《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》記憶の対価(23)第三者side

フィーナは、アリサの視線が自分の持っている本に向いているのを見て続きを読むべく口を開く。

「クレベルト王家は代々、治癒魔法を得意とする家系でした。諸外國の中でも治癒魔法を持つ者は居ませんでした。その理由は分かりませんが、父王は、その力を外に利用したのです。そして、治癒の魔法は使うほど自信のを蝕む魔法でもありました」

本を朗読していたフィーナを見ながら「なるほどな……」と、アルセス辺境伯は呟くとアリサの方を見る。

「治癒の魔法――、回復の魔法については、いまでは普通に魔法を使えるならば誰でも使えるものであったな?」

「はい。ですが1000年前の……、アガルタの世界では回復の魔法というのは珍しかったのでしょう。おそらく質に由來するものかと推察できますが……」

「ほう」

「おそらく使用者の生命力を他者に渡すことで人が本來持つ治癒の力を増幅していたのではないかと」

「だから、自を蝕むと書かれているのか」

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「はい。ですが……」

「そうであるな。自らの妻子を外の道に使うなど……、どれほどの愚行であるか……。だが、それが國の長となると難しいところであるな」

「……」

アルセス辺境伯の言葉に全員が無言になる。

國の外というのは綺麗事では済まないからだ。

有利に外を展開できるならば、妻子であっても利用するというのは為政者から見れば、自國の國民を利用しないだけ、國民から見れば英雄的行に見えるのかも知れない。

當事者から見れば地獄以外の何でもないが……。

「――それでも、私はアルスを道だなんて思っていません。それに道にさせるつもりもありません」

アリサとアルセス辺境伯が話している仲、誰もが無言になったところで凜とした聲がその場に響く。

それは、フィーナの言葉で。

「分かっている。おそらくこれを書いたシャルロット・ド・クレベルトという人もそれを見越して最初に自らの一族の恥を綴ったのであろう」

「――え?」

「よく考えてみれば分かる。後世に向けて一族の恥を他人に見せるなど普通はありえぬ。必ず化するものであるが……、それを本に書かれている文章は表現していない。そこから、シャルロットという人が何を思って書いたのかが見て取れるというものだ。そうであるな? アドリアン」

「はい」

アルセス辺境伯の言葉に小さくだが、ハッキリとした聲でシューバッハ騎士爵アドリアンは頷く。

それと同時に――。

「そうでした。私は、息子を……、アルスを息子ではなく別の人間として見ていました。転生して一番心細く思っているのは息子のアルスだったのに……」

「仕方あるまい。かの者は我々が持つ知識を遙かに凌駕するほどの技を知っておるのだ。だからこそ、人として――、そして親として子供にどう接していくのかを考える必要があるのではないだろうか」

「問題は、アドリアン騎士爵殿の意識の問題ですな」

アルセス辺境伯軍の全軍を指揮する立場であるリンデールは腕を組みながら、シューバッハ騎士爵アドリアンへと視線を向けるが、話を振られたアドリアンは苦笑いをすることしかできていない。

まだ気持ちの整理がついていないからという理由もあるからだが……。

「ところで、ライラはどうなのだ?」

「妻ですか?」

アルセス辺境伯は靜まり返った空気を換えようと話題を変えるために話を切り出す。

「ライラは、ずっとアルスを息子として可がっていますが……」

「ふむ……。それなら、それでよいな」

アドリアンの答えにホッとしたような表を見せたアルセス辺境伯。

そんな彼の様子を見ていて、アリサは思案するような表を見せる。

「続きを読んでくれ」

「はい」

アルセス辺境伯ではなくリンデールに促されたフィーナは文字へと視線を落とす。

「ただし、異世界から転生してきた私には……、を蝕む特のある治癒の魔法は何ら害の無いものでした。それは異世界から來た人間特有の力が働いたからでした。私のには常人を遙かに超える強大な魔力が包されていたからです。それにより治癒の魔法を使ってもを蝕まれることがありませんでした」

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