《異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します》、そして破裂

「はぁ...はぁ...」

あれから數十分は走り続けているがまだまだ何も見えてこない。一応こっちの世界に來てからは、獣人族のサナたちよりは劣るにせよかなり足は速くなっている。

確かニーナがこの國の地図を船員から借りて來てくれたやつだと、さっきまで俺たちがいたところは港ではあるが、基本的には國民が住んでいるエリア。

基本的と言ったのはその近くに鉱山があり、國民はそこで収を得ているそうだ。ただその國民の半數以上が奴隷らしく、そこで奴隷たちは過労で倒れるほど働かされているそうだ。

話を戻して、その港エリアからかなり離れたところにさらに國民のエリアがある。ただそこの國民たちは商人などもいることから上民(じょうみん)とも呼ばれているそうだ。ちなみに港の國民は下民(げみん)と呼ばれている。そしてその上民エリアをさらに超えたところに貴族などの家が建ち並んでいて、その奧が王宮となっていた。

だから今俺が走っている道は上民エリアまで行くための道になる。

「そてにしてもこの道、はぁ、はぁ、どんだけあるんだ?はぁ...」

走り出してからすでに2キロくらいは走っているが本當に何も見えて來ない。しかも今は坂を上っているので余計に辛い。

「待ってろよ、はぁ、ユキナ...」

______________

「はぁ、はぁ、はぁ....つ、疲れた...」

あれから長い坂を上り切ってしばらく走るとようやく建が見え始めたの安心したが、それも一時のことだった。

數メートル先には幅100メートルはある運河があった。「そういえばこれも地図にあったな」などと思いながら吊り橋を探し、渡ろうしたところで板が抜けた。何とか縄を摑み、必死に橋の上へと戻った。

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高さはざっと60メートルくらい。流れもかなり早いので落ちたら終わってたな。

何とか橋を渡りきって走り出すが次は魔獣に遭遇した。周りには腹からを流して倒れている馬と上半と下半、首とがそれぞれ離れている男が2人その魔獣の側に倒れていた。

魔獣はダンジョンの中でも何度かごちそうに、ではなく倒したウッドマンだったのですんなり倒してから走り出し、約2キロくらい走って今に至る。

ユキナの霧は上民エリアの奧へと続いている。

俺はまだ整ってない息など放っておいて、ユキナの元へ走る。が、人や店などが邪魔で思うように走り続けることが出來ず、仕方がないので一旦路地裏へと移する。

人の気配がないのを確認してから寶を開き、予(あらかじ)めカレメローンの鱗を付けておいたローブを取り出す。

ローブを羽織り魔力を流すと徐々に俺の姿が見えなくなっていく。これは數日前に暇を潰すために実験していた。何故かを通してもを屈折出來るようなので服で試したらちゃんと消えたので、ローブに付けることにした。フードを外せば姿が見えるようになる。

「よっ、ほっ」

姿を消して壁を蹴って屋の上に登る。これなら他人に俺の姿が見えないので騒がれずにユキナの元へ行ける。

しかしユキナの霧は道の方にあるのでし見え辛いな。

「よっと」

伝い霧を辿(たど)って行くうちに人がなくなくなっていったので地面へと降り、フードを下ろして霧を辿る。

奧の方はこことは一風変わった建が並んでいる。

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「あれが貴族たちが住んでいるエリアか」

霧は真っ直ぐ、貴族たちのエリアへとびている。

しばらく走ると門のようなが立っていた。高さは20メートルくらいだな。周りに木があれば飛び越えられなくもなかった。

さらにし行くと門番が立っていた。

「?おい、止まれ」

そう言って男に呼び止められ、槍で進行を止めさせられた。

男は2人。右の男はヤクザのような顔にがっちりとした。ガールさんやボルグ(質屋の店主)さんとほぼ変わらない格だ。この耳は貓かな?顔に似合わず可い種だな。

左の男は隣と比べるとかなり小柄である。背も俺よりし低い。目つきが悪く、人を小馬鹿にしそうな顔である。

右の男は昔のヨーロッパの擲弾(てきだん)兵という兵士が著ていたような服を著ている。

左の男はドイツの兵が著ていた軍服ような服を著ている。ヘルメットは被っていないが。

ちなみに俺を呼び止めたのは右の男。

「何か?」

「貴様、この先に何の用だ?」

「....」

「どおした?」

困ったな。ここは素直に言っても通してもらえるとは思えないな。

しょうがない。

「俺は先日ここに立ち寄った旅の者で、この先が何なのかを知らない。この先のことを教えてもらえると幸いだ」

「「.....」」

2人は目を細め俺の格好を舐めるように見回す。苦しいかな?

そう思っていると右の男が口を開いた。

「この先は、貴族様が住むエリアだ。貴様が通っていい場所じゃねえ。帰れ」

「...そうですか。これは失禮した。では」

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俺は想笑いを浮かべて引き返す。

「....ちょっと待って」

が、行こうとしたところで今まで黙っていた左の男が口を開いた。

「何?」

「貴様、旅でここに寄ったと言ったな?」

「ああ。それが?」

「ならこの國へる際に必要であろう、胡通貨(こつうこうか)。商人だとしても権利証を持っているはずだ。見せろ」

「.....」

「.....」

胡通貨。俺らは不正國はしていないが、そんな貨はもらっていない。

「まさか持っていない、とは言うまい?」

「.....悪いけどそんな貨はもらってないな」

「ほお」

男は腰に下がっている剣へと手をばす。

「.....」

「.....」

しばらくの間、無音が続いた。男はただ俺を睨んでいるだけ。

數分ぐらいにじられる。

そして男は剣を抜く勢を辭め、口を開く。

「貴様の言う通り、そんな貨はない。時間を取らせたな」

何だよそれ。まあ、怪しまれても無理はないか。

「では」

俺は軽い會釈をしてその場を離れる。彼らから見えないところまで來たところでフードを被り、再び姿を見えなくする。

「一応、あいつらから離れたところから侵するか」

そう思い、右の方へと走る。

問題は侵した後だな。さっきの門のような警備だとありがたいんだがな。最悪數人と闘う羽目になりそうな予がする。

そんなことを考えている間に、門があった場所から數百メートルほど離れたところで立ち止まる。

「ここならしくらい音がしても直ぐにはこれまい」

俺は寶庫から風尚核と布を取り出す。布を広げて俺はその上に乗る。予め小さな風尚核を布のちょうど真ん中くらいに置いて置く。後は布越しに風尚核へ魔力を流すと。

「うおっ ︎」

風尚核から風が吹き出しそれにより布が浮かぶ。なんかサーフィンをしている気分になるな。やったことないけど。

そのまま勢いよく上昇する。

「やべっ ︎」

が、風尚核に流した魔力が切れ、風が止んでしまい落ちかけたがギリギリで壁を摑むことが出來た。

「ふんっ....っと。よし」

なんとか壁を登り、そのまま中へと侵する。後で気がついたが千里眼で中を覗いてからゲートで侵すれば良いと気がついた。

______________

東が貴族エリアへ侵し、ユキナを探している時だった。

「して、今回のはどのようなものかね?はん...んん、んん...」

そう食事の手を止めずに話をする真っ赤なサーコートに青のブリーチズという豪華な服を著ている男。(しかし似合っているかと聞かれたら、悩んでしまうほど)

年は40代後半ら辺。毎日豪華な食事をしているせいなのか、かなり太っている。頰はまん1つはありそうなほどある。椅子はで隠れて見えないが、彼への特注品である。そんな椅子から時々悲鳴のようにギシギシと音が鳴り響く。

「はい。今回はこちらを買い取っていただきたく、參りました」

そう言って男がその場から退き、後ろで眠っていたユキナを見せる。

その姿を見て口へ運ぶためにばしていた手を止め、ユキナの顔をジッと全を舐めますように見る。

「ほお....エルフか」

「さようでございます」

「ふむ....髪とがやや気になりはするがいい顔をしておるな」

「でございましょう?」

「んん.....」

男はしの間目を瞑り、唸り始めた。

そしてしばらくして目を開き、口を開いた。

「良かろう。して、いくらしい?」

「そおですね....サヘル様には日頃お世話になっておりますので、4ドドンと50フランでいかがでしょう?」

ドドンやフランというのはこの國の貨の単位で、ベル-ドル-リラ-ウォン-フラン-ドドン-ダイヤンの順である。ドドンは1枚で白金貨、100枚分表される。フランは1枚で金貨1枚と同じである。

つまり日本円で約450萬円となる。

    

「4ドドン50フランか....貴様にしては安くしたではないか、ドグラ」

「いえいえ。私のような者が生活していけるのも、全ては國王とサヘル様のおなのですから」

「そうか」

男、もといサヘルと呼ばれた男は笑みを浮かべ、グラスにった酒を一気に飲む。

「...はぁ。それで買ってやろう。代金はいつも通りでな」

「はは...ありがとうございます。それでは私たちはこれで」

「うむ....」

そう言って男たちはユキナを置いて部屋の外へと消えていった。

そしてサヘルはいつものように執事やメイドたちを部屋から出し、一息を突いてから未だ眠り続けているユキナへと近づく。

「んふぅー....まさかエルフの鬼が手にるとはな〜。他の者に高値で売ってもよいが、折角の上玉をミスミス逃す手はないな。まだ鬼だが安心しなさい。私がお前を私無くてはならないにしてやるからなぁ?」

男はそう言い涎(よだれ)を垂らし下卑た笑みを浮かべながら右手をユキナのへと移させ、

「グフフフフ」

「大変ですっ!サヘル様ぁ!」

「 ︎....貴様!部屋にはるなと言ったであろう!」

「それが大変なのです!」

「ええーい、黙れ、黙れ!私の楽しみを邪魔したのだ!言い訳など聞かん!貴様も私の奴隷してくれるわ!誰かこの兵士を捕まえよ ︎」

サヘルがそう言い終えると、何処から現れたのか、數人の武を持った男たちが今來た兵士を取り囲んだ。

「捕まえて、牢(ろう)へ閉じ込めておけ!あとでそ奴も奴隷にする」

サヘルの命令に男たちは後退りをし戸ったがすぐに命令通りに兵士を取り押さえ、牢へと向かった。その間も兵士は「話を聞いてください、サヘル様」と何度もんだが無視され続けた。

「全く、折角の良い気分が臺無しではないか。....これはし気分転換が必要であるな」

そう言い橫目でユキナを見る。その顔は先ほどとは比べものにならないほどイヤラしく、気持ちの悪い下卑た笑みを浮かべていた。

そして今度は手を下の方へばし、

「おいテメェ。今すぐそのクソな手を退けろ」

「 ︎がっ ︎」

ろうとしたところで今度は知らない、ドスの効いた聲が聞こえたのでサヘルが後ろを振り返るとほぼ同時に何かが額に當たった。

そしてユキナのに1度もることなく、サヘルはその何かによって2メートル半はど吹っ飛ばされた。

「....っつ」

サヘルは頭を抑えながら起き上がり、し頭を振って意識をはっきりさせてから扉の方を見る。するとそこには忘れていたゲートを使い、城へ侵した東が立っていた。

ゲートは千里眼とコンボさせることが出來るのを前に王様が教えてくれたのだが忘れていた。

「な...何だ、貴様は⁈」

「あんたに名乗ってやる義理はないね」

「っく ︎」

額からを流しているサヘルの顔が徐々に真っ赤になっていく。

「貴様!私を誰だと思っている!私はアンタレス王國のサヘル・トライスチレム・ボワン伯爵だぞ!」

「んなこと知るか」

「くっ....」

サヘルはギリギリと歯軋(はぎし)りをしながら、さらに顔を赤く染めていく。よほどご立腹のようだ。下手したら顔でお茶でも沸かせそうなほど真っ赤である。

「ええい!何をしておる!さっさとその男を捕まえて牢へぶち込まんか!」

サヘルのびに従い、さっき捕まえた兵士に1人が付いて、殘りは東を取り囲むように、というか取り囲まれた。

「.....」

「うっ....」

「何をしておる!さっさと捕まえんか!でなければ、貴様らの食事は一生なしだ!」

「ぐっ....うおぉぉっ!」

「「「おおぉぉぉっ」」」

4人の男たちは気が引けたじながらも威勢よく持っていた木で出來た槍で俺を取り抑えようと突進してきた。

「んんっ!」

「...ふっ」

「ぐほっ ︎」

右にいた男が先に槍を振り下ろしてきたので、それをし橫にずらして避け、空いた隙に右肘でを突くと男は倒れた。

「このっ!」

「おらっ!」

「....」

「「「「 ︎」」」」

次に前にいた男と左にいた男がほぼ同時に攻撃をしてきたので、槍の逆(さかわ)と呼ばれるところを握って止めた。

「ん!んっ!」

「このっ!このっ!」

「....」

「何をしておる!早くそんな手、解いて捕まえんか!」

「し、しかし。こいつの力が強すぎ、解くことが出來ないのです」

「はぁ?何を馬鹿なことを言っておる。こんな子どもにそんな力があるはずもなかろう。それとも貴様ら奴隷はそんな子どもに負けるほど腐っておるのか?」

「そんなはずは...」

「なら早よお、その子どもの手から槍を」

「.....」

バキッ!

部屋の中が靜まり返った。

サヘルたちが音のした方を向くと先端のなくなった槍から手を放した東の手からボロボロと木屑(きくず)が落ちる。

サヘルたちはその景をまさに有り得ないを見る顔で見ていた。

確かに男たちはサヘルと長々話している間も決して力を抜いて解こうとはしていなかった。

しかしそれでも解くことが出來なかった。それだけ東と男たちとではレベルの差があることサヘル以外は理解した。

「 ︎貴様らが手を抜いたせいで私が與えてやった槍がこんな子どもに折られてしまったではないか!貴様らにもう飯などない」

「そんな⁈それでは私たちは死んでしまいます。どうかお許しを」

「ならばその子どもを捕まえろ!そうしたら考えてやらんこともないぞ?」

「ありがとうございま...す」

ドタッ

男は最後にそう言うと気を失って倒れた。それを見ていたサヘルや他の男たちにも何が起こったのかが理解出來なかった。

「ぐほっ ︎」

「うっ ︎」

そして殘った男2人も気を失い、倒れた。

「何だ⁈一何が起こったのだ?それにあの子ども何処、へっ ︎」

サヘルは急に自分の足が地面に著いているがなくなり、バランスを崩して倒れかけたがなんとか四つん這いで倒れるのを防いだ。

「何だ?今何かが」

「おい」

「...ひっ ︎」

東が足払いをして四つん這いになったサヘルは聲のした方を顔だけ上げると自分の首のすぐ橫でが視界の端に映ったので、橫目で見るとそれが剣だということに気づき、短い悲鳴を上げる。

いたら斬るぞ?」

「...分かった。金ならいくらでも払う。何ならお前の後ろで寢ている娘。あれはエルフだ。さっき買ったばかりのまだ新鮮な」

言葉を続けようとしたところで目の前の剣が現れた。急なことで言葉が詰まったらしく、汗をダラダラ垂らしながら目をパチクリさせている。

「買った?」

「...そそ、そうだ。買ったのだ。ついさっきこのエルフを捕らえた者たちが來て、私に売ったのだ」

「そうじゃねえよ!」

「んぐっ ︎」

俺はそうんでサヘルのぐらを摑んで顔を近づける。

「人を、ましてや俺の大事な仲間を買っただぁ⁈ふざけんなっ!」

「ぐほっ ︎」

手を離して腹に勢いよく蹴りをれる。サヘルはかなり飛び、部屋の壁まで、約7、8メートルは飛んだと思う。

さっきまで食べていたを吐き出している。

俺はサヘルへ近づき、再び剣を向ける。

「2度と俺の仲間に近づくな」

「は...ははは、はい」

俺は剣を鞘に納めてユキナの元へ近づく。ユキナを抱きかかえて聲をかける。しかしユキナは唸り聲を上げるだけで目を開けない。俺がさらに激しく揺らすと目を開けた。

「んん...ん....」

「ユキナ!」

俺はユキナが目を開けたことに安堵の息をらす。

「ユキナ」

「..... ︎嫌!離して!」

「 ︎」

そう言ってユキナは暴れ出し、俺から距離を取るように逃げた。

「どう...なっているんだ?」

両耳を手で塞いで小さくなりガタガタ震えながら何かを呟き続けているユキナ。俺はそれをただ見守る。

「....」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい....(小聲)」

俺はしばらくの間震えるユキナをただ呆然と見つめ続け、次第に怒りが湧き上がってきた。

俺はサヘルの方へと振り向き、睨みながら口を開く。

「おい、これはどういうことだ?一ユキナに何をした⁈」

「ふんっ、私が知ったことか」

「....」

俺は立ち上がりサヘルの方へと向きを変える。

ドンッ

「っひ ︎」

そして右足に力をれて前へと飛び、サヘルの前で止まる。剣をサヘルの首橫に向けながら口を開く。

「じゃああの腕は何だ?」

「あれは...私のではない」

「噓を吐くな。あの腕からは微かだけどお前の霧が出ている。お前のだろ?」

「き、霧?何を言っているのだ?そんな、私には見えんぞ?貴様頭可笑しいのではないか?」

そう言いサヘルはにぃ〜と笑う。狀況分かってんか?こいつ。

仕方がない。

「じゃあ、力盡くで」

「は?.. ︎つっ!」

俺は剣でサヘルの首をしだけ切る。だいたいし出るくらいの深さにしたので、多は痛いが、これで恐怖は染み込んだだろう。

「早く言わないと、次は殺すぞ?」

「ひいっ ︎」

サヘルは短い悲鳴を上げ、ガタガタ震え始めた。

本気で殺したいと思うが、それを理で抑える。しかしそれもギリギリだ。

「分かった、言う!言う!だから、命だけは!」

「なら早く言え。あの腕は何だ?」

「あれは裝著者の魔力を使って過去を呼び覚ましす魔道(アーティファクト)だ」

「魔道?」

「その過去をさらに幻覚と幻聴を使って神を破壊していく。それがあの魔道だ」

「それはあの腕を外せば止まるのか?」

「無理だ。あの狀態だと、ほぼ完全に神は狂っている。もう貴様がいくら聲をかけようがまともにはならんだろうよ。第一、あれを外せるのは著けた者だけだしな」

「....」

サヘルは最後の方で「ざまぁ」と言うかのような顔を浮かべたが、そんなことは無視だ。

俺はサヘルを投げ飛ばし、ユキナの元へと近づく。

ユキナのとの距離があと數歩というところでユキナが俺を見てその場に崩れ落ちそうになったので慌ててけ止める。

「おい、ユキナ!ユキナ!」

「...すぅー...すぅー...」

「ユキナ...」

どうやら意識を失って眠っただけのようだ。しかし寢ながら唸り聲や“助けて”や“ごめんなさい”と寢言を言う。どうやら夢の中でも幻覚を見せられているようだ。

俺はし考え、ふとサヘルの言った言葉を思い出した。

魔力で幻覚を見せているのなら、その魔力を吸ってしまえばいいのだと。

「待ってろ、ユキナ。今助けてやるからな」

俺はユキナに小聲でそう言うと、深呼吸をしてからドレインを発させる。

ドレインやウォーミルは手全で発させるよりも指の1本、1本で発させた方がより速く、より強くなる。なので右腕の指5本を使ってドレインを発させる。

そして...

「...んっ ︎ ︎」

「 ︎」

グシャッ

それは到底文字で表すことの出來ないような音が部屋の中で響いた。

そして自分の視界に映っているはずのがなく、代わりにの海が視界へと飛び込んできた。

俺は恐る恐るあるはずのへと視線を向ける。するとそこにはあるはずの右腕ではなくが滴る肩が視界にった。

「あっ.....」

そして次第に激痛が走り、聲にならない聲を上げながら右肩を抑える。

「あっ....あぁぁぁぁっ......あぁぁぁっ....」

「ひぃっ ︎ひぃっ ︎」

俺は未だ走り続ける激痛に聲にならない聲を出しながら耐え続け、いきなり東の腕が々に吹っ飛んだのを見て、訳が分からず混しながらも未知なる恐怖から逃れようとずっと後退りをし続けるサヘル。

痛みに耐え続ける東の脳に聞き覚えのある聲が走る。

『アズマくん。君たちを一旦こっちにテレポートさせるから』

そう言い終わると東とユキナの姿はサヘルの前から消え、の海や片なども全てが消えた。

サヘルは自分の首の痛みなど忘れ、倒れた兵士たちを見ながらさっきまでの景が噓のように思い、気を失った。

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