《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》13話 やっと聞きたいことに

「アシュレイさんが、何を相談してきたのか教えてください」

「……」

……まあ、そりゃあそうなるわな。周りに人がいたアシュレイさんが、執事であるエルバードさんにではなく、わざわざ街から離れた両親に相談した。それはきっとどうしても両親じゃなきゃいけないことで、同時に知られたくなかったこと。アシュレイさんは多分生前にも念押しをしたのだろう。

そんな我が子が話してくれたを今日あった他人に話すことは出來ないのだろう。それ以外の、自分達が見てきた娘のことならまだしもだ。

だが、こちらも引き下がるわけにはいかない。アレンの理想の基盤であるアシュレイさんが抱えていた、悩みという誰しもが抱えるからこそその人を形作るものを、知らなければいけない。知らなければ、アレンの理想とアシュレイさんを切り離せない。

「アレンは理想のの大部分がアシュレイさんで出來ています。容姿はもちろんですが、清楚で聡明だという部分もです」

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「……」

「お分りだと思いますが、あえて言います。アシュレイさんが作っていた清楚という仮面が、アレンの理想なんです」

「そうね」

「はい。今のアレンは理想のを抱いているんじゃない。理想の元だったアシュレイさんに追憶して、縋って、囚われているだけです。

だから、アシュレイさんがどうしてそんな仮面を作ったのか知る必要があるんです」

俺は清楚じゃないから、アレンの理想だという清楚屬を演じた。つまりは似非清楚だ。

だが、今まで純粋な清楚だと思っていたアシュレイさんも、俺と同じで清楚屬を演じていて、そして似非清楚だった。

理由はきっと違うのだろう。だけど結果は同じで、だからこそアレンはアシュレイさんの面影をフィアナに重ねたわけで、そしてこうなった。どうあがいても剝がれない、強固な面影に。

「お願いします」

俺は改めて頭を下げた。

「ええそうね。話しましょう。アレンのためですものね。すっかり忘れていたわ。やっぱり歳はとるものじゃないわね」

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「ありがとうございます!」

「いいのよ。もともとアシュレイの事は話す約束だもの。私達が往生際が悪くて渋っただけなんだから」

それもそうか。いや、俺が言うのはおかしいけど。

「じゃあ、アシュレイの事を話しましょうかね」

やっとたどり著いたよ。長いよ、長すぎるよ。もう何話分この家にいるの? 予定では1話で終わらせるはずだったのに、こんなにもばして……。飽きてるよ、多分。

いやいや、やっとたどり著いたよ。聞きたい話しにたどり著いた。メタいのとかじゃなくて、本當に、やっと。

「カナデさん? 大丈夫かしら」

「だ、大丈夫です」

「そう? なんか一人だけ時間の流れが違うように見えたから」

図星ッ。いや、いやいや。ここで々反応しても仕方ないし、というか都合が悪いし次に進むとしよう、そうしよう。

「それよりも聞かせてもらえますか?」

「ええいいわよ。小さい頃はやんちゃだったって話しまではしたのよね。それならちょうどいいわ。

アシュレイはそれなりに厳しく育てたつもりなの。一人娘だものね、ついね。だけどアシュレイには手をやいた。というのも話したわね。

手をやいただけはあって、まっすぐに育ってくれたわ。禮儀作法も農家の娘だからなんて理由で手も抜かなかったから、どこに出しても恥ずかしくはなかった。……やんちゃっぷりはアレだけど、そこはね」

「アシュレイ様は綺麗だったのでそうですね」

「ふふ、ありがとう。リディアさんも綺麗よ。

自慢になってしまうだけど、たしかにアシュレイは人さんに育ったの。徳よね。たしかに中は大事だけど、外見が綺麗で損することなんてないもの」

ウンウン。あ、思わず同意してしまった。しかしそれが真理だろう。人、ではないにしろ俺もかわいいからよくわかるのだ。

地球にいた頃、俺はまあよく友達と出かけた。男子と行けばそいつらが職質されるというアクシデントも起きたし、子と行けば一人男子トイレにっていくのを何も知らない周囲に不審がられたけども。

……あれ? これは損じゃね。いや、けど俺があまりにも特殊だからというだけだろう、うん。

「だからアシュレイには街に育てた野菜を運ばせていたのね。馬車で行けば多時間はかかるけど、一人で行けない距離じゃなかったからね。

それで案の定、人なアシュレイが持ってくと売れたよ、凄く。やっぱり若い娘の威力ね」

も蓋ねぇ……。自分の娘を宣伝に使うとか。いや、正しいけどね。しかし、目の前にある笑顔でそう明けけなこと言われると、反応にも困るものだ。

「ただ売りに行かせたってわけじゃないのよ? 

ここはこんなところだしね、お隣さんは凄く遠いし、若い男もない。アシュレイの嫁ぎ先が無かったの。

それに比べて街なら、それこそ人で溢れてるし、アシュレイの好きな人が見つかると思ってね。あわよくば金持ちに嫁いで楽してしいとは思ったけどね。

そうしたらまさかの領主様よ。當時はまだその座に著いてなかったけど、次期領主って言われてたからねぇ。

びっくりしたものよ」

「ご結婚には反対しなかったんですか?」

リディアさんが訊いた。

「反応というか、恐れ慄いたわ……。だって領主様、貴族様よ。

店持ちの方にでも嫁いでくれれば運がいいくらいのつもりだったのに、一つ二つ上の階層の人よ。うちの娘でいいのかしらとか、申し訳ないわとか思ったもの」

およ? 意外と謙虛だ。……とか思ってしまった。最初とイメージがだいぶ変わってしまったなぁ。たった十分くらい前のことなのに。

しかし、改めて聞くと凄いなアシュレイさん。どうしたら街で野菜を売っていて次期領主に嫁げるんだ。絵で見たアシュレイさんは相當綺麗描かれていたけど、あれって誇張というより、それですらなお足りないんじゃないのか。

多くの人がごった返す街の、とびきり人が行きう市場で目に留まる綺麗さ。それだけじゃない。雰囲気とか存在もあったのだろう。

砂漠で針を見つけるじゃないけど、人の森で自分という一の花を見つけてもらうようなものだろう。

まさに領主様とやらはそれをしたのだろうけど。だからこうなっているのだけど。

「けどアシュレイの連れてきた領主様は熱心でね。それはもう、頼みこまれたわ。機に頭をりつけてね。

……あの時は、怖かったわ。本當に」

階級の差というのは、思ったよりも強いらしい。アレンが當たり前のようにフィアナを口説いていたから、そこまで意識したことがなかったが。

というかアレンの奴、協會職員もだけど街で結構口説いてたけど。あいつ、そこら辺の意識は薄いのか?

「それでも、嬉しかったわ」

ぽつりとエイダさんは言った。

「だって自慢の娘がとびきりの笑顔でこの人と結婚します! って言ったんだもの。二人とも顔を赤くしてたけどね」

「夫婦仲はよかったのですか?」

「よかったはずよ。愚癡を聞いてーって來はしたけど、半分は惚気だったもの。それに、領主様は今でもここに足を運んでくれるのよ」

「そうなんですか」

「ええ。忙しいから年に一回だけどね」

どうやら夫婦の間に問題があったわけでもなさそうだ。

「だとしたら何を相談されたんですか? てっきりわたしはそこに問題があると思っていたんですが」

「よくあることだものね。けど、あの子達は違ったわ。本當にし合っていたしね。

それにアレンが産まれてからは本當に幸せそうだったわ。けど、周りがそれを快く思うやかは別問題だったの」

周りが、か。やっぱりこの世界でもそんなくだらないけど重要な問題があるのな。人が二人以上いれば自然と起こるもんか、嫉妬てやつは。

「貴族達ですね。平民上がりのアシュレイさんに嫉妬……、違いますね。嫌っていたんでしょう」

「そうよ。その通り。私達平民でもそういういざこざは起こるものだもの。プライドの高い貴族が、分の下のアシュレイが嫁ぐ事を許すはずがなかったの」

「……」

「表面上では祝福もされていたわ。けど、水面下ではアシュレイをどう殺そうかなんて考えている貴族もいたっていう話よ。領主と政略結婚をしたい貴族は沢山いたものね」

「それは、そうでしょうね……」

「だけだまあそれを承知でアシュレイは嫁いだの。けど、覚悟をしていても辛いものは辛かったのね」

それが相談の容か。よくある話ってやつだけど、テンプレだけど、その時はどうなったのか。

「よく相談しに來ていたわ。嫌味が〜とか、嫌がらせが〜とかね」

「それがどうわたし達の知るアシュレイさんに繋がるんですか?」

「相談しに來て、もうやだとか呟くことはなかったわ。その代わりに、見返してやりたいとかばっかり言ってたわ」

あー……。そう來たか。負けず嫌いだったのね。納得。

「だから変わりたいって言ってね。理想のを演じた、のかしらね。どう変わったのかはあなた達の方が知っていると思うから。

けど間違いなく言えるのは、あの子がアレンの為に変わりた思ったことね」

「なんでですか?」

分かりきってるけど、な。ここは形式的に。

「アレンが産まれた時に言い出したのよ」

そう言ったエイダさんの顔は誇らしげだった。

***

帰り道も酔った。

商人が帰る時間までたっぷりと話した両親(あの後、途中からランドルさんも參加した)はすっきりとした顔をしていて、ありがとうと逆に言われてしまった。

ありがとうを言いたいのはこっちの方だし、本當に有益な時間だった。まあ俺よりもリディアさんの方が食い気味だったけど。なんとか自制心を保ったといった合だ。

街に著いたら商人にはお禮を言い下ろしてもらい、酔いがさめるまでしばらく近場で休んだ。

空はすっかりオレンジで、星もちらほらと。そんな時間になってしまったが、慣れない馬車の酷い揺れにも疲れたけど、俺には寄りたいところが出來ていた。

「リディアさん、し寄りたいところがあるんですけど大丈夫ですか?」

「いいけど。調は大丈夫なの?」

「はい」

「ならいいよ。もし辛くなった言ってね、おんぶするから。むしろ推奨だよ」

「さ、行きましょう」

「あーん酷いよカナデちゃん」

なんていうやりとりをしてやって來ました、メトカーフ家屋敷。まあ門番さんもいて見つかっても仕方ないので、やや回って橫にいる。屋敷橫には雑木林があって、高い壁を乗り越えることは出來ないけど、まあしたら戻って來られないけど、覗く事くらい出來る。

「どうしたのカナデちゃん、こんなところで」

「いえ。明日に向けた覚悟といいますか、やってやるぞって、意気込みにきたんです」

「そうなんだ」

まあ、なんとなく來てしまったんだけど。俺も張してるのかな。

今までは自分本位で勝手気ままに男子子ともに萌えさせてきた。それが俺が持った才能だって思っていたし、好きだった。

けど今回は、はじめはそうだったけど今となってはそうじゃなくて、アレンという人間の幹にれようとしてる。人ひとりのこれからがかかっていると、思ってしまった。

「ま、やることは変わんないな」

俺がひとりぽつりと零すと、それに反応したのかリディアさんが小さく鋭い聲を出した。

「カナデちゃん、あれっ」

どうやらリディアさんは俺に反応したわけじゃなくて、俺がぼんやり見ていた庭を見て言ったみたいだった。

炎が舞った。うねり捻り意図した形を持って。

理法則とか化學とか科學とかそんなじのやつを無視した、所謂超常現象ってやつだった。というか、普通に魔法だった。

あれだよな魔法。うん、俺も魔法ってああいうやつだと思ってたもん。……すげぇ! え、なにあれ。てかアレンがかっこよく見えるんですけど。

「あれ、多分エイダさんが言っていた魔法だね」

から覚めた。

アレンは見たこともない真剣な顔つきで、自分の炎に照らされながら魔法を使っていた。離れていてもそれがわかるほどにだ。

アレンがる炎に不覚にも見惚れてしまい、しばらく俺とリディアさんは一言も喋らなかった。夕焼けが夜闇に変わっても続くそれを黙って見続けた。

やがてというかようやく腹も空くという頃にエルバードさんがやってきてやっと終わった。どうやらいつもの事らしく、エルバードさんは特に咎めることは言っていなかった。

屋敷に戻るアレン。その背に向かって俺は言った。いや、これは自分に向けたものだ。

「明日は萌えさせてやるよ」

さてさっさと帰って寢よ。夜更かしはの大敵。このすべすべを守らねば。

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