《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》15話 カウンターが決まりました
デート、とはいえこの世界ではやる事などない。いや、これもし違うか。正確に言うならば、やる事が限られている。
 
地球では、遊園地とか水族館とかショッピングモールとか、遊ぶ場所ならたくさんある。スマホのアプリで遊ぶとか、インスタ映えとかも。生活が安定しているので娯楽が発達し、遊ぼうとすれば限りがないのだ。
しかし、事はこの世界だ。
生活は安定しているが娯楽は発達していない。どこかで遊ぼうにも街の外は結界の範囲外で、俺みたいに戦えなくては魔に襲われたらひとたまりもない。というか命賭けのデートとかヤダ。
つまりごく自然とやるとこは限られてくるのだ。例えばこの世界でも出來ることといえば、そう、ショッピングとか。
お店自はたくさんある。この街は特に栄えているらしいから、一日で回るのも無理だろう。それくらいには楽しめる場所があるはずだ。それにの子の買いは長いからな、俺も長いとして、保たせてみせる。
「先程はありがとうございました」
あの観衆の中でのアレンの堂々発言の後、俺たちはナンパくんを置いてけぼりに街を歩いていた。
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すれ違う人達は俺ーー私を見て、アレンの隣に並んで親しげに歩く私を見て驚いているようでした。それが何に対する驚きなのかは預かり知らないとろこではありましたが。
それはそうと、もう一つ気になるというか、どうしてと慣れないのですが、人が行きっているのにまるで人とぶつかりません。いやぶつからない事はあるかもしれませんが、それは軽い表現というだけで実際には、私とアレンの周りには一定の距離が置かれているのです。
そう、不可侵領域。なんて廚二くさいことを言っている場合ではなくて、居心地が悪いです。いえ、別に周囲の方々が睨んでくるとかしているわけではなくて、慣れの問題といいますか、申し訳ないといいますか。
だって、さっきから私達の後ろにはエルバードさんがいて、それに護衛の人も數人いて、常に厳戒制を敷いているのです。端的にいうならば、私達に周囲を近づかせていないと言うべきでしょうけど。
私は守られるような人間では……ない事はないですけど、メトカーフ家の護衛には私を守る意味はないはず。と、思っていたのですが、デートが始まってまずされたのは護衛の人からの自己紹介だった。
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誰もが練の者といった風貌(怖いです……)で、その中でも責任者を務めるという人が言ってきたのです。
「アシュレイ様を思わすその容姿と格。重ねる事は失禮と存じますが、それでもアシュレイ様を守るようだと思います。今度こそは、守ります」
ここでもアシュレイさん効果(私命名の便利効果だ。特にメトカーフ家関係者には特攻を有します)が働き、何故か守ると誓われてしまったわけでした。
そんな経緯があり、アレンのついでではなく私も護衛対象とされたのでして、どんな些細も許さないとばかりに睨みを利かせてくれているので、不可侵領域の完でした。
隣を歩くアレンに顔を向け謝をした。するとアレンもこちらを向き、しかし大した事はないと言いました。むしろ、
「當たり前の事だ。あのような輩にフィアナをとられてたまるものか。セレントの男は野蠻ではならんのだ」
ははっ、そいつはアレン、君に言いたい言葉だよ? 普段からお前はんなを口説いて回っているじゃないか。
いかんいかん、口調戻ってしまった。
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あなたにこそ言いたい言葉なのですが……、それを表に出す私ではありません。この狀況を使わない手はないのです。
弱さを見せ、庇護を掻き立てます。
「し怖かったので、アレンさんが來てくれて嬉しかったです」
「そうか」
嬉しそうです。だからでしょうか、それを誤魔化すようにアレンは口を開きました。
「しかしフィアナも無防備が過ぎるのではないか? 君のように綺麗な者がいれば、それはあのような輩が言い寄るに決まっている」
「今までそのように言われた事がなかったので」
「そうなのか? それなら仕方ないが、第一になぜ俺より早くあの場所にいたのだ。レディを待たせるなど、セレントの男にあるまじき愚行だ」
「それは、ごめんなさい。でもアレンさんとのデ、デートが楽しみだったので……。つい」
「っ! そうか。そうだったか。なら致し方ない」
はい、カウンターが決まりました。
しかし、今日の私は絶好調ですね。今のところ、一言一言で萌えさせてしまいます。しハイペースが過ぎます。まだデートは始まったばかりですし、緩急をつけなくていけません。
「ふふ、ありがとうございます」
「んぐ」
バツの悪い顔をするアレン。思いきって話題を変えてきた。
「それよりもだ。その服はどうしたのだ? 見たこともない服だが」
「これですか? 私がアレンジしたワンピースです」
「フィアナがか? 見たこともないが、しかし不思議だ。かわいらしく見える」
「む。かわいらしくですか?」
「いや、もちろんかわいいのだがな。斬新ななデザインだったから驚いたんだ」
「よかった。アレンさんに見せたかったんです」
『あなたの為に』を重ねる。男は結構これに弱かったりします。
メトカーフの屋敷を訪れた時も特製のフルーツパイを持參して、『あなたの為に』を布石しました。
それも前回は難易度が低かったですが、今回はそこそこ難易度が高め。それはそうです。服を作るなんてそうそう出來ることじゃないし(一般的なイメージだけど)、手間暇が違う。重みが違うのです。
そうした見えないものを理解してるかは別として、そう思えなくてもじている場合がほとんどで、知らぬまに心に蓄積する。
これが後々効いてきます。
「そうか。しかし本當に見事だ」
「そこまで褒められると、照れてしまいます」
本當に、予想外にウケがいいですね。これはもしかして、私の異世界チート生活がスタートしてしまうのではないでしょうか。
戦闘系チートは確かにもらえなかったですし、私では到底手にれることが出來そうにありません。それに私か弱いですから、自分で戦うとかに合っていません。
ですが、思えばですが、思わなくてもなのですが、わかりきっていたのですが、まどろっこしくなっていますが、端的に言って、普通に知識系チートをすればいいのではないでしょうか。
いえ、私は賢者と呼ばれそうな畫期的な知識はありません。が、幸いというか、當たり前というか、私が努力しただけですが、子スキルに関して言えば相當なものです。
化粧、それに化粧品全般に関する豆知識。
料理スキル、とそれらに付隨する諸々の技や知識。
裁、これは言わずかもですが。
會話、掌握、禮儀作法、その他諸々諸々。
どんな姿も演じるべく、どんな相手も萌えさせるべく、加減するべく、自分磨きに余談のなかった私は、この世界で子スキルに関するものだけなら、負けはしない筈です。
という事はです。
日本の、地球の長き歴史において研鑽された技を一部とはいえそこそこ極めた私は、十分に知識チートをすることが出來るはずです。
つまり、これは働かなくてもお金を稼ぐ事が出來るのではないでしょうか? 
アレンに気がつかされるとは……。そして、自分でまた気がついてしまいました。
忘れていましたが、多分皆さんも忘れていたと思うのですが、私がこの世界に來た理由。そういえば他の転生者と競うためという理由でした。
すっかり忘れていました。自分に都合の悪い事は忘れるタチですから。
ですが思い出してしまうと、つまりは可能を考慮してしまうのです。
例えば私が地球の知識を使って何かをしてしまえば、それはかなりの報として拡散するわけで、自分の存在を知られてしまう事に繋がってしまうわけです。
文明を利用してしまえば、文明に足跡が殘るのは自明の理ですから。
それならせめて最低限の準備が出來るまでは、表立って目立つ事をしないほうがいいのでしょう。
私の中で知識系チートによるウハウハ生活が崩れさった瞬間でした。
「ん? どうかしたのかフィアナ」
「へ?  いえ。何もありません」
「そうか? しぼんやりとしていたからな」
「すいません。し考え事をしてしまいました。……あ、あそこのアクセサリーかわいい」
危ないです。今はアレンとのデートの時間でした。お金の匂いがして、つい沒頭してしまいました。私の悪い癖ですね。利があると夢中になってしまいます。
「ならし寄るか。時間もまだまだあるのだからな」
「はい」
誤魔化すために言ったセリフではありましたが、しかしこれが意外と良いが置いてあるのです。
寶石、なんては高価でこんな市民街にはもちろんなく、なんてことがなく、寶石付きのアクセサリーが沢山ありました。いや、この場合寶石ではなく、魔石と言った方がいいなかもしれませんが。
魔石は見た目に寶石となんら遜ありません。しかし、その名前から想像出來るとは思いますが魔力を含んでおり、魔道の核に使われたりします。
魔石は魔や迷宮から採集する事が出來、大迷宮のあるこの街ではまさに取り放題というわけです。
このアクセサリー屋さんもアクセサリーとしてはいますが、軽い魔法的効果も施されており、細かく言えば魔道の一種になるのだそうです。
ですがそこはアクセサリーですから機能よりデザインが重視されており、魔法的効果はついでにという合です。
「これはアレン様、このような店に足を運ぶとは何事でございましょうか」
「いや、こちらのが気になったらしくてな。俺たちには構うな。念のために言うが、に取りろうとは思うなよ」
「わかりました。では何かありましたら聲をおかけくださいませ」
店主はそさくさくと奧に戻っていきました。やはり分不相応の店なのでしょう、アレンにとっては。
裝は綺麗なものでした。それはアクセサリーを扱う店なのですからそう見せるのは當たりまえなのでしょうが、それだけではなくセンスのあると言えるものでした。
並ぶ商品も馬鹿にできない出來栄えのものばかりで、久しぶりに私の中の乙心が燃えていました。
そして一通り狹い店を見て終わったところで、
「ほう。なかなかいいじゃないか。店主」
早速呼ばれてしまいました。
しかしこのアレンは明らかに褒めようとしているようです。意外といえば意外なのですが、それよりもビクビクしている店主の男の方が気になります。
「な、何かございましたでしょうか」
「店主。この店に並ぶ商品はどこの工房のものだ?」
「こ、この店の裏で私が作っているものです」
それは凄いです。工房と店を両立させているのですね。店員はみたところいないみたいですし本當にただの個人商店らしいです。
「ほう。オーダーメイドは可能なのか?」
「え? 」
「可能なのかと訊いている」
「は、はい! 種類を決めていただいて、あとはいくつかリクエストをいただいています。し値段は張る事になりますが」
「ならば今度屋敷に招待しよう。オーダーメイドを頼みたい」
「喜んで伺わせていただきますっ」
思わぬ褒め言葉だったからでしょうか、店主はし反応が遅れたり食い気味だったりと、緒不安定な様子です。
そんな反応にアレンも慣れているからなのか気にしてはおらず、私のほうを見ています。
「それと店主。これと……これをくれ」
これとこれ。それは私が見ていて他とは異なる反応をしたアクセサリーでした。さすがセレントの音は何々と言うだけはあります。私がわざとわかり辛く出した信號を、見逃してはいませんでした。
「わかりました。付けて行かれますか? それとも持ち帰りですか?」
「どうするフィアナ?」
「そんなに私お金持っていませんよ」
「気にするな。ここは俺が金を持とう」
「そんな……。いえ、わかりました。髪飾りは付けていきます。ネックレスは持ち帰ります」
「わかりました。々お待ちくださいませ」
そう言って店主は、先程とは違いを張って店奧へと消えました。
それを見屆けたアレンは口を開いた。
「斷られるかと思ったのだがな」
「確かに遠慮させていただこうとはしました。ですが、折角頂いたご好意ですので、それも不躾だと思いました」
「本當にいいだな、フィアナ」
お褒めのお言葉ありがとうございます。
しかしこれ、地球でやっていたら、一般人相手にしていたら嫌なというじです。
今のご時世、も権利を主張して働きその収は男にも負けていません。ですから、デートの時にが一方的に奢ってもらうというのは古いと思うのです。嫌なです。
ですが相手はアレン、ご貴族様です。ならお金へたっぷりとあるはずですし、プレゼントを贈ったという自尊心を満たす事が出來るのでこの場合はこれが正解でしょう。
アレン、流石ですね。これがもし私が良いと思ったものではなくてただ自分が気にったものだっのなら、なんて自己満なのでしょうと辟易しているところでした。表には出しませんが。
プレゼントはただ贈ればいいというものではないのです。贈っておけば大丈夫なんて考え方は、男問わずありえないものなのです。
その點アレンは流石セレント紳士といったところでしょうか?
「お待たせいたしました。こちらにネックレスは収めております。髪飾りはこちらです」
「ありがとうございます」
私は戻って來た店主から髪飾りをけ取り、早速付けます。ですが、
「あの、し視線を外していただいてもいいですか?」
「どうしたフィアナ?」
「いえ。し恥ずかしいですし、それに、付けた後に見ていただきたいですので」
「そうか。なら俺は外にいよう。店主、貴様も奧に戻れ」
「はい」
「では邪魔したな」
そう言って店を出て行くアレンはネックレスのった袋を手に取っていきました。自然とするのですね。
さて、私は今背中まである薄い金髪をそのままにしています。特に結うことはせずに、そのままにですから、簡単に付けることは出來ます。
髪飾り髪飾りと言いましたが、これは多分バレッタでしょうか。異世界ですので似たものになるのでしょうが、おそらく使い方は間違っていないはずです。
私は小さな赤と青の魔石があしらわれたバレッタを手に取ります。難しいのでは時間もかかりますし、ここは簡単なものにします。めんどくさいですし。
ハーフアップにした私は自分では出來栄えを確認する事が出來ませんが、おそらく大丈夫でしょう。地球でもよくした髪型ですから。本當は他にもアレンジがあるのですが、今日はシンプルな型です。
「ありがとうございました」
私は一言奧にいるであろう店主にお禮をしてから、店を出ました。するとアレンを見る人だかりが出來ており、アレンの待つ店から出て來たぞっと私に注目が集まりました。
しかし、そんなことアレンが気にするはずもなく、私に聲をかけてきました。
「おお。よく似合っているな」
「ありがとうございます」
「やはり映えるな。次に行くか」
「はい」
私とアレンが移した為に、人だかりは解散することとなりました。
まだまだデートは始まったばかりです。
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