《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》記憶の対価(10)

「フィーナ」

「アルスくん……」

の名前が、無意識に口から零れ落ちていた。

そして――。

そんな俺の言葉と同時に、フィーナも俺の名前を――、アルスの言葉を紡いでいた。

「……ど、どうして……ここに?」

昨日、あれだけのことがあったというのに――。

どうして、フィーナがここにいるのか俺には理解できなかった。

それと同時に、とても気まずい心持が自分の中に広がる。

「ごめんなさい!」

どう対応したら分からなくなっていたところで彼は、突然、頭を下げてきた。

「――え!?」

「私……、アルス君が、私の知らない誰かになってしまったみたいで怖くて……、それで! 貴方を試すような真似をしてしまったの!」

「……そうか」

たしかに、転生してきた俺と元いたアルスでは格も行もまったく違ったはずだ。

それなら、別人になったと思われても仕方ない。

そして隣人が……、昔から知っている人がまったく知らない人になったのなら怖いだろう。

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「――で、でも!」

は、瞳に涙を溜めながら俺をまっすぐに見つめてくる。

「アルスくんは何も変わっていなかった!」

「……」

の言葉に、俺は無言で返す。

何も変わってなかったというのは、さすがに言いすぎだ。

元々5歳児のアルスと40歳を超えた大人では思考も行もまったく別になる。

「それに……、アルスくんは妹を助けるためにアルセス辺境伯さまのところに行ってくれたから!」

の言葉に、俺は「なるほど」と得心を得る。

つまり俺が起こした行が彼の信頼を勝ち取ったということなのだろう。

――だが、それは偶然の産に過ぎない。

結局、彼を騙していることに変わりはない。

「フィーナ。君に伝えておきたいことがある」

「――え?」

本當は、最初から彼には言っておくべきことだったかもしれない。

でも、俺は自分がどう思われるか怖かった。

唯一、俺を肯定してくれた人だったから。

だけど……、それは結局のところ、すれ違いという形で互いの距離を作り誤解を招いただけだ。

「俺は、君とは何度も出會っている」

「それって、え? 私とアルスくんはいつも會っているよね?」

フィーナは首を傾げながら俺の言葉に答えてくる。

そんな彼の仕草を見ながら俺は首を左右に振りながら「そうじゃないんだ」と、言葉を紡ぐ。

「俺は、何度も同じ時間をやり直している」

「同じ時間を?」

「そうだ。だから、君の妹が病気だったことも知っていた。それはフィーナ、君自に教えてもらったから」

「な……、何を言っているのか分からないよ?」

「だよな……」

俺も自分自が、同じ時間を繰り返していなければ、とてもじゃないけど理解できない容だ。

それでも、それが真実であることに変わりはない。

「いいか、フィーナ。よく聞いてくれ」

俺は、戸いの表を浮かべているフィーナを見ながら彼に語りかけることにする。

自分自が、本當のアルスではないこと。

そして、俺は異世界の人間であること。

この地には魔王が存在していて、人に仇なす存在であるということ。

そして、俺が何度も同じ時間を繰り返していたことも告げた。

その繰り返す條件が、そのトリガーが自分自の死だということも。

「……アルスくんが、異世界人なのは知っていたけど……、え? それって――」

「俺が異世界人だという事を知っていた? いつから?」

「え? だって、アルスくん……、小さい頃から私たちに勉強を教えてくれたよね? ここの川原で……、何も覚えてないの?」

「俺が……?」

フィーナは、驚いた表で俺に問いかけてきた。

でも、俺には……、そんな記憶が一切ない。

「それって、俺が狼に襲われる前からなのか?」

「そうだよ! アルスくんが、ライラさんに連れられて村に來たときが2歳くらいだったから――」

そこでフィーナは一度、口を閉じると思案顔したあと。

「ライラさんが、私のお母さんや、ジャイガルドのお父さんと話をしているときにね、アルスくんは、私やジャイガルドくんにアレクサンダーくんと話をしたことがあるの。そのときにね! 私たちを見たあと村を隅々まで確認して言った言葉が「衛生面には問題があるな」だよ! それに……」

「それに?」

「契約と違うって、アルスくん呟いていたの」

「――ッ!?」

――、フィーナの言葉に俺は息を呑んだ。

――つまり……だ。

フィーナが言っていることが本當なら、俺は何かしらの契約を結んでこの世界に転生してきたことになる。

、何を俺は契約して來た?

「アルスくん、大丈夫?」

「――ああ、大丈夫だ」

俺は、ふらつくを支えるように大巖に背中を預けた。

「フィーナ、すまなかった……」

「ううん、アルスくんはアルスくんだって分かったから……」

は、俺がアルス自だと理解したのか笑顔を向けてきたが、俺はそれどころじゃなかった。

俺は、5歳以前の記憶を失っていたのだから。

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