《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》會議の方針(7)

ただ、無理とは言えない。

必要な小麥の量を、青銅時代の人間がこなせるかと言えば……難しいだろう。

この世界の數學がどこまで進んでいるかわからない以上、安易に計算をされて小麥の量が足りないと困ってしまう。

それなら俺が計算したほうが確実だ。

「わかりました」

空間を可燃質が占める割合の量など大まかな概算でしか計算はできないが、足りなければ多く量を見積もればいいのだ。

今回は、家や建造を作る際の見積もりを作る場合とは違う。

だったら大目に計算すればいい。

幸いデータは揃っている。

魔王城の大きさは、何度も品を持ち出したことで細部まで覚えているし、先ほどの馬小屋からの大きさからも計算が可能だ。

一人で考察していると、アルセス辺境伯は椅子から立ち上がっていた。

「うむ、それはアルスよ、明日までに必要量を算出しておくように。アリサ、リンデールよ、お前たちは、シューバッハ騎士爵領までの遠征準備を軍に伝達しておくように」

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「はい!」

「かしこまりました」

アルセス辺境伯の命令に、二人は部屋から出ていこうとする。

俺は思わず「お待ちください!」と二人の退出を遮った。

「どうしたのだ?」

「差し出がましいことになると思いますが――」

「今更だろう? さっさと言え」

「はい。まずは、必要な小麥の量は、すぐに求めることができます」

「ほう? どういうことか聞こうか?」

アルセス辺境伯は、俺の言葉に興味を持ってくれたのか再度、椅子に下ろすとアリサやリンデールに視線を送ると、二人も椅子に座った。

「何か書くもの用意して頂けませんか?」

「ふむ――、ならばこれを使うがよい」

アルセス辺境伯が俺に手渡してきたのは石炭とパピルスのようなモノであった。

てっきり羊皮紙を渡されるものだとばかり思っていただけに驚く。

俺は渡されたパピルスに石炭で二つの絵――、つまり城と馬小屋を記していく。

「ほう? この絵がずいぶんと……前衛的ではあるが……コホン! 馬小屋か?」

「はい……絵の才能が無くてすいません……」

「よいよい、しは安心したくらいだ」

取り繕うようにアルセス辺境伯が俺の肩を軽く叩いてフォローしてくるが、そういうのは正直やめてほしい。

余計に傷つくから!

「ふむ。それで、その隣が馬の水やりに使う桶か?」

「いえ……、魔王城のつもりです」

「「「「……」」」」

俺の言葉に全員が無言になる。

とても居た堪れない雰囲気――。

「あ、あれだ!? シュ……シューバッハ騎士爵の息子! あれだ! 絵は描いていれば上手くなるものだ! 良かったら俺がパトロンをしている絵書きでも紹介するか?」

「いいえ……」

リンデールが、居心地の悪い雰囲気に耐えかねたのか俺のフォローをしてきた。

ほんとうに、そういう気遣いは要らないから!

くそっ! 城とか馬小屋とか文字で書いておけばよかった。

「ま、まぁ、たしかに城と言われれば城と見えなくもないな! そうであろう? アドリアンよ!」

「そ、そうだぞ? アルス! 今は下手でも練習すれば上手くなるはずだ! きっと……たぶん!」

「アルスくん大丈夫よ! どんなに絵が下手でも領主として領地を運営するには、あまり関係ないから!」

「もういいです……」

俺は大きく溜息をつく。

どうせ、自分の絵が下手だと言うのは分かっていた。

それでも部にっていた俺が! 近代の技法を知っていた俺の絵が青銅時代の文明の絵よりもだめだとは思わなかった。

正直に言おう。

ある程度は評価してもらえると思っていたと。

俺は描いた城と馬小屋の絵を黒く塗りつぶしたあと、四角い図形を2つ描く。

そのあと、四角い図形の中に『馬』と『城』と記した。

「アルセス辺境伯様……」

「辺境伯様」

「アルセス様……」

俺の行を見ていた父親と、リンデールとアリサの3人が含みのある視線でアルセス辺境伯の名前を呼んでいた。

アルセス辺境伯は、俺の肩に手を置いてくると「あれだ、まだ5歳だからな。大人になって経験を積めば、よい絵を描けるようになるはずだ!」とフォローしてきたが、それは俺にとって止めを刺す以外の何でもなかった。

――もう、一生! 絵は描かない!

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