はい」
「なるほど……。ところで、招集を掛けたときに魔法師団長が長期休暇を取っていると聞いたが、どうして、ここにいるのだ?」
初老の男は、目を細めながらアリサへ視線を向けていた。
「えーと、それは……」
アリサが言いずらそうに視線を初老の男から離している。
「はぁ……、話はだいたい聞いておる。あとで、そのへんの話はあとでするとしよう」
「わかりました」
アリサが、頭を下げている。
もしかして……かなり偉い人なのか?
「ところでアルスよ」
「は、はい……」
「簡単な問いかけだが、私が誰かを言い當てたら何か褒をやろう」
「……褒ですか?」
「そうだ」
突然、俺を試すように語り掛けてきた男の言に心、首を傾げる。
どのような意図があって、俺を試すような言いをしてきたのかと――。
相手の分が分からな以上、報の取捨選択が難しい。
下手に報を與えるわけにはいかないし、俺のことを怪しんでいる節がある。
何せ、5歳とは思えないとまで看過してきたのだ。
どうしたらいいのか……。
それより、こいつ何者だ?
他領になる騎士爵家の領に軍を連れてきたという點。
そして、昨日までは、そんなことは父親からまったく知らされていなかったことといい。
間違いなくフレベルト王國の國王に仕えている同じ國の貴族だというのは分かるが――。
いや、まてよ?
他領の貴族でも、軍を派兵して問題ごとにならない時點でおかしくないか?
しかも父親が怒っている様子もない。
となると……。
父親と親しい貴族で上位の貴族……しかも、かなりの上の――。
そしてアリサを知っていて彼を問い詰められる人間としたら……。
――あっ!?
俺は顔を上げて初老の男を見あげる。
すると目が合った。
相手は間違いなくアルセス辺境伯爵だ。
おそらく、ずっと俺の様子を見ていたのだろう。
さっきの俺の年齢を疑ったことといい、間違いない。
父親と母親は俺の様子がおかしいとは思ってはいなかったみたいだが……、さっきの會話で理解した。
おそらく第一子だから……。
比較対象がいないから……。
俺の様子が、そこまで変だとは両親は理解していなかったのだろう。
そのことを、アルセス辺境伯は両親に問い詰めていた。
まずそう思って間違いない。
ということは……。
ここは素直に答えるのはマズイ。
「……わかりません」
「ほほう、なるほど、なるほど」
アルセス辺境伯は、俺の頭をでてくると「殘念賞のででだ」と、言ってから父親とアリサを見てから離れていく。
數十歩離れたところで、男が振り返ってくる。
「アルス!」
アルセス辺境伯が話す前に、母親が走って近づいてくると俺に抱き著いてくると「まだ怪我が治ったばかりなのだから、無理をしたらダメ! 家でゆっくりしましょう!」と語りかけてきた。
「周りが見えなくなるのは相変わらずだな? ライラ・フォン・シューバッハ」
「――あ、え? ええ!? どうして、ここに……」
俺に抱き著いていた母親が、男の言葉に驚いたあと、すぐに俺から離れるとスカートの裾を摑んで「お久しぶりです。ピエール・フォン。アルセス辺境伯爵様」と言葉を紡いでいた。
やはり――。
俺の見立ては間違っていなかったようだ。
ただ、辺境伯のような上級貴族が、こんな辺境の騎士爵領地に來た理由が分からない。
「うむ、ずいぶんと教育熱心のようだな?」
「お褒めいただき――」
アルセス辺境伯が母親から俺の話を聞きながら、時折、俺へと視線を送ってくる。
正直、俺の何がアルセス辺境伯の知的好奇心に火をつけたのか分からない。
しばらくすると「アドリアン卿、アリサ。話がある」と言って二人を連れて俺と母親から離れていく。
気になった俺は、こっそり後をついていこうとしたら、「アルスは行ったらダメよ? 昨日のこともあるのだから、今日は休まないよね」と抱き上げられた。
「――ッ!?」
俺は、咄嗟に母親のほうを振り返る。
正確には母親の背後のずっと遠くの空のほうを――。
何か分からないが――。
何かに見られているような気配をじた。
ス辺境伯。
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