レイリアの家まで、彼を抱きかかえて走ること數分――。

「アルスさん！？」

彼の家が見えてきたところで、俺の姿に気がついたレイリアやフィーナの母親が、俺の名前を呼んで小走りに近寄ってきた。

「あ、あの――」

「どうして、アルスさんが娘と一緒に？」

俺が抱きかかえているレイリアを見るなり表を青くする。

彼は、脇目も振らずにレイリアをけ取ると家の中にっていった。

そんな彼の――、レイリアの母親を見ながら俺は小さく溜息をつく。

レイリアやフィーナの母親の名前を俺は知らなかった。

そのために俺は口を閉じてしまっていた。

「大丈夫だろうか？」

冷靜に考えると俺のためにフィーナは病気のを押してまで川原まで來てくれたのだ。

そう思うとレイリアの容態が気がかりになる。

フィーナには、俺は嫌われているし彼の家にはり難い。

それでも……。

「はぁはぁはぁ……。ど……、どうして！　アルス君が――、ううん。貴方がここにいるの！？」

思考していると、俺の肩に手を置いて引っ張りながら、フィーナが俺に語りかけてきた。

「い、いや――」

心構えが出來てなかった。

――と、いうより彼から俺に話かけてくるなんて予想していなかった。

おかげで言葉が詰まってしまう。

何を伝えればいいのか迷っていたところで息を切らせていたフィーナが呼吸を整えると「貴方に聞いても仕方ないと思うけど……」と、口を開いた。

どうやら俺とは口を利きたくないらしい。

それでも、フィーナの揺れる瞳を見ていて俺は。

「レイリアなら、川原で倒れていたのを見つけて運んできた所だ」

「妹と會ったの！？　妹は無事なの？　ねえ！？」

「分からない。すぐに醫者を呼んだ方がいいと思うが――」

俺の話を半分も聞かずに、フィーナは家の中へとっていってしまう。

「彼の必死な表を見たのは、これで何度目……。何度目？」

一人呟きながら、自問自答した瞬間。

俺は、自分が最初に目を覚ましたシューバッハ騎士爵邸の寢室に立っていた。

寢室には、死んだように寢ている俺の姿が見える。

そして、その傍らにはフィーナが俺の手を握って涙を流しながら必死に何かをんでいた。

さらに、その場には鎧をいだばかりのアルセス辺境伯やアリサも居た。

二人とも悲痛な表をして俺を見下ろしているのが見える。

しばらく見ていると、アリサが両膝から泣き崩れるのが見えた。

「――ここは、一……？」

周囲を見渡す。

そこで気がつく。

誰も俺には気がついていないのだ。

さらに、きを見ることは出來るのに音が聞こえない。

自分の聲だけが空しく響き渡るだけで……。

俺は、寢室から出る。

廊下を歩いていると明かりが見え、俺は居間の方へと向かう。

居間には母親と父親が居て、母親が泣いている姿が見えた。

父親は、泣いている母親を悲しい眼差しで見ているだけ。

何が起きているのか確認するために、居間に続く戸を開けようとしたところで、頭に鈍痛をじる。

思わず俺は額に手を當てていた。

しばらくすると、痛みが引いていく。

「何がどうなっているんだ……」

ゆっくりと瞼を開けて周囲を見渡す。

「ここは……」

気がつけば、さっきまでフィーナと話をしていた場所に俺は立っていた。

――まるで白晝夢のようにすらじられる。

それにしては、さっき見た景は……現実がありすぎたじがした。

「そうだ。とりあえず……」

フィーナが、アルセス辺境伯の軍陣地まで行かないのなら俺が醫者を連れてきたほうがいいだろう。

それに、に魔力が巡っているのをじることから、どうやら強化の魔法は持続しているらしいし。

俺は、走ってアルセス辺境伯の元へと向かう。

アルセス辺境伯軍の陣地に到著するし前には、強化の魔法が切れてしまい、魔法の反からなのか到著した頃には、ふらふらになっていた。

それでも、巡回していた兵士にアルセス辺境伯への伝言を託すことはできたが、俺は意識を失って倒れたらしい。

――らしいというのは、目を覚ましたのは次の日の晝で、母親から事の顛末を聞いたからだ。

母親からは休むように言われたが魔力を使ってしまったからまた補充しないといけないと母親を説得したあと、水汲みをするために川原へいく。

すると、そこにはフィーナが待ち構えていた。