《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》決戦への布石(7)

川辺まで行き、第1週目のときのように青銅で作られた鍋に川から水を汲むと家まで戻り空にしてある瓶の中へと水をれる。

午前中は、ひたすら川から水を汲んで自宅の臺所の瓶に水をれる作業に終始することになるが、それが魔力を回復させる唯一の方法だから仕方が無い。

1時間ほど作業を繰り返していると「アルスくん!」と俺の名前を呼ぶ聲が聞こえてきた。

その聲が誰だかはすぐに分かる。

何故なら――。

「――!? フィーナ? どうして……ここに……?」

いままで川沿いで會ったことなんて無かった。

なくとも、こちらからアクションを起こさない限り、フィーナの方から俺に會いにきたことはない。

まだ、お晝の時間までかなり時間がある。

日の日差しは頭上からではなく、斜めからってくる。

そのため、彼――フィーナがどんな表をしているのか伺い知ることが出來ない。

俺の問い掛けに彼は、自分の元に手を置いたあと顔を上げてくる。

――彼の表から俺は察する。

あの日……フィーナが謝罪の言葉を俺に投げかけてきた時に見せた表にそっくりであった。

フィーナの言いたいことは分かる。

は、俺に助けてもらったことによる謝意を示したいのだろう。

でも……それは同じであって――。

すでに彼からは返しきれない言葉をもらっている。

それは、俺を信じてくれるという言葉であり力。

――だけど、それは俺の中にあるだけのことであって。

の中では、俺に助けてもらった時の清算が終わってないと言う事は容易に想像がつく。

だからこそ、俺はフィーナが話始めるまで待つことにする。

「アルスくんに、話をしたいことがあって……」

「話をしたいこと?」

わざとらしく俺は、首を傾げながらフィーナに語りかける。

すると彼は「――う、うん……」と小さく呟くと元で組んでいた手を何度か差させた後、意を決したような表をして「――あ、あの! ご、ごめんなさい!」と、頭を下げて謝罪してきた。

その流れが、彼に初めて謝られた時の景と重なる。

「あの日、アルス君が狼から私のことを助けようとして魔法を使ってくれたのに……、私……魔法を使うのは魔王やその眷屬、それに魔って教えられていたから、あの時は怖くて、ありがとうって言葉を伝えられなかったから――」

「気にすることはない。當然のことをしたまでだ」

「――アルスくん? し変わった?」

「……」

の言葉に俺は無言になってしまう。

たしかに俺は、アルスの記憶や知識を多なりとも持つだけの日本人であり、生粋のこの世界の人間ではない。

だからこそ、アルスという年に好意を抱いている彼は、アルスという年が持つ雰囲気やけ答えが変わったことに違和を覚えたのだろう。

俺は彼の頭の上に手を置いて「しは領主としての自覚が出てきたからだと思う」と、心にも無い言葉を彼に投げかける。

するとフィーナが「そう、それなら言いのだけど……」と呟く聲が聞こえてきた。

「そういえば、レイリアの容態はどうなんだ?」

「どうって……、アルスくんに妹の話をしたことあった?」

「前に一回だけな……、が弱いって話をしていただろ?」

「……そ、そうかな? 容態は、あまり――」

「よくないのか!?」

フィーナは、俺の言葉に首肯してくる。

「――それなら、いまはアルセス辺境伯軍が居るから! 醫師も著いて來てきているから、その醫師に見せるのがいいな――」

「え? アルスくん……何を言って……」

フィーナの言葉に俺は「あっ!」と気がつく。

そういえば、アルセス辺境伯軍は村からし離れた場所に陣地を構築しているから村人には気付かれていないということに。

ただ、2000人のもの人間が活していて気がつかないというのもおかしいと思ったが、今は、それは別にいいだろう。

重要なのはフィーナにしでも恩返しできることだ。

たとえ、今のフィーナが俺の知っている彼ではなかったとしても――。

「それじゃ、フィーナ。しだけ待っていてくれ」

「う、うん……?」

は俺が水汲みをしている様子をジッと見つめていた。

水汲みがお晝し前に終わったところで俺はフィーナを連れてアルセス辺境伯の陣地へと向かった。

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