《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》一人じゃない。

「どうしたの? アルス?」

後ろから強く抱きしてくる母親が耳元で語りかけてくる。

やさしい溫もりと匂いが俺を包み込む。

怒りや憎しみの業火が、ゆっくりとその炎を鎮火させていく。

「お母さん……」

俺は抱きしめられていた母親の腕を両手で強く抱く。

「本當にどうしたの? まるで――」

「お母さん?」

「皆と喧嘩したって戻ってきた日みたいよ?」

「皆と喧嘩して戻ってきた……?」

母親の言葉に、俺は記憶の糸を手繰り寄せる。

フィーナが言っていた。

たしか……狼からフィーナを助けたとき、彼は俺が怖くて酷い言い方をしたと。

おそらく、それから俺は引きこもりになったのだろう。

「――ううん、大丈夫」

俺は頭を振って何でもないと伝える。

そうだ。

――今は、魔王を倒すことだけを考えるんだ……。

それ以外は、必要ない。

母親を、フィーナを助けるためには魔王と襲ってくる配下の殲滅。

最初の段階で魔王と配下は倒した。

自分の命を使って――。

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途中までは、それと同じルートを辿ればいい。

「寢ぼけていたから」

俺は布団から出ると、居間に向かおうとすると母親に押し倒された。

「今日は、もうし寢ていましょう? アルスは疲れているみたいだもの……」

「……うごけない……」

「こう見えても、お母さんは々な寢技とか得意なのよ?」

たしかに得意そうだ。

それに々な部分がし気になる。

完全にホールドを決められた狀態で、痛くはないけどけない。

――というか、寢技が得意とか言われても妙に納得してしまう俺がいる。

「う……うん――」

父親は、一週間くらいは帰ってこない。

こうなったら、どう足掻いても抜け出すことは出來ないだろう。

俺は諦めて目を瞑った。

――聲が聞こえる。

最初に聞いた……誰かの聲。

その聲は、どこか聞き覚えがある聲で――。

「――んっ……」

ゆっくりと瞼を開ける。

すると、母親であるライラは俺を抱きながら頭をでていた。

「お母さん?」

「大丈夫? とても辛い夢を見たの?」

「辛い夢……」

夢なんかじゃない。

あれは現実で――。

フィーナは俺のせいで殺されて……。

「また、そんな顔をする。だめよ? そういう顔はダメ」

「そういう顔?」

「そう、一人で何でも抱え込もうとしたらダメよ? 周りを見て、貴方には貴方を大切に思うたくさんの人がいるのだから――」

「……」

そうだ。

俺は、ずっと一人で――。

誰かのせいにして

誰かが悪いと決め付けて

自分勝手に誰かを見捨てて

それでも、誰かが手をばしてくれた。

勝手な考えをしていた俺を信じてくれるといってくれた人がいた。

一人で解決できないなら、誰かの力を借りればいい。

「お母さん、お願いがあります」

「ふふっ、どんなお願い?」

「僕が魔法を使えるかどうか確認したいのです」

「――それは!?」

「分かっています。お母さんが心配していることは……。でも、それをまずはしないと、僕のことを話せないです」

本當に魔法が使えるかどうかで魔王を倒す方法の是非が変わってくる。

まずは、俺の狀態確認だ。

そして、俺に魔力があれば全てを話す。

俺が何度もやり直していると言うことを。

「――仕方ないわね。し待っていなさい」

母親は寢室から出ていくと、すぐに戻ってきた。

その手には青銅製の魔法指南書が握られている。

「手を翳してみなさい」

「はい――」

俺は、魔法書に手を翳すが、まったく反応がない。

つまり、俺には魔力が無いと言うことになる。

ただ、腑に落ちないことがある。

どうして、らないかということだ。

本當に、何度もやり直しているなら、最初の一回目はるはずだ。

これは、検証する必要がある。

「お母さん、今はまだ言えないけど……言える時期になったら言うから――」

「分かったわ。私はアルスが話をしてくれるまで待つわね」

「ありがとうございます」

母親は、俺の言葉を否定せずにれてくれる。

本當に母親はすごいな。

毎日のように青銅の鍋で川から水を汲んできては、臺所の瓶の中にれていく。

それは一週目で、俺は行った行為であり、自分のためであり母親や父親から褒められた行為でもあった

一週間が過ぎた頃には父親が戻ってきた。

「アルス、ライラから聞いたぞ?」

川から水を汲んできて、臺所の瓶に水をれたところで帰ってきた父親が俺に話かけてきた。

「おかえりなさい」

「お前が家の仕事を手伝うようになったと、それよりも……お前、ずいぶんと雰囲気が変わったな?」

変わったか……。

たしかに変わったかも知れない。

「お父さん、僕は守りたい人が出來たんだ!」

「なるほど……、どうりで雰囲気が変わったと思った。それなら魔法を教えるのも良いかもしれないな」

父親は、臺所から居間へ上がっていくと書斎や寢室があるほうへと姿を消した。

そして、戻ってきたときには魔法指南書を手に持っていた。

「アルス。まずは、この魔力石に手をれてみなさい」

俺はをゴクリと鳴らす。

これで魔力石が何の反応も示さなかったら、大切なを守れなくなる。

そんなのは嫌だ。

俺は魔力石に手をれる。

すると、魔法指南書は強烈な白いを放つ。

そして、その白いしずつ収束していき天井を破壊し天を貫く一條のとなった。

「アルス。お前には魔法の才能が――」

「お父さん、とても大事なお話があります。」

俺は父親の言葉を途中で遮る。

ここからは相手を納得させるための話し合いだ。

俺の目をジッと見てくる父親であるアドリアンは小さく溜息をつく。

「分かった。どんな話だ?」

「その前に、お母さんをえて話しをしたいと思います」

「わかった」

俺の言葉に、父親は頷くと母親であるライラを呼ぶ。

すぐに居間には、俺と両親の3人が集まった。

今から言う事は、本當に言っていいのか分からない。

それでも、大切な人を守るためだ。

協力は必須になる。

フィーナも母親も、俺を信じるといってくれた。

だから、俺も誰かをまた信じよう。

重苦しくなる雰囲気の中、俺は口を開く。

「お父さん、お母さん。僕は、何度も死に戻りをしています」

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