《かわいい俺は世界最強〜俺tueeeeではなく俺moeeeeを目指します〜》21話 萌ゆる

目的ーー協會に対する稅金の待遇を元に戻すこと。

方法ーーアレンに籠絡、つまりは萌えさせること。きっと俺の能力『萌え』の二つ目の効果『虜』が発し、アレンの一時的なコントロールが出來る。そうすれば撤回させることも出來るだろう。

しかし、それだけでは本的な解決にならないことに俺は気がついていた。

もし仮に、萌えさせることが出來てコントロールをするとしよう。その時に俺が下す指令はもちろん「稅金の撤廃」。そうすればその通りにアレンはしてくれるだろう。

だがそのあとは? コントロールは一時的なもので、解けてしまったらどうにも出來ない。そうすればきっとアレンはもう一度稅金を課してくる。

だから本的な解決が必要だった。

アレンがどうして冒険者協會に稅金を課したいのか、その理由を知る必要があった。

そして俺はアレンに関わりのある人達に話を聞いてわかった。だから、長い長い調査パートは終えて、解決パートにろう。

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***

モブ子ズと別れ店を出た私とアレンはその後適當にぶらつきました。いえ、歩いている時のアレンはどの店がどんななのか、どの店がお気にりなのか、そういったことを楽しそうに話してくれました。

ですが、楽しい時間もここまでです。

「アレンさん。私、行きたい場所があるんです」

「どこだ?」

です」

ふふ、と笑いながら言いました。の子がというと、こういう場合はしどきりとしてしまうらしいです。ソースは私の同級生です、惚れっぽいです。

しかしこの理論、なかなか有効なのは実証済みですから、アレンにも問題なく通じます。

「なら、黙ってついて行こう」

「訊かないんですか?」

「無粋というものだ」

返し方が男子高校生ーーもっと言えば日本男児とは一味違います。余裕があり、の遊び心を理解した上で尊重するとは……。

今度は私がリードする番です。

やはり適當に話しながら、私とアレンは私の目的地に向かいました。

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中心部に七大迷宮の一つセレント大迷宮を構えるこの都市には、四方に城壁外へと出ることが出來る城門があります。そのうち一つ、北門は富裕層ーー上級市民専用となりつつある門なので、私が出ることが出來るのは三つ。私が向かっているのは、西門でした。

ハルさんのお店は西地區に位置しており、しかし割と中心部よりでした。ですから西門まではし距離がありました。

私はアレンがリードしているように見せかけて、実のところ外縁部に近づくように「わあ」「気になります」などと適當に嘯きました。

その果、歩いて5分で西門といった位置まだ近づけました。

私の提案で明らかに西門へと近づく最中、アレンはしずつ言葉を失っていきました。その余裕がなくなっていったのです。

「フィアナ、こっちなのか?」

「はい」

問いかけてきましたが、私は簡単に答えました。

「フィアナ」

「もうしです」

門が見え始めて、明らかに揺を見せ始めました。アレンの顔はし青くなっていて、ここにはない何かをじているようです。しかしそれもすぐに現実へと引き戻されます。

「……」

「あと一歩です」

門で、城壁の境目で、私とアレンは止まりました。

アレンは今にも暗い過去に呑まれそうな、そんな焦燥に苛まれているようです。額に汗がじわりと滲んでおり、その苦しさが表立っていました。

後ろにいる護衛さんとエルバードさんは近づいてこようと一歩踏み出しました。しかし私はそれを許すまいと、大丈夫だという意思をエルバードに向けました。すると了承してくれたのかエルバードさんはこくりと頷き、そして禮をしました。

きっとエルバードさんには伝わったのでしょう。どういう意図を持ってここに來たのか。

「行きましょうアレンさん」

「……」

私が手を引き門外に出ようとすると、アレンはそれまでとは違いきません。杭を打ったようにその場から一歩もかないのです。

繋いでいる手からは震えがじられます。

「アレンさん」

「無理だ、ここから先には行けない」

いつも自信に溢れているアレンから、弱々しくか細い聲が私に屆きました。しかし逆に、繋いだアレンの右手には力がこもっていて離すつもりはなさそうでした。

ですが、視線を落とすアレンに私ははっきり告げます。

「行けます」

そして、

「アレンさんが門外に出られないのは、私がいるからですよね」

核心を突きました。

アレンの手にはさらに力がこもり、し痛くなってきました。ですが、私に返すその聲はやはり今にも消えそうなものでした。

「なんのことだ?」

「アシュレイさんが亡くなられたのは、この先ですね」

「っ!」

昨日作戦を立てる時にリディアさんに聞いておいたのです。アシュレイさんの事故が起きたのはどの方角なのか。

當時に近づければ近づけるほど、いいのです。これが布石となります。

「知っていたのか」

「はい。耳にしたんです」

「なら、なんで俺をここに連れてきたっ! この先に、母さんが、亡くなった場所がッ……」

さあ、ここからが勝負どころです。

「いつまで、過去に囚われているんですか」

強く言います。

「なに?」

「どうして、今を見ようとしないんですか」

責め立てます。

「フィアナ、おまえはっ……」

アレンに怒りが込み上がっているのが手に取るようにわかります。それはそうでしょう。決してれられたくないものにれられているのですから。けど、それでも私はやめません。

アレンの両手を、私の小さい両手で包み込みます。肝を據え、戸いから溢れる炎を捉え、優しく宥めるのです。

「私を見てください。その目で、今ここにいる私を見てください」

落ち著けるように、穏やかな聲で聲をかけました。

続けます。

「私は誰ですか?」

「フィアナ、だろう」

「はい。私はフィアナです。アレンさんのお母様、アシュレイさんではありません」

「そんな、當たり前のこと……」

「本當にそう言いきれますか?」

首が痛い……。元の私カナデの長は低く普段から見上げる事には慣れてはいるのですが、割と近い距離で顔を見上げるとなると首が辛い……。

そんな中から滲み出ているでしょう苦渋の表も、おそらくアレンは違う風に捉えているはずです。

きっと悲しさを堪えている、といった合に見えることでしょう。

「アレンさんは私とアシュレイさんを重ねてはいませんか? 追憶、しているのではありませんか?」

「何を」

「私だけではないです。先程の三人もです」

モブ子ズのことです。

「どなたもアシュレイさんに似ている部分がありました。そうですよね」

「ああ、確かにあの3人は似ているな」

「そして、私も。私は瓜二つと言っていいですよね?」

「ああ……」

「偶然ですか?」

「好みのが似通うのは仕方ないだろう」

確かに、そうです。けど、

「そうですね。でも、アシュレイさんを重ねているのは何故ですか? 好みじゃなくて、アシュレイさんをそこに求めているのは。

私が聞きたいのはそこです」

その一點なのです。

「母さんを求めるのが、重ねるのがいけないっていうのかっ!?」

「そうは言っていません。今はただ、聞きたいんです」

あくまで真摯に、冷靜に。

するとアレンはポツリと、溢しました。

「母さんが好きだった。尊敬できる人だった。なのにッ、あの時、急に亡くなって……」

「その時に出來たを埋めるためにですか?」

「違……くわないな。そうだ、言われればそうだな」

「そうですか……」

まあ、予想通り過ぎますね。アレン、貴族社會で生きていけるのですか? 

「失したか? 過去に縋る、けない男だろう俺は」

「過去に縋る事は、けないとは思いません。あなたは多くが薄れていく記憶の中で、大切なを守り抜いて來たんです。

それは尊敬できます」

「そう、なのか?」

「はい。それに、その尊敬できる人を重ねるのも、いけなくはありません。足りないを補ってもらう相手に、求めちゃいけないわけがないんです」

「なら、何が駄目なんだ。何かが駄目なんだろう?」

「はじめに私は言いました。私を見てください、と。アシュレイさんを重ねるのは自由です。けど、そこにいる人を蔑ろにしてはいけません。それはその人に失禮ですし、その人を否定することになります」

「そうか。そうだな。ああ、それは最低だな」

「はい。アレンさんは最低です。でも、気がつけたのなら、これからやり直せばいいんです」

そう言うとアレンはまた、そうだなと言いました。

「だから」

私はそう言って駆け出しました。いきなりの事で、アレンはついてこられず距離が空きました。アレンは慌てて私のところに走り寄りました。

「何をしているっ!? ここは外だ、魔だっているんだぞっ!? 死んだりしたらーー」

「アシュレイさんと同じですか? けど、私は死にませんでした。見てください」

私は指をさしました。その方向には深い森の迷宮があり、かつてアシュレイさんを襲った魔が棲み著いていた森です。

そこからは、し距離はありますが、喧騒激しく勇ましい音が聞こえてきてます。

「あれは……」

アレンが見たのは、重裝備にを包んだ前衛や、弓と矢を確認する後衛、杖を握りしめた魔師など。つまりそれはーー

「冒険者?」

「はい。そうですね。アシュレイさんを亡くして悔やんでいるのは、冒険者協會の方も一緒なみたいです」

これは、私がアレンに見せたかったもので、きっとアレンの考えを変えてくれるもの。本にものがあるなら、それを使わないてあはないです。

実際、リディアさんに聞いたところ、定期的に街周辺の調査が指名依頼として協會から一部冒険者に出されるそうです。定住を決め込む冒険者もなくは無く、そういった冒険者は喜んで引きけるそう。

もっとも、それがなくても急依頼として発注をする予定ではありましたが。支部長に無理を言うつもりではありましたが。そうならなくてよかったです。

「それに、街の人も一緒です。みんな、アシュレイさんを亡くして悔やんで、それでも進んでいるんです」

「……」

アレンは森にる前に準備を確認している冒険者を見ていました。その目には、先までの暗いはなく、爛々とした輝きがありました。

ここですっ。このが大きく揺らいでいるところに追撃を。

「もちろんアレンさんも。知ってますよ、魔の練習をしているの」

「知ってたのか」

「はい」

私は悪戯っぽく言いました。ここぞって言う時のそれは、効果倍増です。

仕上げです。

「なあフィアナーー」

「アレンさん。私はひと時の幻です。あなたが幸せになる事を祈ります。好きですよ」

「フィアナ……っ!?」

ちゅっ。私は不意にアレンの頬に口づけを施しました。

その顔には初めて、と言っていい恥と歓喜と戸いが混濁としていて、それはつまり、『萌え』なのです。

萌ゆる深もすぐに、私は『萌え』のもう一つの効果を使うのです。

「おやすみなさい、アレン」

「母、さん……」

これにてアレン攻略の任、完了です。

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