《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》10話 お話の前に、酔い
「きもちわる……うぷっ」
荷車ーー馬車に乗って城壁外にあるアシュレイさんの両親が営んでいるという農場に向かったわけだが、まあ酔った……吐きそ。
道は整えられているとは言えずガタガタで、ゴムのない車が揺れに拍車をかけ、は痛い酔いは酷いことになった。
こんなにも酔ったのは、ハイテンションガールどもに某有名テーマパークに連れていかれた時以來だ。あの時はイベント中で人混みでも酔ったし、何よりも何回も乗せられアトラクションがアウトだった。……思い出したらまた。クソうっ。
俺が早々にダウンしている間、リディアさんが何やら商人に向かって言っていたがよく聞き取れなかった。だがやりとりの様子はなんとか見えたわけで、リディアさん、なんか商人に怖がられてるよ? 何言ったの?
ああ、気持ち悪い……。
そんなこんなでようやく著いた。その頃には俺は瀕死狀態で、口からキラキラが出る寸前。ああ、晝飯食べる前でよかったぁ。
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止まった馬車を降りたらしい商人が、俺の顔を除き込んできた。
「嬢ちゃんは……、無理か。し休んでな。先に話をしてこよう」
「私も殘りますね。こんなかわいい子、一人にはしておけませんし。……あなたみたいな方がいるので」
「や、やだなぁリディアさん。俺はソッチ方面の商売には手ェだしてないですよ」
「まあ、來ても返り討ちにするので」
なんかリディアさんが怖い笑顔を浮かべているが。しかし、話が摑めない。酔いで頭が回らないのもあるけど、話が斷片的過ぎる。ああ、俺の知らないところで駆け引きがされてる。……まぁ俺みたいなかわいい子は、汚い社會は知らないよ? 純白だよ?
牽制された商人は馬車から離れていき、やがて靜寂が訪れた。リディアさんもいるが俺の様子を慮ってか、そっとしていてくれる。
屋の無い荷車にいるから空が筒抜けで、暖かな太が俺を照らしている。焼き男の娘が出來るほどではないにしろ、がジリジリとする。それも時折吹く爽やかな風ででられ、ちょうどいい、気持ちのいい天気となっている。
異世界に來てから空気は綺麗だと思っていたが、ここは特段空気が味しい。酔いもし楽になって來た。
「大丈夫? カナデちゃん」
「はい。し、楽はなってきました」
「よかったよ」
途中からーー街を出てししたらすぐに寢込んでいたから、景の移り変わりを楽しめなかったけどらこれはこれでよかった。木組みの家や石造・煉瓦造りの家が立ち並ぶ活気溢れる景は、平々と広がる田畑がのどかな靜けさを醸し出す景へと変わっていた。
「凄いな」
「そうだね。私も、外に出るのは久しぶりなんだよね」
「そうなんですか」
見た限り三圃制を用いた田畑のようだ。予想よりも進歩している農業技に驚くが、それ以上に明らかに夫婦だけで手れすることが出來ないだろう田畑に疑問を抱く。
地球見みたく最新の機械があるのならわかる。かなりの無茶をすれば夫婦だけでもなんとかなるだろう。しかしここは異世界でそんなものはない。
じゃあ小作人みたいな人を雇うというのはどうなのか? これは建設的だし、あり得る話だ。しかしならなぜ真晝間という時間帯にそれらしき人影が見當たらないのか、となる。
よって、きっとこれも異世界的に、今までもちょくちょく出てきた魔道とやらが活躍しているのだろう。実に便利な存在なのだろうな、魔道。困った時には魔道だねっ。
そんな風にぼーっとしていれば、ふと思う。
ん? 平和な時間が流れていたけどおかしくはないか? ここは城壁の外。つまり、迷宮から逸れた魔が荒らしていてもおかしくないのに、その痕跡がまったくない。
本當に平和なのだ。平和、だよね? 突然魔に襲われたりしないよね?
「リ、リディアさん。ここ、魔に襲われてたりしませんかね」
「ああ、うん。多分大丈夫だよ」
「でもここ城壁の外ですよね? アシュレイさんも、城壁の外で魔に襲われたんじゃ」
「そうなんだけどね。農場とか牧場には、結界を張る魔道が置かれてるの。ほらあそこ、黒い柱があるでしょう? あれが結界を張る魔道の一種なの」
リディアさんが指を指す方を見れば、力強く地面に突き刺さってる、腰の高さほどの柱があった。そこから連なるものはないが、確かに結界が張られているらしい。不安だ。
しかし、周囲を見れば確かにところどころに柱が立っていて、それはやや不自然な景だ。柵があるわけじゃないから余計に目立つ。
はあ、こんなことにも気がつかないなんて、酔いのせいでまだ頭がしっかりと働かない。アシュレイさんの両親に話を聞くまでには、調を整えなければ。
「滅多なことじゃ破られる心配はないし、破られれば直ぐに街に常駐してる兵士に連絡が行くようになってるの」
「へぇ。そんなものがあったんですか」
「うん。だけど、街に張られてる結界に比べたら弱いんだけどね。
さすがに街に野菜とかを大量生産する土地はないから、どうしても外で作らなくちゃいけないんだけど、萬が一があるからね。こうして農場にら結界が張られてるの。國からの支給だよ」
そりゃあ、なんとも安全保障のしっかりとした國だな。害獣対策に國で乗り出すだなんて、これは異世界だからだろうか。食べの作不作は國家権力安定にも繋がるわけだし、なかなかいいとは思うのだけど。反が現実的な異世界ならではということなのか。無知な俺にはわからんが。
あれ? でもそれじゃあ、
「なんで農場以外、街道にも結界を張らないんですか? それなら、アシュレイさんが死ぬことも」
「それはし無理かな。魔道ってやっぱり消耗品が多いんだけどね、結界系の魔道はそれが凄いの。街道にまで配備してたら、お金が足りないんだよ」
「だから必要最低限の農場にだけ?」
「逸れの魔なんてあまりいないからね。割に合わないんだよ」
なんともリアルな話だ。いま一瞬、ここがファンタジーな世界なのを忘れかけたけど、あたりまえか。この世界にだって人が住んでいて國があるのなら、そういった部分があるのはあたりまえなのだ。ゲームみたく一面を見るわけにはいかない。
「まぁ安心して。いざとなったら、私がカナデちゃんを守るから」
「頼りにしてますね」
リディアさん、付嬢なのに強そうだし。
***
のんびりして酔いもだいぶ治った頃、商人がようやく戻ってきた。どうやら取り引きついでに俺の用件を伝えてくれたらしく、伝言も預かったそうだ。「調が優れないのならベッドを貸す。良くなったのなら話をします」という旨のもので、俺はよしっと頬を叩いて気合をれた。
ここで、報を引き出せるかがアレン攻略の否に繋がる。
酔ってぼやけた頭に喝をいれて、俺とリディアさんはアシュレイさんのご両親が待っている家に向かった。
幾つかある建。農をしまう倉庫や野菜を保管する蔵。々あるが商人に事前に教えてもらったので迷うことなく家がわかった。
街にあるものと同じで、石造と木造の混ざったハーフティンバー造りで、隨分立派家だった。
ノックをした。コンコンという気持ちのいい音が響いた。
「こんにちは。商人さんのお話にあった、アシュレイさんの話を聞きたい者です」
開きの扉はゆっくりと開けられた。開けたのはもちろん俺じゃなくて、人の良さそうなお婆さんだった。
皺はあるけど、素の薄い金髪と青目は同じだし、何よりも雰囲気が同じだった。この人が、アシュレイさんのお母さん。
「遠いところまでごめんなさいね。さあって。お茶でもしながらお話しましょう」
ついでに、アレンの祖母でもあった。
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「世界最初の超知能マシンが、人類最後の発明品になるだろう。ただしそのマシンは従順で、自らの制御方法を我々に教えてくれるものでなければならない」アーヴィング・J・グッド(1965年) 日本有數のとある大企業に、人工知能(AI)システムを開発する研究所があった。 ここの研究員たちには、ある重要な任務が課せられていた。 それは「人類を凌駕する汎用人工知能(AGI)を作る」こと。 進化したAIは人類にとって救世主となるのか、破壊神となるのか。 その答えは、まだ誰にもわからない。 ※本作品はアイザック・アシモフによる「ロボット工學ハンドブック」第56版『われはロボット(I, Robot )』內の、「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とする3つの原則「ロボット工學三原則」を引用しています。 ※『暗殺一家のギフテッド』スピンオフ作品です。単體でも読めますが、ラストが物足りないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。 本作品のあとの世界を描いたものが本編です。ローファンタジージャンルで、SFに加え、魔法世界が出てきます。 ※この作品は、ノベプラにもほとんど同じ內容で投稿しています。
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