《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》記憶の対価(17)

「時が停止している?」

無意識のうちに反応した俺の獨り言にアリサが頷いてみせる。

「ええ、城の中は時が停止しているようね。でも、これだけ巨大な建造に対して時間に干渉するほどの魔法を掛けるなんて信じられないわ」

は、俺達に説明しながらも鋭い視線で城壁上から見える城の中庭などを注視していた。

「アリサさん。このまま、ここで話をしていても時間を浪費するばかりですから城にりましょう」

「待って!」

城壁から降りる唯一のルートである尖塔へ向かって歩き出そうとすると、アリサに手を摑まれた。

「どうかしたんですか?」

「アルス君。このままだと、アルス君は良いかも知れないけど、私達はきが取れなくなるわ」

の言葉に俺は首を傾げる。

「それは、どういう意味でしょうか?」

「さっき、アルス君に言ったわよね? 時が停止しているって」

「はい。聞きましたけど、それが何か?」

「今は、アルス君が傍にいるからいいけど、離れたら私やフィーナちゃんは一瞬で停止している時に呑み込まれるわ。まずは、同期をしましょう」

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「――そういえば……。でも、すでに霊魔法は発していたのでは?」

「発はしていていたけど、それは表面上に過ぎないの。でも、これは予想外。まさか……、時を止める魔法まであるなんて思わなかったから――」

「そうですか……」

「だから一言斷っておきたいの。かなり深い位置でアルス君と同期をしないといけないから……」

「同期をしないと、まともに活できないんですよね?」

「ええ」

「それなら、斷る理由はないです」

俺の言葉にアリサは、「分かったわ」と、答えてくる。

「アルス君、フィーナちゃん。私のれてもらってもいいかしら?」

の言葉に俺とフィーナは頷き、彼が差し出した手の上に自の手を重ねる。

アリサは、俺とフィーナが手を重ねたのを見てから詠唱を開始し、魔法を完させた。

「「「――ッ!」」」

魔法が発したと同時に、俺は強い立ち眩みを覚える。

それと同時に、いくつかの記憶が流れ込んできた。

それは、俺がフィーナを狼から助けた場面であり、アリサが酒場で毎日のように飲み明かしている景であったりした。

「――もしかして……」

立ち眩みが納まったところで俺は二人へ視線を向ける。

「アリサさん! この魔法は、相手の記憶を見ることが出來るんですか?」

「出來るけど……」

の答えに俺は心、舌打ちをする。

想定外だ。

「――でも。フィーナちゃんの記憶は一瞬だけ流れてきたけど、アルス君の記憶は流れて來なかったわね」

「――え?」

「フィーナちゃんはどうかしら?」

アリサの問いかけに、フィーナも頭を左右に振って「アリサさんの記憶は、流れてきましたけど……」と、俺の方へ視線を向けながらアリサの問いかけにフィーナが答えた。

「それにしても……、やっぱりアルス君は特別なのかもしれないわね」

「――え?」

「だって、普通は同期すればなからず記憶が流れてくるのに、アルスくんはまったく記憶が流れて來なかったから……。植と同期しても記憶が流れてくるのに――」

の言葉に俺の心臓の鼓が跳ね上がる。

アリサの言い様は、まるで俺が彼たちとは――。

――否。

俺の存在そのものが、この世界とは異なるということを提示しているように聞こえてきた。

――魔王城にってから1時間近く経過。

「フィーナちゃん。その剣と槍は、アイテムボックスに仕舞って大丈夫よ」

「は、はい!」

現在、俺達は魔王城の寶庫とも呼ばれる場所に居る。

ちなみに、アリサが時間停止の魔法に影響が出ないようにアイテムを味してから、フィーナがアイテムボックスにれているため、俺がすることは、まったくと言っていいほど何もない。

「はぁ……」

俺は小さく溜息をつきながら城の寶庫の壁に背中を預ける。

何もしなくても良いと言うのは楽かもしれないが、それはそれで張りがないというか何というか……。

手持ち無沙汰な俺は、二人の作業見ながら床に座り込む。

やることがないなら仕方がない。

しばらく休憩するとしよう。

重を背中に預けたところで、背中を預けていた壁が音を立てて崩れた。

「アルス君。大丈夫?」

「アルスくん!?」

二人が倒れた俺の方へ駆け寄ってくると心配そうな表で語りかけてきた。

「はい。大丈……ぶ?」

何か――。

そう、何か自分の手が摑んでいた。

「これは――」

「見たことが無い文字ね」

「うん」

アリサも、フィーナも俺が手に持っているの表面に書かれていた文字を見て首を傾げていた。

――ただ……、俺にだけは、その文字を読むことが出來た。

それは、分厚い本であり。

「異世界アガルタについて?」

本の表紙の文字は日本語で書かれていた。

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