《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》19話 モブ子B
モブ子Bの話はどんな話になるのでしょうか。モブ子Aがあれだけハプニングに富んだ話でしたので、し期待してしまいます。
「私の話をする前に、私の分を明かす必要がありますわ。私は名門オースティン家の次です。屋敷は高級街の西地區に構えています」
ついに、名前を出さなければ不自然になるところまで來てしまいましたか。いえ、名前訊くのが面倒だっただけですよ? これ以上使い捨てキャラの名前を出して仕方がないですし。
まあ今更名前を知ったところでどうということはありません。変わらず、今まで通り、著を以って(あるいは以たずに)、モブ子Bと呼びましょう! 覚えやすいことこの上ないです。
モブ子ズなんて敬稱で彼たちを呼んでいますが(もちろん中には留めました)、言うなれば彼達はよくファンタジーに出てくる序盤のかませ犬キャラです。俗に言うと、三馬鹿なるものでしょう。
もっとも、彼たちはそこまで付き合いのあるわけではないというより、今日が初対面のようですが。
どドンッ。そんな効果音が可視化、文字となってモブ子Bの背後に見えます。それくらい自信があるようで、のものを強調するかのようにやや反り返っています。
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フィアナとなった私よりも実りはいいです。私のの大きさはアレンの理想ですからきにすることはありません。長することも、増減することもおそらくはないでしょう。私のせいではないので気にすることはありません。
しかし、何故でしょうか? どうにも、のにフツフツと煮えたぎる何かがあるのは。いえ、わかりきっています。有りに言いましょう。
嫉妬っ。
そう嫉妬しています。あのたわわなおに。
私だって、私だって理想がそうならばきっとボッキュボンは軽いんですよ。
今回はアレンの理想が清楚で、アシュレイさんをベースとしていて、バランスのいいスタイルだからこうなっているだけなんですよ。
しかし、名門の育ちということであれでしょうか、食べるものが違うのでしょうか。
だって、モブ子Aは長は普通ですが悲しくも慎ましやかなです。モブ子Cは長が低いですし、ここでまさかロリ巨かと思わされるかもしれませんが普通です。
その點モブ子Bは長もよくも満ですから、これは育ち盛りに食べるものが違うせいかもしれません。
もしくはの差? 伝子的な要因かもしれません。
まあ私もになる機會かあるなら、一度くらいはこのに重みをじたいものです。ですが、そうはいかなさそうな人もいます。
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もうみのなさそうなモブ子Aには合唱を、まだ一縷のみがありそうなモブ子Cには応援を、それぞれ心の中でしました。
「本當にあんたがあのオースティン家の次? 私が聞いたのは、おしとやかで慎ましいって話なんだけど」
モブ子Aが言いました。
「どういう意味ですの?」
「さっき普通に大きな聲でってきたじゃない。どこがおしとやかよ」
「先程のは私も恥ずかしい行ですわ。しかし、言うべき時に言えないのはオースティン家に連なる者としてもっと恥ずべきこと。悔いはありませんわ」
「まあそれはいいわ。けど、どこが慎ましやかなのよどこが」
そう言って、モブ子Cを挾んで座るモブ子Bに向けていた視線を、あからさまに、というか恨めしそうに下げました。
ああ、やっぱり気にしていたんですね。ですものね。私が言うのもあれですが、の価値はでは決まりません。それに貧にも価値はありますよ。
モブ子Aの視線の変化にいち早く気がついたのは、視線を向けられたモブ子Bではなくモブ子Cでした。
あっ、と小さく聲を上げると顔を赤くしました。初心です。そして自分のものを見下ろしたのか、落膽のため息が小さく聞こえました。
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大丈夫! まだまだみはあります!
私がモブ子Cの微笑ましい反応にちょっと意識を向けていると、ようやくモブ子Bも気がつきまきた。そして、恥なのか怒りなのか、顔をみるみる赤くしていきます。
「ど、どこを見て言ってますの!?」
にを抱きながらモブ子Bはびました。しかしモブ子Bさん、そのポーズだと余計にを強調することになっています。
「どこって、その慎ましやかさのカケラもないよ」
「慎ましいというのはそこではありませんわっ。私の行や格のことですのっ!」
「自分で言う?」
「あなたが変な事をいうからですわ!」
この二人、案外相はいいのではないでしょうか。話が噛み合っていますし。テンションの差があることは目を瞑る方がいいでしょう。
「で、結局本當にオースティン家の次なの?」
ある程度落ち著き、冷靜になったモブ子Aはアレンに問いました。
「本當だ。オースティン家とは流もある」
「ええ、そうですの。アレン様とはその際に初めてお會いしました。これで納得ですの?」
「そうね。オースティン家の次っていうのは、まあ認めてあげるわ」
「何故そんなに上から目線ですの!?」
やはり相はいいようです。それはなにより、仲良きことに変わりはありません。
モブ子Bもこれ以上モブ子Aと言い爭うことに不さをじたのか、こほんっと息をつくと本題の続きを話し始めました。
「アレン様と初めてお會いしたのは三年前。メトカーフ家主催のセレント外の有力者を招いたパーティーでお會いしましの」
三年前。モブ子Aのアレンと付き合いが長い歴が、二人目にしてあっさりと大幅更新されました。これにはモブ子Aも反応を示しました。ぴくっとなったモブ子Aは平靜を裝いましたが、若干の揺が見られます。
もしかして半年という記録が破られることはないと思っていたのでしょうか? それはなんという楽観的な考えなのでしょう。半年なんて、普通に更新されるに決まっているでしょう。
モブ子Bはそんなモブ子Aの反応に気がつかなかったのか、それともあえてそうしたのか、話を続けました。
「それまでも何回もパーティーは催されていたようですが、私は參加していませんでしたの。ですから、アレン様とお會いしたのは間違いなくあの時なのですわ」
「あの時って何よ」
「ふふふ、ですわ」
「なんですって!?」
「というのは冗談でして」
「ッ!」
してやったりという顔をモブ子Bが浮かべました。その表にモブ子Aは肩を震わせています。どうやら、モブ子Bは意外執念深いようでした。
怒り心頭というモブ子Aはさておきと、モブ子Bは場を整えて話を続けた。まったく整えられてはいませんでしたが。
「私もきちんと話しますわ。本當ならアレン様とだけのものにしておきたいですが、今はそうは言っておられませんので」
「そうですか」
「はい。
私がアレン様と出會ったのはメトカーフ家屋敷のパーティー會場のベランダですの。私人混みは苦手でして、新鮮な空気をと思いベランダに出ていましたの。
私があまりパーティーに參加しなかったのも、それが理由ですわね」
名門育ちなのにパーティーが苦手だとはなかなか面白い方です。そういう方は、もっと自らのを見せつけたいというでもあるのかと思っていました。
偏見はよくありませんね。
「最初、アレン様がいらっしゃったことに私は気がつかなかったのですわ。
雲もなくて、星もよく見える夜でしたの。私は星々をぼんやりと眺めていましたから。
お恥ずかしい限りですわ」
「……」
アレンは何も反応しません。しかしモブ子Bはそのまま続けます。
「ぼんやりと星を眺めていると、不意に聲をかけられたのですわ。それがアレン様でした。
『ここで何をしていっらっしゃるのですか?』と言われたアレン様は、右手に私の分の飲みもお持ちしてくださりましたの。
私は『星を眺めております』と答えて、飲みをけ取りました。その時は溫かい飲みをわざわざ準備してくださったようで、激しましたわ」
アレン、所構わず紳士っぷりを発揮していますね。もっとも、それが裏返ってたらしっぷりにも繋がっているようですが。
「さらにアレン様こんなことまで言ってくださったのです。
『月が綺麗ですね』と」
まさかの夏目漱石!? なんでですか!
ここに異世界ですよね。夏目漱石の有名なエピソードからくる言葉(聞いた話では噓らしいですが)が、ここ異世界で何故使われているのですか。
いえ、落ち著きなさい私。大したことではないじゃないですか。そういった言葉があっても不思議ではありません。そうです、不思議ではないのです。
それに同じような意味で使われているかはわからないじゃないですか。
「それがどうしたのよ?」
モブ子Aもわかっていませんでした。もしかしたらそこまで有名なものではないのかもしれません。
「知りませんの?」
「知らないから聞いてるんじゃない」
「何故開き直っていらんですの……」
呆れるモブ子B。……こちらに飛び火しませんように。聡明な部分が揺らいでしまいます。
私が心配に息を呑み潛めていると、そんな狀況を助けてくれたのは意外にもモブ子Cでした。
「あの、名もなき詩人のエピソードですよね……」
たどたどしくもモブ子Cは言った。
「え、ええそうですわ。あなたはご存知でして?」
「はい。今でこそ紙は普及していますが、それもつい最近です。し昔、100年位前はまだ紙は貴重だったと聞きます。」
「そうですわ。そんな時代、人々に唄って語を聞かせる、詩人達は娯楽として重寶されていましたの。
そして數多くの詩人がいる中で特に人気だったのが『名もなき詩人』と呼ばれる一人の詩人です。その方は、自分で作られた語のみを語ったそうです。獨特ながら魅力ある語は人々を虜にしていたとか。
それらの語も今は本で纏められ伝えられているのです」
またまた線です。ですが個人的にもし気になるところではありますから、聞くのも吝かではありません。もっとも、聞きたくなくともここまできてしまっては、それを止めるのも無駄というものです。
「『名もなき詩人』には何人かの弟子がいたそうですわ。弟子達も著名な詩人で、今世にも多くの作品を殘しています。
その作品の中にあるやりとりがあるのですが、それは『名もなき詩人』と弟子達の日常を多腳してはいるものもほぼ正確に記したものなのです。
『師匠と私達』にある『師匠と修行』にそれはあるのですが。あなた知ってまして?」
モブ子Cに訊きました。モブ子Cは答えます。
「はい。弟子の一人コーディが『師匠ならば如何様にしてをお褒めになるのでしょう?』と質問するんです。
それに名もなき詩人はこう答えたそうです。『月が綺麗ですね』と。
これに銘をけた弟子は後世に殘すと決めたそうです。この弟子が『師匠と私達』の作者ですね」
もう、夏目漱石まんまのエピソードなのでは? 漱石さんまさかの異世界転生を果たしていた? だとしたらものすごい発見です。という問題です。
「素晴らしいですわ。そこの無知で野蠻な方と違い、あなたは博學なようですわね」
「い、いえ。よく読んで聞かせるだけで、博學というわけではありません」
「ですがし足りませんね。あえて言うなら、月がの象徴になったのもそれからだと聞きますわ。月の神がを司る神なのはそういった経緯があるらしいのですわ」
「は、初めて知りました」
「今度屋敷にいらっしゃってくださいな。あなたとなら楽しくお話が出來そうですわ」
あっという間に仲良くなりましたこの二人。……あの、なくとも今は敵に近い相手だということを忘れていないのでしょうか?  もしかしたらモブ子Bはモブ子Cをすでに下に見ているのかもしれません。勝っていると。
いえ。これは私の邪推ですね。私の心は汚れていますから、々と。今ばかりはそれと拭い去らなければいけませんが。
そうです。彼達は互いの好きが相まって仲良くなっているのです。それだけです。そこに変な思はありません。はい。しい友です。
「あんたの皮は今は流すけど。それで、そこからは?」
「アレン様にお訊きしたんですわ。『名もなき詩人』がお好きなのですか、と。するとアレン様は頷いたのですわ。
そのあとは互いに『名もなき詩人』の好きな作品や、それ以外の詩人や作家についても話し合いましたの。
初めてでしたわ。あそこまで文學について話し合えた男は。今の男が文學に攜わることはほとんどありませんもの」
「俺は昔から読んでいたからな。文學で先人に學ぶことは大切だ」
「そうですわ」
あら意外。アレンが本を読むなんて驚きました。
それはそうと今更ながら、この世界にも本があったのですね。異世界ではよく紙がないということがありますから、これは思わぬ収穫でした。
まあ思えば、本屋があった気もします。裝飾品類ばかり見ていて目にとまらなかったのかもしれません。いけないですね。
「それからアレン様とはお話する機會が増えまして。アレン様はパーティーがあればだいたい參加していますから、私もそれには出席するようにしましたの」
「……」
あ、今アレンが「だからか」みたいな顔をしました。気がついてなかったんですね。
「私がアレン様に口説かれたのは明白。さらに言えば友好にさせていただいた期間も長いですわ」
すいません。アレン、あなたのアピールに今気がつきましたよ。まったく意味がありませんでしたよ。
ですから、アレンがする反論というか、ここで出す言葉もだいたい予想がつきます。
「俺は口説いていない。名もなき詩人の言葉はそもそもを綺麗だと褒めるだけだろう。由來は知らずとも、多育ちがいい者は使う」
「確かに、そうですわね……」
「それに、俺はパーティー以外でお前と會ったことがないのだが……」
「っ!」
「そして俺は、お前が俺にアピールしていたことに今気がついた」
「……」
ノックアウトですね。ガードを崩しアッパーをくらわせて、渾のストレートで毆ったようなじです。モブ子B、もはや蟲の息といったところです。
これ以上は流石にオーバーキルですね。
「あとはーー」
「アレンさん、そこまでです。を追い込むのはいい趣味とは言えません」
「むっ、そうだな。失禮したが、そういうことだ」
「はいぃ……」
あ、遠い目をしています。三段構えで撃たれたモブ子Bから、先ほどのように高飛車といった面影は消えて無くなりました。虛ろな目です。これは、モブ子Aよりも酷いのではありませか?
流石にかわいそうですし、フォローをれようとした矢先、思ってもいない人が助けました。
「結局あんたの勘違いだったじゃない」
失禮。モブ子Aはモブ子Bの傷口に塩を塗りたくったようです。なんならハバネロソースをぶっかけたのかも。
そんな激痛にモブ子Bが黙っているはずありません。
「黙りなさいっ。あなただって同じではありませんかっ!」
「ぐぬぬ。でも、あんたの方がよっぽどの重癥だったわよ、ここが」
「あなたの品のない頭の出來に比べたらましですわ! あなたの方こそここに問題があるこではなくて!?」
「知ってますー。でも私はそこを使うことあまりないから大丈夫ですー。あんたは問題なんじゃないの?」
「殘念ですこと。それ以上の発展がないなんて」
「この、くるくる金髪牛!」
「うるさい、殘念まな板!」
醜い爭いが始まりましたとさ。モブ子Aの後ろには虎ーーのように振る舞う貓。モブ子Bの後ろには竜ーーみたく口を開く子蛇が。それぞれ見えます。
あらやだ、かわいらしい戦いです。
ですがそれもそうでしょう。結果的に喧嘩にはなってしまいましたが、モブ子Aが意図したとは思いませんが、モブ子Bは復活したのですから。いたたまれない雰囲気も散りました。
しかし。
ここまで二人の話を聞いて、私がじていたことが現実味を帯びてきました。
モブ子Aは実行力、モブ子Bは聡明。両者ともにそうとれるエピソードを語ってくれました。まあ、二人ともその結末は殘念ポンコツのようものでしたが。
あとは、モブ子Cのお話だけを聞きたいのですが。
「お菓子とお茶持ってきたわよ」
「誰も頼んでないが」
「店を占領しているのに酷い言い草ね。ほら食べて食べて。お金はアレン持ちだから気にしなくていいわよ」
「なっ!? かってに何をーー」
「それくらいの甲斐、あるわよね?」
先ほどとは違うケーキとお茶を持って運んできてくれたハルさんは、私の方をちらっと見ました。それにアレンはぐっと出かけた言葉をのみ込んだようです。
これは、ハルさんもなかなかの悪っぷりですね。しかもなかなかの商売魂。
ここまで斷りにくい狀況を作っておいて、そこから半強制的に支払いをさせるとは。貴族相手にものすごいです。
これに、喧嘩をしていた二人が反応を示しました。ぴたっと稚な言い爭いを止め、ハルさんと方を見たのです。
「あ、あんたアレンの何よ。隨分仲が良さげだけど」
「そうですわ。親しいようですが」
それは、そうなりますよね。私だってそうなりましたし、の勘というか警報が鳴るというものです。
そんなモブ子A Bの質問に、ハルさんはニヤッと笑った。
「なんだと思う?」
「「なっ!?」」
「余計な事をするな。この人はこの店の店主で、この見た目でおばさんだ。昔馴染み、常連の店の店主と客というだけだ」
「もうアレン。もうし遊ばさせてくれたっていいじゃない」
「あんたは関係ないだろう」
そんなアレンの言葉がハルさんに屆くことはなく、當の本人はモブ子ズに詰め寄っていました。
「ねえねえどんなじ? 隨分修羅場ってたけど」
「どんなって」
「言われましてもね」
「ええー。おばさんには?」
「じゃなくて」
「そうですわ。そういうことではなくて」
「ふうん。じゃあ真ん中のの子は?」
「私はまだです」
「そうなの? じゃあ私も聞いちゃおっかな」
三人はハルさんのペースでたじたじでした。まあ、それも年の功というか経験の差でした。
「いい加減戻ったらどうだ?」
「ええー。暇なんだもん」
「あんたの暇潰しじゃない」
「それもそっか。仕方ない、戻るとしますか」
案外あっさりと引いたハルさん。チャオー、みたいなのが似合いそうに戻っていきました。というか行ったり來たりし過ぎですしね。
「な、なんでしたのあの方は」
「そうよ。まるで嵐じゃない」
「こ、怖かった……」
三人は安堵のため息をつきました。ですが、いい加減時間をかけるわけにもいきません。
アレンとのデートの筈が、既にそんな描寫シーンが忘れられています。アレンとのデート中だということが忘れかけられています。
 
モブ子Cには辛いでしょうが、この順番で、このタイミングで話してもらいましょう。時間はないのです。
「では、最後によろしくお願いします」
「え!? わ、わかりました」
二人よりも一回り小さいモブ子C。両隣の威圧に耐えて話をします。
「私はーー」
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