《Re:現代知識チートの領地運営~辺境騎士爵の子供に転生しました~》記憶の対価(29)

心配そうな表で見上げてくるフィーナ。

そんな彼の顔を見て、魔王がフィーナを殺した場面が脳裏に駆け巡る。

あの時の魔王の強さは目に止まらないほど圧倒的で――、そして絶をこれでもかと思い知らされた。

――だから、安易に大丈夫だ! と、言う言葉を使うことは躊躇(ためら)われた。

「大丈夫だ」

俺は、フィーナに握られている手とは別の手で彼の頭をでる。

の――、らかく繊細な髪が、指先の間を流れていくのを心地よくじながらも――、俺はどんな手段を使ってでもフィーナを助けると心の中で誓う。

それが、俺が彼に出來る唯一の贖罪なのだから。

フィーナと河原から村に戻ったあと、すぐに父親であるアドリアンが家に戻ってきた。

「お父さん?」

「あなた、どうかしたの?」

息を切らせている父親に、母親は首を傾げるが――。

俺は、何となく事を察してしまう。

「アルス、すぐにアルセス辺境伯の所まで來るんだ」

「あなた!」

朝食を食べていた俺を庇うかのように母親が父親と俺の間に割ってってきた。

「……そうか、飯でも食べないとな――」

本當は、すぐにでも俺を連れて行きたいのだろう。

ただ、アリサと別れて家の前までフィーナと戻ってきたところで何かを察したのか母親はやたらと俺からは離れたがらないのだ。

父親の言葉に、母親であるライラも父親の分の食事の用意をしてテーブルの上に並べていく。

そして、俺の隣に座った父親は俺を見てくると深くため息をついていた。

食事を終えたあと、名殘惜しそうに母親は俺を抱き寄せてくる。

「アルス、無理をしたらダメよ。絶対に、ダメだからね」

「分かっています」

「ライラ、そろそろいいか?」

「ええ……」

ようやく母親の腕から離された俺は、父親と共に川を渡りアルセス辺境伯が待つ駐屯地 ――天幕へと向かう。

「アルス、魔法王ラルググラストの話は聞いた。どうして、早めに相談しなかった?」

「忘れていた」

父親であるアドリアンの足が一瞬止まったあと、頭をゲンコツで叩かれた。

「とりあえずだ。アルセス辺境伯には、何か言い訳を考えておけよ。今みたいに國が傾きかけない事を忘れていたと言ってみろ。首が飛ぶぞ」

「親父、それは大丈夫だと思う」

「そうだな……。まったく――」

深い溜息をついたあと、歩き始める父親のあとを俺は付いていく。

正直、魔王と魔法王を倒したあと――、俺はどうすればいいのか分からない。

ただ、フィーナが生きてくれればいいと思う。

それに――。

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