《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》5話 と思いきや似非清楚です
「あ、昨日の方ですか。おはようございます」
「ああ。おはよう」
人っていうのは一度認識するどうにも意識がそれに向いてしまうもので、アレンもどうやらこちら気がついたようで、私は丁寧に挨拶をした。もちろん、これは偶然の再會なんてロマンチックなものではなく、私の意図したプラグマティックなものだ。運命なんてものは自分の手で演出するものだ。
そんなわけで私はアレンと再會していた。ハニートラップ作戦第2段階に移行だ。これは、私からはどうしようにもできないので、アレンが私をどれだけ気に留めているかが鍵になる。
「昨日は本當にありがとうございました。それなのに直ぐに立ち去ってしまって、私ったら」
「本當に気にしなくていい。それよりも今日は時間は大丈夫なのか?」
「はい。今日はお休みをいただいているので」
「そうか。それならこの後しお茶でもしないか? 紅茶の味しい店があるんだ」
來た來た。アレンの方から持ちかけてくれた。これが重要だ。
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アレンの理想は『清楚で健気な街娘』。想像してしい、清楚そうなの子がまだ會ったばかりの異をお茶やら食事やらにう場面を。
ここで確認しておきたい。清楚というのは、清らかですっきりとしたさまを指す。それから転じ、控え目で清潔のある容貌。格としては謙虛で慎ましくしい所作をするを表す事になる。
つまり何が言いたいのかというと。控え目なら自分からうことは早々にはない。というか、だ。清楚そうなの子がガツガツとって來たり、それとなくうって、それは清楚じゃなくて、偽清楚。有りに言っちゃうと、ビッチ系清楚ということだ。
……まあ私も、本じゃないけど偽でもなく、似非清楚なわけだけど。それはそれ。知らぬが華だ。
し話が逸れた、いや盛り上がってしまったが、清楚な私からっては駄目で、アレンにってもらうことが重要だったのだ。
清楚清楚。
「え、でも……。私なんかとですか?」
「ああ」
「その……。はい、構いませんよ」
ニコッと頷いたらさぁレッツゴー。どんな味しいものお菓子食べさせてくれるのかな? 
***
アレンのエスコートで連れてこられたのは(そば付きの執事さんは外された)、私もこの世界に來てから行ったことがない、いわゆるブルジョアエリアなる場所の一畫に構えられた、雰囲気の良い喫茶店だった。こんな場所に店を構えて客が來るのかと思いはしたのだが、思いの外客りはよかった。というのもだ、周りから聞こえてくる聲に耳を傾ければわかるのだが、商談に利用されているようだ。容からしてかなり大掛かりな取引だったりして、ああ大富豪様方なんだなと納得した。
そんな場所にをエスコートするのはどうかと思ったし、何よりも高級に程遠い街娘たる私が場慣れしていないことを想定はしていなかったのだろうか。
という、私の疑問も、全ては目前に出されたケーキにより打ち砕かれた。
「っ! 味しい……」
「よかった。ここは大きな商談に使われることが多かったりするんだけど、ケーキも絶品でね。口にあってよかったよ」
「こんなに味しいもの、初めて食べました」
「ハハッ。それで、フィアナの話の続きを聞かせてくれないか?」
「はい」
フィアナというのは私の名前だ。流石にカナデなんて実名で接近すれば、協會関係者であることを疑われてしまう。それに、この作戦を終えた時に理想が現実に足跡殘してたら、その跡を辿られかねない。だから偽名を用いた。
絶品の紅茶と味しいケーキを満喫しつつアレンとの談笑もする。本當はケーキだけに夢中になりたいけど、いつもとは違うしそれは無理。
いつもならロリっ子らしく純粋に味しく食べていれば微笑ましたかったんだが、今はそうとはいかない。今はしずつ、の子らしく食べる。
ここで意識することが、指先だ。と男では手の使い方に若干の違いがあって、そこを意識すると一気にの子らしくなる。あざとくなるとも言える。
「それは凄いな。俺もなーー」
聞き役に徹する。非常に大事だ。アレンを立てるように話を展開し、それに相槌を打って、時折自分のことを話す。はが多い方が魅力的だとはよく言ったものだが、要するに小出しするということだ。しずつ出して、興味をもたせて、気がつかぬ間に嵌める。
これはやる人によって大分印象が変わる事なのだが、それも私の容貌でやればそのままお淑やかと捉えられる。
ほとんど聞き流し頭にはってない。私は笑顔の裏で今日の夜メシは何に? なんて事を考えていた。
だから、私はぼーっとしていて、急に視界にった人影に小さく「ひっ」なんて聲をあげてしまった。
「うん? どうかしたか?」
「い、いえ。あ、あの。私そろそろ行かなくちゃいけなくて」
「む、そうなのか? 仕事は休みなのだろう」
「そうなのですが。知人に會う予定でして」
「そうか。それは仕方がないな」
「すいません。でも、私凄く楽しかったです」
「ならよかった。次は、いつ會える?」
次……。次か。うーん。あんまり連日會いすぎるのもおかしな話だし、し日をいで、
「明後日なら、大丈夫ですが」
「そうか。なら、次は俺の家でゆっくり話をしよう」
「はい。あ、これ私の分のーー」
「いいよ。俺が払っておこう」
「そんな。昨日も助けていただいたのに、お金まで」
「いいんだよ。これは俺の気持ちだ」
「その、ありがとうございます」
すいませんと言うほど卑屈になってはいけない。あくまで謙虛というだけだ。さじ加減を間違えては、それは別屬になってしまう。
「あの、今日はありがとうございました」
「俺も楽しかったからな」
「よかったです! それでは失禮します」
店を出てアレンと別れる。見た目では不分相応の場所にいるためか、外に出ると奇異な視線が集まった。それを気にする事なく私は早歩きでその場を立ち去った。
……後ろに気配をじる。ストーカー? なんてことはなく、これはまあ私の知る人のものだろう。
そのまま歩いて、いや、微妙な距離の取り方に知ってる人とはいえ怖くなって、私はさらに足を早めた。
ようやく目的地へと著いた。人通りの多い表通りからし中にった、滅多に人が來ない場所だ。念のために周りを警戒して、私はやっと気を抜ける。
そして、
「カナデちゃーん」
この作戦が始まってから、いやまだ2日目だけど、それでも明らかに過保護度合いが高まってるリディアさんが現れた。というか、後ろから抱きつかれた。とどのつまり、ストーカーはリディアさんだった。
「リディアさん」
「うん?」
「私、し怒ってます」
「え? わ、私何かした?」
「なんで店の外からこっちをガン見してたんですか……」
そう、俺が小さな悲鳴をあげたのはリディアさんの奇行にある。だってアレンの背中越しに見える眼のリディアさんを見たら、そりゃビビるでしょう。
「だってーー」
「だってもありません。私言いましたよね? しでも作戦がバレる可能を低くするために、リディアさんは別の場所で待機していてくださいって」
「あ、いやでも、その、あのね?」
「ふんっ!」
「っ! ? そ、んな……」
うろたえるうろたえる。……なんか、ほんっとうにリディアがポンコツだ。まあ扱いやすくていいのだが。
「『理想は夢想となり消える』」
これが理想変化を解く言葉。これを言わない限り、理想変化が解けることはない。ただ理想変化中は魔力なるものを微々に使っているので、いつかは自然と解ける。
このタイミングで解くのは、ちょっとした意地悪だ。リディアさんは私が理想変化して姿も好きらしいけど、反応を見る限り元の俺の方が好きだ。だから、
「約束を守ってくれないリディアさんは、嫌い」
「……」
あ、灰になった。
「だから約束、守ってくださいね」
「はい……」
「じゃあ著替えたら一度協會に行きましょう。し進展があったので」
「うん。これ著替えね」
「ありがとうございますリディアさん。心配は嬉しいですけど、ほどほどにしてくださいね?」
「っ! うん! 」
飴と鞭、上手く使うのは得意だけど、リディアさんは本當にどハマりしてくれるな……。將來が心配です! 
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