《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》記憶の対価(7)

「お母さん!」

はやる気持ちを抑えきれず自宅へ戻った俺は、橫開きの扉を開けながら自分の母親を――、家の中を探していく。

「――いない……、一……、どこに?」

シューバッハ騎士爵邸と言っても部屋が3部屋と臺所くらいしかない家では、大人が隠れられるような場所は無い。

それに洗濯を干している場所にも母親は居なかった。

今までの巻き戻りで、母親が家に居ないという場面は無い。

「……どういうことだ?」

俺は、今までの得てきた報から、何が起きているのか考え込む。

そもそも、フィーナの妹のレイリアの容態が悪いと……、俺は何故知っていた?

それに……、レイリアの言葉が真実であるなら、俺が母親に召還されたという事実が本當なら……。

「――何故、その時の記憶が無い?」

そもそも、俺が召還されたというのが本當で――、時戻りが発生していたと言うなら、それは何時から? という問題に直面する。

……そもそも、アルスという人間は本當に存在したのか?

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「――くそっ!」

俺は、外から臺所を隔てている木の扉を叩きながら、混する思考を纏めようと考え込む。

「そういえば……、人間だけではなく生が、その種族や文化特有の言葉を理解して言葉として扱うためには膨大な反復學習が必要だと聞いたことがあるな……」

自分に言い聞かせるように俺は現狀をまず確認する。

今分かっていることは、5歳のアルスが殆どの記憶を持ち合わせていなかったことだけだ。

「記憶を覚えていないだけ?」

そこまで考えたところで、俺はハッとする。

「――いや、待てよ……」

たしか、俺が大學で習った容では記憶には幾つかの分類がされていたはずだ。

――一つは【意味記憶】

言葉の意味などの知識や、文字などを司る部分。

――もう一つは【エピソード記憶】

が実際験した思い出などを司る部分。

――そして最後は【手続き記憶】

、つまりかしてが覚えた記憶だ。

「もし――、記憶を忘れているのが本當ならエピソード記憶を忘れていることになるな……」

ただ、そこに確証は無いし証拠もない。

ただ、噓だと斷定する材料もない。

「……巻き戻りは、記憶の保持に影響するのか? ――いや、そんな安直に答え導きだすものではないが……」

だが一つだけハッキリしているのは、母親であるライラが鍵を握っているということだ。

一人で考えていても拉致があかない。

とりあえずは、母親が居そうな場所を探すのが先決だろう。

問題は、どこにいるかだが……。

――ハルス村の中を1時間ほど探したが居るのはジャイガルドや、アレクサンダーや、その他大勢の村人くらいで……。

「駄目だ、母親の足取りが分からない」

自分で思っていたより、自分の母親のことが分かっていなかった。

そもそも、俺を召還したのが母親なら、俺は母親の実の息子でもないという事になるし、父親とは縁関係は無いということにも繋がる。

「――はぁ……」

何時ものように川原の大巖の上に座りながら溜息をつく。

もうすでに日は暮れかけている。

村から戻ってきた時に、家を一回見てきたが母親は戻ってきていなかった。

つまり、晝から夕方まで母親は出かけているということになる。

「いつもは、そんなことないのに……」

「アールース! そんなところで何をしているの?」

「お母さん!?」

振り返ると、そこには母親が居て大巖をよじ登ってきた。

「どうかしたの? ジャイガルドくんからアルスが私を探しているって聞いたから、急いで戻ってきたのよ?」

「ジャイガルドから?」

「そうよ? 何かあったの?」

「お母さんは、晝間からどこに行って――」

「ほら! 一応、私はシューバッハ騎士爵家の令嬢だったわけでしょう? 地理にもある程度は明るいから魔法師団長のアリサさんからの依頼で、地形図っていうの? その作の手伝いをしていたのよね」

「……そうですか」

「どうかしたの? 他人みたいな話し方をして何かあったのかしら?」

母親は心配そうな表で俺を見てくると、近づいてきて抱きしめてきた。

「もう寒いから、そろそろ帰りましょう」

「あの……、お母さん。一つ聞きたいことがあるんですが……」

「何かしら?」

「今日、知り合いから聞いたんですが――、異世界という言葉を知っていますか?」

あまりにド直球だと、警戒されると思ったが転生や召還と言った言葉よりはマシだと思い口にした。

母親は首を傾げると「知っているわよ?」と、答えてくる。

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