《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》友達。
今日から、ハルスの村を出するための用意をする。
俺は、フィーナの家に向かうために朝食を食べたあと、靴が置いてある玄関へと向かう。
俺が外に出るようになってから用意されていた靴。
木を加工して作られただけの簡素な靴だが、誰か作ったかは知らないが履き心地はとてもいい。
に富んだ材質で作られている訳でも無いのに、まるで俺のために作られたようだ。
「アルス!」
シューバッハ騎士爵邸から出ようとすると、母親が後ろから抱き著いてきた。
何故か分からないけど、いつもより俺を抱きしめる力が強い気がする。
「お母さん、どうかしたの?」
母親は、俺の唯一の味方であり、これから村を出て商業國メイビスで暮らしていく上で保護者としても大事な人だ。
俺は、いつもと違う母親の様子に首を傾げる。
「アルス、聞いたわよ? 友達と仲直りしたって――」
「――え?」
「アレクサンダーくんから聞いたわよ? でも、ジャイカルドくんに暴力を振るうのはダメよ? 友達なのだから仲良くしないとね――」
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「友達……」
「そうよ、違うの?」
母親の言葉に、俺の脳裏に浮かんできたのは中學のときに苛められているクラスメイトを助けて友達になって――そして裏切られた場面。
たしかに苛められている人を助けたときに相手を毆った。
そうしないと、苛めを止めることが出來なかったから。
でも……。
――その話は、何時の間にか俺が悪いということになっていた。
一方的に暴力を振るったのだと……。
そして、その擁護が唯一できる俺が助けた人であり友達となった人間は――。
俺は母親の言葉に自分の――、心臓の布地を強く握り締める。
「ううん、友達だよ……」
俺は振り向き笑顔で母親に言葉を返す。
そう、昔の俺とはもう違う。
正義という下らない幻想に夢を見ていた子供とはもう違うのだ。
社會人になれば否応でもなく理解する。
社會人になれば、誰だって分かる。
世の中に正義なんて絶対に存在しないと言うことくらい。
子供の頃は、勘違いをしているだけだ。
大人になれば、どれだけ社會が薄汚れていて汚く自己保の人間で溢れているか理解してしまう。
そう――。
世の中の腐った理を理解してけれることこそが大人になると言うことだ。
――だから、俺は……。
考え込んでいると、母親が俺の頭をでながら「仲直り出來て良かったわ。本當に……、貴方が何も言わずに家から出なくなってから、數日置きに貴方の友達が、心配して來ていたのよ?」と語りかけてきた。
「數日置きに?」
「ええ、ジャイガルドくんなんて、俺が守らないといけなかったのにって言っていたわ」
「シャイガルドが?」
そんな殊勝な奴には見えなかったが……。
「そうは見えない?」
「う、うん……」
「そう、でもね――」
母親は、一度、言葉を區切ると一度、俺を離して目を見てきた。
「ジャイガルドくんも、アレクサンダーくんも、貴方をとっても心配していたわよ?」
「……」
それは、俺じゃなくてアルスを心配していただけでは? と思ってしまう。
いまの俺は桜木優斗であって、アルスではない。
そんな話しをされても迷なだけだ。
「それに……フィーナちゃんなんて、いつもアルスに酷いことを言ったって泣いて謝ってきたのよ?」
「フィーナが?」
「そう。アルスがどうして家から出なくなってしまったのか私は分からない。でも、貴方には、素晴らしい友達がいるのでしょう?」
素晴らしい友達か……。
俺には友達が素晴らしいかどうかなんて分からない。
――分からないが……。
何故か分からないが無に苛立ってしょうがない。
「行って來ます」
俺は、後ろを見ずに騎士爵邸から飛び出した。
「アルス、今日は早く帰るのよ!」
母親が俺の名前を呼んできたが、それはアルスに向けてであって俺にではない。
俺は、いつもの川原の巖場でフィーナが來るのを待つ。
「アルス、お前はいいよな……」
俺は巖場に寢転がりながら小石を川へと投げる。
誰かが気にしてくれるということ。
それは、とても素晴らしいことだ。
気がついた時から施設で暮らしていた俺には無縁なものだ。
俺の初めての記憶――。
それは寒い冬だった。
気がつけば、俺は紺の服を著ていた警察に保護されていた。
何でも、俺は倉庫で一人倒れていたらしい。
洋服も見たことない古めかしいモノで、分証もない。
つまり、俺には戸籍が無かったのだ。
だから、俺には両親はいない。
だから、俺を心配してくれるような人間もいない。
「俺とは、お前は全然違うよな」
俺は小石を投げる。
何度か小石は川を跳ねて川の底へ沈んでいく。
「アルスくん!」
「フィーナか――」
俺は立ち上がり眉を顰めた。
フィーナだけではなくジャイガルドやアレクサンダーまでもがそこに居たから。
「どういうことだ? 約束を違えるのか?」
「違うの! 私が川原に向かっているのを見られて勝手に著いてきたの!」
「……」
厄介だな……。
正直、ジャイガルドとアレクサンダーは俺の計畫には必要のない存在だ。
「アルス! お前は俺の手下だからな! 何かするんだろう? 良かったら手伝うぞ?」
「別に手下になったつもりは……」
そこで俺は、口を閉じる。
たしかジャイガルドの父親は、備蓄食料の倉庫管理をしていたはずだ。
それにアレクサンダーの母親は、織が得意だと――。
「二人に頼みがあるんだが……」
そう、ここはフィーナの妹を助けるということにして協力を取り付ければいい。
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