《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》會議の方針(3)
「いいわ……それを貴方が知っているということは、私は本當にシューバッハ騎士爵領に行ったことがあるのね。それも、貴方に魔法を教えたことがある……」
「はい――、ご理解頂けて幸いです」
「本當に5歳ではないのね……」
アリサの言葉に俺は肩を竦めながら「いいえ。外見は5歳ですよ?」と反論する。
そんな俺を見ていた父親であるアドリアンは小さくため息をつくと、「アルス、魔法師団長殿に対して、何か思うところがあるのか?」と、俺に語りかけてきた。
さすがは俺の父親というか、し骨にアリサに対して八つ當たりのような口調で話をしてしまったからのいい人間なら察してしまっているのかも知れないな。
「アリサ殿、これは失禮を――」
俺は、自分の気持ちを押さえ込みながら、彼の名前を呼稱付けで言葉にする。
「いえ、こちらこそ――、疑ってしまってごめんなさいね」
「魔王は強大です。ですから味方であっても不確定要素はしでも消しておきたいと思う気持ちは理解できますから問題はありません」
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「……そう……、それで貴方は何度、時を繰り返しているのかしら? その口調振りと態度から10回や20回では効かないわよね?」
「どうでしょうか? 僕もそれほど覚えているわけでは無いのです」
「――と、言うと?」
「僕も時を繰り返していると自覚してから何度も魔王と対峙はしていますが、それが何回目までは覚えていないのです」
「……つまり、時を繰り返すときに記憶の劣化があるということかしら?」
「僕には何とも言えませんが、最近の數回までなら思い出すことは出來ます」
「でも、その話し方は?」
「わかりません、自然と言葉に出てくるのです」
俺の言葉にアリサが、「そう……大変だったのね」と、悲しそうな視線を俺に向けてきた。
まぁ実際のところの、俺がアリサからの質問に答えた容には、多くの噓が混じっている。
それは、何度か時を繰り返していると記憶に欠落がでるという部分。
これは、完全に記憶が持ち越しされているというのを知られると厄介になる。
未來に起きる事象を完全に把握していると知られたら危険視される可能だってありえる。
ただ、そう考えるとアルセス辺境伯に魔王の話をしたことは早計だったとも言えるが……、今更、それを言った所でどうにもならない。
どうせ失敗したところで時を繰返すだけなのだ。
特に問題はないだろう。
「そろそろ話を進めたいのだがよいか?」
「はい、アルセス様申し訳ありません」
「――よい、それではアルスよ。お前は何か作戦を考えているのだろう? お前に魔法を教えた者から聞いておるぞ?」
アルセス辺境伯は、俺をまっすぐに見ながら言葉を紡いでくる。
さて――。
まず魔王を倒すためにはアリサの力は必要不可欠だ。
彼の魔法の後に、俺が発させたと思われる流星の魔法。
その再現が必要になる。
魔法の発方法は分かる。
問題は、魔力の確保だ。
「魔王を倒すですが、まずはAプランとします。シューバッハ騎士爵領に2週間後に現れる中腹の魔王城に魔法師団長のアリサ殿に、ブラストボールの魔法を打ち込んでもらいます。次に、僕が発させる魔法で魔王を討伐する形を取ります」
「ふむ……なるほどな……」
アルセス辺境伯は、白い顎鬚を弄りながら一度だけ頷いてくると、「――して、Aプランということは、他にもプランがあるということか?」と、聞いてきた。
「はい。Aプランはあくまでも上手く事が運んで魔王を倒せた場合の作戦になります」
「つまり、倒せない可能もあるということか?」
アルセス辺境伯の言葉に俺は首肯する。
「そのとおりです。僕の魔法は、どうやら特殊らしく魔法力を魔法指南書で確認いたしましたが、魔力が無いと表示されました」
「つまり……、Aプランの前提條件が覆されたということになるわけが?」
「はい。……ですからBプランを用意しました」
「なるほどなるほど」
俺の言葉を聞いたアルセス辺境伯は、獲を狩るような目で俺を見てきた。
「アルベルト、お前の息子はずいぶんと策士のようだぞ? この私を子供の振りをしてまで見定めておった!」
アルセス辺境伯は、聲を出して楽しそうに笑う。
アリサもリンデールも、父親もアルセス辺境伯の様子になからず驚いているようにも見える。
「アルスとやら、お前は家督を注いで無いとは言えシューバッハ騎士爵領の跡取りだという自覚はあるか?」
「ありますが何か?」
「騎士爵が辺境伯を謀るとは……、同じ王國に屬している貴族だとしても、貴族としての位の差は絶対だということくらいは理解しておろう?」
「それが何か?」
俺の言葉に、アルセス辺境伯は俺を睨み付けてくる。
別に俺にとって、そんなのは怖くも何ともない。
どうせ、死ねば時間は巻き戻されるのだ。
だったら殺された所で、俺には痛くもくもない。
「勘違いしているようですが言っておきます。僕――いや、俺としては辺境伯ごとき、どうでもいいと考えている。そもそも魔王を討伐するのは俺の私怨であって、あんたらを守る為でも何でもない。ただ、魔王を倒せなければシューバッハ騎士爵領だけではなく、あんたの大事な領民が住む辺境伯領も滅びることになる。別に辺境伯領が滅びてもいいなら、俺の話を聞く必要は無いし、手伝って貰わなくていい。俺には同じ時を何度もやり直せるってチートがあるからな!」
「……くくくっ、ハハハハハハッ。愉快だ! これは愉快だ! アルベルト! お前の息子は、とんでもない人間だぞ?」
「申し訳ありません」
父親は、俺をチラッと見たあとアルセス辺境伯に謝意を示していたが……、それはアルセス辺境伯の「謝意など必要ない」と言う言葉で遮られた。
「アルベルトよ、お前の息子は自分の命と運命を天秤に掛けた上で、この私に意見をしてきたのだぞ? 謝意どころか、その気概、褒めるところであろう? アルスとやら、お前のプランBを教えてもらおうか?」
「畏まりました」
俺は、アルセス辺境伯の目を見ながら言葉を返した。
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