《異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します》テレポート、そして結界
右肩から走る痛みに耐えながら東の視界に映り込んだのはこちらを心配そうに見つめている王様とトールの姿だった。
「んっ.....ぁっ.....」
「.....」
「....?」
王様が無言で俺の額に右の人差し指を當てる。
するとどうしたことか。先ほどまで激痛が走っていたはずの右肩からは痛みをじなくなった。右肩を見ると袖がで赤く染まっている。しかし、先ほどまで大量のが垂れていたにも関わらず、それすら止まっていた。
「....?」
「私がと痛みを一時的に止めたんだよ」
俺がわけも分からずいるのを察したのか王様が教えてくれた。
俺はし安堵の息をらすがすぐにユキナを探す。ユキナは俺と王様との間で眠っていた。相変わらず魘されている。
「東!」
「 ︎」
背後から聞き覚えのある聲が聞こえ、振り返るとそこにはアンタレス王國の下民エリアにいたはずのキリたちがこちらを驚きと心配そうな顔で見ていた。
4人(・・)は急いで東の元へと駆け寄り、東の右腕と魘されているユキナを見て、さらに驚く。
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しかしキリたちは俺の腕のことやユキナのことを聞きたいのをぐっと堪える。彼らの瞳には「ユキナを助けてあげて」。俺にはそう語られているように思えた。
そして彼らも、否、ここにいる人全員が同じ気持ちであった。
俺は立ち上がり王様、....いや、ここからは神様として頼ることにしよう。俺は神様の方を向く。
「王様。ユキナを助けたい。どうしたらいい?」
「....彼の腕に裝著させられているが何かは知っているね?」
「だいたいのことなら」
「あれは裝著者の魔力を使い他者が外せないよう結界が張られている。今のアズマくんにはあれを取り外すことは無理だね」
「.....(ギリッ)」
神様の言葉に俺は不甲斐ない俺自に怒りを抱いた。強く握り締めた拳からはが垂れ始めた。
「だから私が道を作ろう。結界がある以上正面からの解除は無理だ。だから裏から外す」
「?詳しく教えてくれ」
「あの魔道は神を破壊する魔道。しかし裝著者が神を維持することが出來ればあれは外れる」
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そして神様が一呼吸置いてから、
「つまりアズマくん。君が彼の神を彼とリンクして戻してあげる。私はその道を作ろう」
「.....」
えっと、神様の言ったことをまとめると
・今の俺ではこの結界は破れない
・しかしこの魔道は裝著者の神が安定していると外れる
・それで今神が崩壊しかけているユキナとリンク(多分俺の神を神様がユキナに送ってくれる)してユキナの神を元に戻す
と、これで合っているのか。
「大丈夫。大はそれで合っていますよ」
「そうですか」
俺の疑問にはトールさんが答えてくれた。やっぱり慣れないな。
「....ただし、逆に失敗してしまうとアズマくんの神もあの魔道によって支配されてしまう」
「「「「 ︎」」」」
「さらに悪ければ、アズマくんの神がユキナくんのに閉じ込められ二度とアズマくんのへ戻すことが出來なくなるかもしれない。....それでも行くかい?」
神様の言葉に全員が俺へと視線を向ける。俺は迷うしかなかった。しかしそう長く迷ってなどいられないのも分かっている。
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俺は決斷を言うべく口を開く。
「...ああ。それでもユキナを助けたい」
これが俺の初めから(・・・・)の答えだ。
「....分かった。すぐに準備をしよう」
神様はそう言ってユキナに駆け寄りしゃがむ。神様にジェスチャーでしゃがむように言われたので俺もしゃがむ。
そして先ほど俺にやったようにユキナの額に人差し指を當てる。続いて俺の額にも同じようにする。
「これで準備完了だ。後は、額同士をれさせ合えば道は出來る」
「そうか....」
俺は後ろを振り返る。後ろにはキリやサナ、ニーナに例の年が俺たちを見守っていた。
「行ってくる」
そうみんなに伝え、またユキナの方を向く。そして一呼吸を置き、目を閉じ、ゆっくりとを倒して俺の額とユキナの額を重ねる。
ユキナ。今、助けるからな。
額と額が重なった剎那、東の意識は途絶えた。
東が目を開けるとそこは、薄暗い空間。そして周りには床や壁もなくぷよぷよと浮かぶ変なだけである。
「ここがユキナの中....」
周りを見回してみるが、このシャボン玉のような、しかし明ではなく中で白い霧のようながパンパンにっている以外は何もない。
このシャボン玉のようなにってみようとも思ったが、変に行をしてユキナが余計に苦しむかも知れないので我慢した。
『アズマくん。聞こえるかい?』
頭の中から神様の聲が聞こえる。どうやら念話は使えるようだ。
『問題なく聞こえる』
『周りにシャボン玉のようながあると思うけどってないよね?』
『ああ。これって一何なんだ?』
『それはこの子の記憶』
『記憶?こんなのが?』
『気にしないでくれ。私の思い付きだから』
『あっそ...』
この人(神様)は、こんな時でもこれだよ。
『言っておくが、そのシャボン玉にるとこの子の記憶を覗くことが出來るがやってみるかい?』
危ねー。さっき危うくるところだった。
『何なら記憶をいじることも出來るぞ?そうするとその後の記憶がし変わるけど』
『はぁ...俺は人の記憶を覗いて都合良く変えるような卑劣なことはしたくないんでね』
『...そうかい』
神様は今の東の言葉に口角をし上げた。
『そんなことはいいから、早くどうしたらいいのか教えてくれ』
『ああ、すまない。じゃあとりあえず下を見てくれるかい?』
下はさっきも見たが暗過ぎて全く見えなかった。
神様に言われた通りに下を向くがやはり暗くて全く先が見えない。
『何も見ないけど』
『まあ、とりあえず下へ行けば分かるから』
俺は神様の言葉を信じて下へと向かう。行き方は泳ぐ?になるのかな。
別に水があるとかではないのだが何故か俺は浮いていて下へ行くには泳ぐしか進めなかった。これも神様の思い付きってことだよな。多分。
下へ行くに連れ暗闇が増していき、3、40メートルくらいからはもう自分が下へと泳いでいるのかすら分からない。
「...あ!そうか」
俺は途中であることを思い出した。この世界に來てからだいぶお世話になっている固有能力。魔眼である。
ここにってから魔眼が閉じられていたので忘れていた。
俺は魔眼を発させるために目に魔力を流す。しかしいくら目に魔力を流そうとしても、なぜか魔力が流れるじがしない。
いつもならすんなりと目に魔力を流すことが出來るし、流れているじも微量ながらだがじられていた。しかし今はそれをじない。
「何で.....ああ、今の俺って神だけの狀態だったな」
魔力はの方にあるので神狀態、況してやユキナの中にいるのだから俺の魔力がここまで來るはずがない。
そう思うと目が覚めた時に魔眼が閉じられていたのも納得出來る。
俺は納得したところですぐに下へと泳ぐ。
「...ん?」
さらに20メートルくらい行ったところで急に明るくなり始めた。明るくなったと言ってもそんなに明るくはない。ほんのし、薄っすらと5メートルほど奧の方まで明かるくなっている。
「...んぐっ ︎」
さらに奧へと進もうとしたところで頭に何かが當たり中に激痛が駆け巡った。
「いってー....何だ?」
左手をばしてみると何かいにれたが伝わる。さらに手の屆く範囲をってみるがどこも同じだ。
「これは...もしかして壁か」
もう一度ってみたり軽く叩いてみるがやはり壁である。明の壁が目の前にあるのだ。
この壁がどこまであるのか確かめるために手を壁に付けながら壁に沿って下へ行ことうとする。しかしかなり大きい壁らしく、全然曲がらない。ただ真っ直ぐにびる廊下をっているようなじがする。
次は中を覗いてみる。多の厚さの壁なら壊せるような気がするからだ。俺は壁とほぼキスをするのではないかと言わんばかりの近さまで近づいて中の様子を覗く。
すると奧の方で何かが見える。
俺は目を凝らしてそれが何なのかを確認しようとする。
「....な ︎」
目を細めてようやく見えたそれに俺は驚きの聲を上げる。
明な壁の奧。目を凝らして見えたもの。
腳を抱えて蹲(うずくま)っているユキナの姿が見えたのだ。
「ユキナ!おいっ!ユキナ!」
壁越しに大聲でぶがユキナは全くかない。この壁のせいで聞こえないのか?
「くっ...この!」
ゴッ
壁を壊そうと拳に力を込めて毆るが鈍い音がするだけで傷一つらない。それでも何度も毆り続けるが全く傷がらない。
拳に痛みすらじないので毆り続ける。
「クソ!...何で壊れねーんだよっ!」
息切れや痛み、拳からはも流れない。
「このっ!ぐっ ︎」
さらに毆り続けようと拳を振り上げるが突然がかなくなる。
『落ち著きなさい、アズマくん』
『止めんな!ユキナがこの奧にいるんだぞ⁈こんな壁くらい、今すぐ壊してユキナを助ける!だからこのけなくしてるのを解いてくれ!』
『....それは私の話を聞いてからだね。その壁は』
『話はいいから早く解いてくれって⁈その後でいくらでも聞いてやるから!』
『...@%#^ボソ』
神様が小聲で何かを言ったようだが今の俺の耳には屆かなかった。
『っ.... ︎』
早く解いてくれっと言おうとしたところで聲が出なかった。念話は心の中での會話だったはずなのだが、それでも聲が出てこなかった。それしか言いようがないからだ。
『...その壁はこの子の心を閉じ込めている結界だ。今のアズマくんにはそれを壊すどころか傷すら刻めないだろう』
『 ︎』
『當然と言えば當然さ。あくまで今のアズマくんはアズマくんの神でこの子の中にいるのであって、この子の神とは違う。アズマくんがいた世界で言うと3次元の者が2次元の者にることが出來ないように、アズマくんはその結界の先へは侵出來ないんだよ...』
東はただただ、神様に告げられたことに悲しみを、怒りを抱く。
『話はここで終わりじゃないけどね』
「...は?今の説明を聞いて、どうやってユキナを助けるんだよ⁈なあ。教えてくれよ...神様」
それは念話を使うのも忘れるほど、心の底から思ったことだった。
しかしそれがどうやって神様に屆いたかは分からないが、神様は再び念話を送ってきた。
『だから君をこの子と同じ狀態にするのさ』
「?」
『今は次元の違う狀態だけど、私が同じ次元にすることは可能だ』
『 ︎なら早く頼む!』
『....ただ』
神様は々ためらった後に、言葉を続ける。
『ただ、アズマくんがこの子と同じ次元になるということは、君もその結界に閉じ込められる可能も大いにある。そして閉じ込められれば君は...もう自分のへは戻ることは出來ない。それでもや...』
『ああ、やってやる。ユキナを助けられるならやってやろうじゃぁ、ねぇかっ!』
『分かった。無事を祈るとしよう』
『ああ』
祈るって誰にとも思ったがそんなことはどうでもいい。
「待ってろよ、ユキナ。今すぐ助けてやるからな」
聞こえるはずのないユキナに語りかけ、『やってくれ、神様』そう頼むとほぼ同時にがまるでテレビの砂嵐のようになり始めた。若干の恐怖はある。
そのまま恐る恐る壁にれる。するとまるで掃除機のように俺のを吸い込み始めた。
俺は抵抗する間もなく中へと吸い込まれる。そして...
「ぐっ ︎あぁっ....あ...たま....が。あた.....ま....がわ....れそ....うだ...」
酷い頭痛が押し寄せてきた。本當に頭が割れているのではないかというほど激痛が走る。
そして、頭の中に何かが流れ込んでくる。
「な....ん....だよ...こ.....れ....」
頭の中にってきたのは記憶?というよりは黒くて悍(おぞ)ましい「何か」だった。
「何か」は小さな豆粒くらいのぶよぶよとしているようなじだ。そしてその「何か」が俺の記憶を喰い始めた。
「や...め.....ろ....」
その「何か」は俺の言ったことを無視するかのようにして記憶を食べ続ける。そして「何か」は次第に大きくなり始めたことに気が付いたのは記憶を半分ほど喰われたくらいからだ。
俺の記憶は神様が思いつきで作ったシャボン玉のような形をしている。それをむしゃむしゃと食べ続ける「何か」。
そして1つの記憶を食べ終えたところでその「何か」は2つに増した。
そして2つの「何か」は違う記憶を喰い始めた。食べる速さは先ほどよりもし速く、また1つ記憶を喰い終わるとまた増し、また喰い始め、また増してを繰り返す。
「....ぁぁっ......」
嫌だ!やめてくれ!き回るな!喰うな!俺の大事な記憶を喰うな!
記憶を食べられることの表現が思いつかない。頭の中のイメージがまるで俺の目の前で起こっているかのようだ。
これが今ユキナを苦しめているのか?なら早く助けてやらないと。
そう思いユキナに近付こうとしてが止まる。
「....あ、れ?ゆきな....って誰だ?」
ユキナの記憶が頭の中から消えた。
「ここはどこだ?早く家に帰って夕食を作らないと母さんが....母さんが...って、誰だ?」
遂には母さんの記憶までもが喰いつくされ、頭の中が真っ白なのか真っ黒なのか分からないが、東の意識は薄れていった。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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8 71異世界で、英雄譚をはじめましょう。
――これは、異世界で語られることとなるもっとも新しい英雄譚だ。 ひょんなことから異世界にトリップした主人公は、ラドーム學院でメアリーとルーシー、二人の少年少女に出會う。メタモルフォーズとの戦闘を契機に、自らに課せられた「勇者」たる使命を知ることとなる。 そして彼らは世界を救うために、旅に出る。 それは、この世界で語られることとなるもっとも新しい英雄譚の始まりになるとは、まだ誰も知らないのだった。 ■エブリスタ・作者サイト(http://site.knkawaraya.net/異世界英雄譚/)でも連載しています。 本作はサイエンス・ファンタジー(SF)です。
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