《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》12話 思い出話

今、なんて言った? お、おてんば? アシュレイさんが、おてんばだと?

「ははは。驚いたような顔をしてるね。なに、ちょっとしたお返しだよ。驚かされたからね」

「へ、へぇ。ランドルさんは意外とお茶目なんですねー」

こんの、クソジジィ。確かに驚いたよ! 清楚清楚言われてる人がまさかのおてんばって。

確かに外面と面が違うことはある。俺なんかその最たる例だと自負している。俺の場合はあえてそういう風に演じているからわかる。

だけどわざわざそんな事を普段からする人なんて希だろう。

それなのに、アシュレイさんは180度真逆のだった。それは意図してだろう。じゃなきゃ、自分の本から乖離しすぎた格を演じるのは無理だ。

いや、早計か。まだどうかはわからない。話を聞いてからでも遅くはない筈だ。ランドルさんのおちょくりだって可能があるしっ。

「もう、客人をからかうんじゃありません」

「すまんすまん」

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「私から話すのであなた黙っていてください」

「それは」

「いいですね」

やーい、怒られてやんのー。……俺、頭悪くなったか?

しかしこの世界でも夫は妻のに敷かれるものなのか。うんうん、は強しだな。というか男がやっぱり馬鹿だわ。

ああ、なんか収集つかなくなりそうだし、ランドルさんが叱られているのは気持ちがいいけど、仕方ない、割り込むか。

「あの、お話を聞いても?」

「ああごめんなさいね。悪い癖だわ」

「はあ」

「アシュレイのことね。アシュレイ。

出來すぎた娘だった、わけじゃなかったわ。むしろ手をやかされたわね」

「そうなんですか?」

「そうよ。ほら、この周りってなにもないじゃない? だからぶらぶら〜って探検紛いな事をしてたわ」

なんだか意外だ。お家のお手伝いでもしているのかと思っていた。それも俺のかってな想像だったけど、それでもそれが俺のアシュレイへの第一印象なわけで、それが違うとなるとやはり驚くわけだが。……さっきのも。

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しかし、だからといって鵜呑みにするわけにもいかない。いやそんなこと言ってたらキリがないんだけど、この質問ばかりは有効だ。

「それは小さい頃の話ですか?」

考えるまでもなく、小さい頃と長してからは格が異なる場合が多い。

今でこそ強い人が小さい頃はいとこのの子に泣かされてたりとか、に興味ないとか言ってる人が、小さい頃はのお兄さんお姉さんが好きでふらりとついて行ってたりとか。

俺の場合で言えば今でこそこんな格だけど、小さい頃はもっと純粋無垢だったりしたわけだ。そんな俺が汚れた背景には々とあるわけだけど。

しかしそれは俺だけではなくて、多くの人が小さい頃の小さい世界から、大きくなって広い世界を見るようになると変わってしまうものなのだ。善悪とかじゃなくて、長なのだ。良くも悪くも長してしまうのだ。

だから小さい頃と長した場合とでは格に差異が出る。繰り返したが。

それでなにが聞きたいのかといううと、いつまで、あるいはいつからお外を闊歩するやんちゃな格だったのかという一點に盡きる。ターニングポイントは大事だ。

「嫁にいくし前までだったかしらね……。いやだわ、すっかり記憶が曖昧だもの」

「何年も前のことなんですよね? だったら仕方ないですよ」

「そう? 」

フォローをれつつ……さて、これは本當にここに來てよかったな。思わぬ想像しえぬ報がどんどん出てくる。一言一言が貴重だ。

まあそんな俺のはおいておくとしてだ。やんちゃッ子は嫁に行くし前まで続いていた、というかやっぱり本はそちらだったのか。

だが嫁行くし前ということは、まあおそらく夫である領主さんと出會って……いるよな? 

まさか貴族の暴利で無理矢理結婚なんてことじゃないよね。だとしたら親子揃ってのクズなのだけど、幸いか聞くところによれば領主さんは人格者らしかったので違うだろう。

しかし、いまいちそこらへんがわからないな。普通に結婚なのか、それともテンプレ的な決められた政略結婚だったのか。

いやおそらく結婚だとは思うよ? だって農家の一人娘と結婚するメリットってなんだよ。なんかあるか? ないだろ。政略結婚ではないと思う。

「けどそうね。小さい頃からやんちゃな子だったのは確かよ」

「小さい頃アシュレイ様を見たことはありますが、想像が出來ませんね」

「私達からしたら清楚なんて、慕われる方が想像出來ないわ。ね?」

「あ、ああそうだな」

あ、今自分に話題が振られると思ってなかったなランドルさん。

ほら、そんな反応するからエイダさんが呆れてるぞ。……呆れられちゃったよ。もう、しばらくは無理そうだなランドルさん。

せっかく挽回の、話に參加出來るチャンスだったのに棒に振るとは。男っていうのはそんなものか。うん。

「そうだわ。アシュレイがどんな風だったか聞かせてくれないかしら。私達も街にはほとんど行かないから、街での様子なんて聞かなかったの。お願いできるかしら」

「わかりました」

これにはリディアさんが答える。まあ俺は知らないし、対応としては妥當だろう。

「私も小さい頃、といってもたった10年前ですが、間違いもあるかもしれませんが」

「いいのよ。何があったとか記憶じゃなくて、どう心がじたのかを知りたいんだから」

「はい」

どうじたのか、か……。アレンもどうじていたのだろうか。き頃に自慢の母を亡くして。

「では話しますね」

二回目。だけど、よりたくさんの事を知った俺は、その話に何をじて考えるのだろうか。

***

アシュレイ様の話をするにあたって、これから話すことは多分、かなり私の腳ってしまいます。心に抱いた憧れですから、化されているというか……。いえ、本當に素晴らしい人でしたので問題はありませんが。

え? 問題はない。……そうでした、私がじたことを話すのでした。

では、私が初めてアシュレイ様と出會って、というか見かけた時の事から話しますね。何事も始まりが肝心ですので。

私がアシュレイ様を初めて見たのは、えっと、そうでしたそうでした、アシュレイ様が街を見回っていた時でした。アシュレイ様は市民がちゃんと暮らせているのか、よく見回っていたんです。

もちろん護衛が數人と執事のエルバードが付いてました。それでもアシュレイ様は出來るだけ多くの人と話して回っていました。

私ですか? 私は小さい頃は人見知りで、遠巻きに眺めてるだけでした。ですが、時折聴こえてくる聲は優しそうでした。

そういえば、アシュレイ様と手を繋いでいた男の子がいましたね。思えば、あれがアレンだったんだと思います。

今とは違っーーいえ、なんでもありません。アシュレイ様の橫でアシュレイをきらきらとした目で見てましてね。「自慢なお母さん!」っといった合で。かわいいものです。

そんな出來事が、アシュレイ様が領主様の奧様となられてから多分10年は経っていたと思うのですが、とにかくそれからです。それからアシュレイ様が慕われ始めたのは。

アシュレイ様は積極的に市民と関わったりするようになったので。それまではあまり人となりを知りませんでしたから。だから皆もっと早く知りたかった、と口をそろえていました。私もです。

ですがアシュレイ様の行はこれに留まりませんでした。

次に記憶に殘っているのはそうですね、謝祭の時ですね。あの時のアシュレイ様は本當にお綺麗で、しばらく話題にもなりました。

ですが私がその時に思ったのは……なんと言えばいいんでしょうか。強いだなって事だったと思います。い私が何を思ってるんだってじですけどね。

なんですが、それが印象に殘っていて。

謝祭は領主様が毎年恒例で挨拶をするんです。それが祭の開催の合図でもあるんですね。だったのですが、その年は領主様の前にアシュレイ様も挨拶をしたんです。

「いつも活気溢れる街を作っていただきありがとうございます。謝祭は日々の営みに謝をする日でもありますが、私達が皆さまに謝を示す日でもあります。

私を含め、夫やアレンがこうして健康にいられるのも皆さまあってのことです。

これからもよろしくお願いします」

曖昧ですけど、概ねそんなじだったと思います。言葉は在り來たりでしたし、そこまで長いものではなかったんですが、妙に印象が強くて。

この人みたいなになりたいと思いました。

あとはそうですね。アシュレイ様のエピソードで言えば、一番のものがあります。多分知ってる人はこの話をしますね。うんそうだよ、カナデちゃんにも話した奴。

これから話すことは又聞きとかじゃなくて、目の前で見たんです。

私の家は貧乏だったんです。今はそんなことないんですけどね。私が働いて養いましたので。あ、ありがとうございます。褒められると照れますね。

……話を戻します。貧乏で両親は共働きで兄弟もいない私は近所の子と遊んだり、たまにお仕事を手伝ったりしてました。

その日も友達と遊んでいたんです。探検だー! って言って街のんなところに行ったんです。そうしたら大通りにアシュレイ様がいるって聞いて、私達は急いで向かったんです。

その頃には私と友達もアシュレイ様に憧れていましたから。

アシュレイ様アシュレイ様って、なんとか見える場所に著いたんです。アシュレイ様の周りには護衛が當然いましたから、し離れてですけどね。

アシュレイ様は花屋の主人と何か話していました。様子から察するに、プレゼント用の花を相談していたんだと思います。

私達もアシュレイ様が何を買うのか気になって暫く見ていたんです。

そこは大通りで、馬車も結構走るんですね。そうしたら小さい男の子が、當時の私からしてもですけど、とにかく飛び出してしまったんです。車道に。

運悪くそこに結構な速さで馬車が走って來ていて、次の瞬間には悲鳴が上がったんです。アシュレイ様が男の子を庇って引かれたので。

アシュレイ様は誰よりも男の子に早く気がついていたみたいなんです。私が気がついた時にはもうき出していて、多分魔法を使っていたんですけど、引かれてしまって。

アシュレイ様は幸いかすり傷。泣きじゃくる男の子を優しく抱きしめて頭をでていました。自然とそうしていたので、ああやっぱりすごい人だって思いましたね。

他にも沢山ありますけど、大まかにはこんなじでしょうか。

***

アシュレイさんを話しているリディアさんはやっぱり楽しそうだった。そしてそれを聞くエイダさんとランドルさんも。アシュレイさんが懐かしく慈しんでいた。

「そう。あの子、街ではそんな。だから、ね」

「どうかしたんですか?」

気になる言い草だ。何か知っている? 

「私達の知るアシュレイと街の皆さまが知るアシュレイが別人過ぎてね。だから納得しちゃったのよ」

「何に納得を?」

「アシュレイが相談してきたことに」

これは、どうやら裏があるようだ。きっとそれは俺がじた違和を解消してくれる答えなのだろう。

「聞かせてください」

だから俺はまっすぐに見據えた。俺には聞く権利がある、と。

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