「――それは……」

俺の父親であるアドリアンが、口を閉じる。

何を言おうとしたのか分からないが、表を強張らせているあたり思うところがあるのだろう。

「ふむ……。たしかに、アルスの言いたいことも分かる。私も考えていなかったわけではない」

アルセス辺境伯も、どうやら俺と同じ考えを持っていたようだ。

そもそも、転生してきた領地に魔王が居ること自、不自然でならないのだ。

仮に100歩譲ったとしても……だ。

今度は、俺にそれを打破するように手札を殘しているのも気になる。

何せ、何度も同じ時を繰り返すことが出來るということは、強者に対して何度も対応策を練って対応できるということに他ならない。

それは、まるで魔王討伐をする勇者――、ゲームそのものではないか？　と、すら思ってしまう。

「はい。それで僕は、いくつ考えたことがあるのですが――」

「何か妙案でも？」

「はい。現在の僕の魔力はおそらく魔王を倒すためには足りないと思います」

「ふむ」

「それと、僕にはどうしても魔王城の門に書かれている名前が気になるのです。そのために一度、魔王城の中を探索したいと考えて――「だめだ！」――え？」

途中まで話たところで父親が反対してきた。

「いいか？　アルス。良く聞きなさい。すでに魔王城の周辺には、お前が考案した攻城兵であるカタパルトが何十も向けられているんだ」

「ですから攻撃が始まる前に！」

「だからだ！　魔王城が現れた正確な時間までお前は分かっていないんだろう？」

「そうですが……」

「アルセス辺境伯は軍儀で、魔王城が出現したと同時にカタパルトからの攻撃を実行に移すようにと命令を下している。出現日が近づいている中、そんな危険な場所に息子を行かせるわけにはいかない！」

「……」

俺は無言で父親を見つめる。

父親から、これほど反対意見を言われるとは思っても見なかった。

それでも、俺にはどうしても確認しておきたいことがある。

倒す者は魔王ではあるが、魔王は魔法を使うことが出來るのだ。

そして、俺に契約と言ってきた。

そのと魔王には、何かしらの関わり合いがあるように思えてならない。

……それにどうしても知りたい報。

それは、俺の期の記憶が欠損している部分。

おそらく、転生してきてからの一連の事件の裏には、俺の欠損した期の記憶が深く関わっているような気がしてならない。

それを俺は調べておかないと、どうしてもマズい気がするのだ。

「お父さん、僕はどうしても調べておきたいことがあるんです。それは、どうして僕には特殊な力があるのか？　と、言う點です。將來、もし！　僕がシューバッハ騎士爵領の領地を統治することになったとします。その時に、僕の持つ特殊な力が、どんな自を引き起こすのか分からないというのは、領主をする上で問題になると思うのです。ですから、そういう憂慮する事態をしでも避けるために魔王城を調べておきたいのです」

俺の言葉に、父親は眉間に皺を寄せて俺を見つめてくる。

「なるほど。アドリアン、お主の息子は立派に將來を見據えているようだがどうするのだ？」

「辺境白様。私は息子を危険な場所へ一人向かわせるのは反対です」

「ふむ……。それなら――、魔法師団長のアリサを連れていくのはどうだ？」

「魔法師団長殿をですか？」

「そうだ。エルフには森で生きていく上で木々と同調するための魔法が存在すると聞く。アリサは、ハーフエルフではあるが使うことが出來よう」

「……」

父親は無言になってしまう。

「アルセス辺境伯様。同調の魔法とは？」

俺は、そんな魔法を聞いたことがない。

そもそも、俺はアリサには魔法を教わったのは攻撃魔法くらいなものだが……。

「同調の魔法というのは、森に上に住居を作る質のエルフ達が木々にストレスを與えないようにと、木々の波長に自分達の波長を合わせる魔法のことだ。私も、詳しくはないが、それを使えば……。おそらく、アルス。お前と同じ存在となり城にることも可能になるであろう」

「――なるほど……」

俺はアルセス辺境伯の言葉に頷く。

たしかに同じ存在になれば、俺と……。

ああ、そういうことか。

だから、アリサを魔王城に案したときに、俺にアリサが話かけてきて魔王城に一緒にろうとした素振りを見せたのか。

ただの好奇心だと思っていたが、まさか――、そんな意図があるとは思っても見なかった。

正直、一度裏切った相手と一緒に魔王城に行くのは納得がいかない部分でもあるが、ここは大人になろう。

「お父さん、魔法師団長アリサ殿と一緒にいきます。ですから！」

「――だ、だが……」

どうやら折れてはくれそうにない。

なら――、切り札を使うしかないな。

「僕は自分のことを知りたいのです。もし反対されるようなら！　魔王が倒されても僕はシューバッハ領地を継ぎません！」

「なんだと……！？」

「ですから、魔王城に行く許可をください」

「……わかった。ライラには……、私から説明しておこう。ライラは絶対に反対するだろうからな」

父親であるアドリアンが大きな溜息と共に納得してくれた。