《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》記憶の対価(1)

それにしても、フィーナの妹であるレイリアと會うのは、異世界に転生してきてから2回目だ。

初めて出會った時には、彼を救うことは出來なかった。

フィーナの嬉しそうな表を見る限り、寢たきりの妹が助かるのは本當らしい。

アルセス辺境伯が手配した醫者が、わざわざ噓をつく理由もないからな……。

に手を引っ張られながら、しずつ俺は山の方へと歩いていく。

「フィーナ」

俺は、試しに彼の名前を呼んだが、フィーナは無言で俺の手を引っ張ったまま、彼の家とは違う方向へと歩いていく。

の様子に俺は困する。

妹に合わせると言っていたのに、自分の家とは違う方向へ歩いていく理由が俺には分からない。

正直、何と聲を掛けていいのか分からないが――。

俺は、フィーナの真意を確かめるために山にる前に立ち止まる。

すると彼は、前を向いていた表を俺に向けてきた。

その瞳のには、不安そうな揺らめきが見える。

「どうしたの? どうして立ち止まるの?」

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の言葉に俺は心の中で考える。

どうして彼は山の方へ進もうとしているのか――。

――しかも、アルセス辺境伯軍が陣地を敷いている方角とは別方向。

商業國メイビスの方角。

カタート山脈へと続く森に行こうとしているのか……、俺には理解が出來ない。

「フィーナ、お前の家とは反対方向だと思うんだが?」

「……ねえ――、アルス君は、この森を覚えている?」

「――何を言って……」

俺はカタート山脈へと続く森を一目見たあと、すぐにフィーナへと視線を戻す。

すると、彼は泣きそうな顔を浮かべながら「あなたは、一誰なの?」と問いかけてきた。

「俺か? 俺はアルスだが――」

俺の言葉にフィーナが首を左右に振りながら「アルス君は、そんな言葉遣いはしない」と、瞳から涙を零しながら言葉を紡いでくる。

「何を言っているんだ? 俺はアルスで――」

「私は――、……アルス君には妹が居るってことは教えてない――」

の言葉に、無表を貫いていた俺は思わず「――え?」と、驚く。

――おかしい。

最初に出會った時には、俺はフィーナに妹が居ると知っていて……、知っていて?

アルスの記憶には、フィーナのデータは無かった。

それはつまり、フィーナの関係者である妹の記憶や知識も俺は持ち合わせていないということになる。

なのに……、俺はフィーナに妹が居たと彼に問いかけてきた。

それに対して、フィーナは何て……答えた?

……彼は俺の言葉を肯定した。

ただ、それは――。

いや、良く思い出せ……。

アレクサンダーから、俺は村の報を得ていたはずだ。

その中にはフィーナの報も直前までは無かった……。

「いや、アレクサンダーから聞いたんだ……」

俺の言葉に彼は首を振る。

「アルス君、村に一度も來ていないよね? アレクから何時、話を聞いたの?」

「何時って――、それは……」

俺は言い淀む。

を納得させられるピースはある。

あるが、それを口にしていいのか……、俺には分からないのだ。

俺が何も答えないことで、気まずい刻が流れる。

するとフィーナが、「狼に私達が襲われる前に聞いたの?」と、言葉を紡いできた。

俺が、転生後に得た報。

その中で、もっとも確実が高く彼を納得させられる

それこそが――、彼が今、俺に向けて呟いてきた言葉であった。

「ああ、そうだが――」

俺は、助け舟とばかりに首肯する。

「…………噓つき――。ここは……、アルス君が私を助けてくれた場所だから! ここは、アルス君が家から出なくなった場所だよ? どうして、そんな平気な顔をしていられるの? ねえ? 貴方は誰なの? 本のアルス君は、どこにいるの?」

は、悲痛な聲で俺に問いかけてきたが、その問いかけに答える答えを俺は持ち合わせていなかった。

何故なら、俺にはアルスの記憶は統合されてはいたが、それは不完全なだったから。

俺が何を言っても、真実を知らない以上、俺が言う言葉は全て予測からくる妄想や噓になってしまうからだ。

それに――、俺を肯定してくれた彼から、このような言葉を突きつけられるなんて思いも寄らなかった。

「すまない」

だから、俺は謝罪の言葉を告げてその場を後にすることしか出來なかった。

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