《ガチャで死したら異世界転移しました》調査⑥ 創るは難し
僕は今とても混している。手加減して打とうと思っていた魔法が見るからにとんでもないからだ。
【混沌の膨大なる崩壊カオス・マッシブ・コラープス】とは、火・・闇屬の複合魔法で【混沌の崩壊カオス・コラープス】の上位互換の魔法である。ゲーム時代でもまぁまぁ上位の魔法で、この魔法を習得できるのは隠し職である【墮天者】と、完全魔法職の最上級職である【終唱者】だけである。だが、どちらの職業でも更に上位の魔法を習得できてしまうので、実際使う人はない。今回は、 一応の手加減ということで使ったという訳だ。
「な・・・なんだこのおぞましいほどの魔法陣の量は…!」
黒竜がなんか言っているが相手にする余裕はない。僕もこれ程とは思っておらず、咄嗟に詠唱をやめようとする。しかし…
「あーこれ止めれないじだわ」
僕は諦めることにした。今回ばかりは理由を述べさせてほしい。
まず、この世界(ゲームでも同じ)でいう魔法というのは、発すると決まった量の魔力を消費し者の魔法攻撃力に応じた數の魔法陣が発生する。そして、そこに追加で魔力を注ぐことでさらに魔法陣が生され始める。その魔法陣の數に応じて最終的な威力や効果範囲が跳ね上がっていくのだ。では魔力を大量に消費して魔法陣を作りまくればいいのでは?と考えるかもしれない。しかしそれはできない。なぜなら、魔法陣はただ生されるだけではなく、自分で組書いていかなければならないからだ。魔法は発から発揮までの時間が決まっているので、それぞれが雑になって威力が激減してしまう。
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なのでいっぺんに大量の魔法陣を組書くのは愚行だ。
そしてこれは魔法の効果を弱めるためにも言える。例えば、ある範囲系魔法を使いたい。しかし素だと範囲が広すぎるので魔法陣をなくし、効果範囲をせばめたいとする。この場合は魔法陣を組書くのではなく、組解いていかなければならない。迷路に例えると、ゴール・・・からスタート・・・・へ行く、と言ったじだ。もちろん道筋などわからず手探りでやっていくしかない。まぁそれも、2つや3つならまだ可能だろう。
しかし僕の周りには今、數えるのも億劫になるほどの魔法陣が浮かんでいる。発揮までの時間ももうほぼないし、どうやって消せと?
・・・と、言うことだ。
そうして、森が消えた。
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「主様!!」
森だった場所をただ呆然と見て、僕が先程の魔法を唱えてしまって後悔・・していると、後から聲がかけられる。
「え!?あ、ルーナ。なんでここに?」
「それはこちらのセリフです!なぜ黒竜と戦っていたのですか?それにメアが気づいたからよかったものの、もしそうでなかったなら今の魔法に備えられずに私たちまで死んでいたかもしれないんですよ!?」
約2日ぶりに會って早々怒られた。というか、今の魔法でルーナ達まで巻き込んでしまったのか。ルーナは見るからにボロボロだし。
「ご…ごめんなさい?」
「はぁ…この通り、主様は中位魔法でさえこの世界では最強と言われる竜族を倒せてしまうほどなのですから、上位魔法や特に最上位魔法の発などはできる限り控えてくださいね?」
「・・・はい。すみませんでした」
「で、これはどうするんですか?」
どうしようか、突然広大な大森林が消失したのだ。はい消えましたねでは済まないだろう。僕がやったなんてバレたら最悪もうこの世界で生きていけなくなるかもしれない。
「しょうがないか。そっくり前のままとはならないけど・・・【自然生ネイチャー・クリエイト】!」
この魔法は文字の通り、自然を生する魔法だ。追加詠唱の度にもよるが、森を生することだって出來る。が…
「作るより壊す方が容易いって言うもんな…」
何しろ範囲が範囲なのだ、一度この魔法を使ったくらいでは雀の涙だ。
「サラがいればいいんだけどねぇ」
「あ、主様。噂をすれば、ですよ」
ルーナに促され振り向くと、メアとサラがいた。
「おぉ。まさに噂をすれば、だね」
ナイスタイミングだ。サラもだが、メアにも用事があるのだ。
「メア、ちょっと頼みたいことがあるんだけど────」
「・・・分かりました」
僕の頼みを聞いたメアはすぐに転移して行った。そして僕は魔法の詠唱の準備をする。取り敢えずこの森を治さなければ。
「サラ、こっちに。補助詠唱をよろしく」
「はい。主様」
サラが僕の隣に並び、すぐに準備にる。
補助詠唱とは、特定のスキルを持つ者が魔法発者の詠唱をサポートしたり、代わりに唱えたりすることだ。
サラはステータスと魔法を犠牲にすることで、補助詠唱に関連する【技】をほぼ全て習得させている。
「今回は攻撃をする訳じゃないから、【完全詠唱】【超速詠唱】【広域詠唱】【上級詠唱】だけでいいかな」
「は、はい。頑張ります。主様」
「おう。じゃ、始めるぞ。【自然生ネイチャー・クリエイト】」
「っ!!」
僕が発し、2人で詠唱し、魔法が発揮する・・・
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「やっぱり【詠唱者】がいると楽だなー」
五分ほどの詠唱が終わり、【魔眼】の【遠視】で見渡しても草木のひとつもなかった魔法の痕が、今やすっかり緑に溢れていた。もちろん調査に來ていた方の痕はそのままにしてある。
「あ、あり、がとう、ござい、ます」
やっぱり僕が全力で魔力を注いだからサラには負擔が大きかっただろうか。スキルの補助があるとはいえ、數千にもなる魔法陣の同時作業だからな…かくいう僕もし疲れた。
「わぁ…凄いですね、主様。一どれほどの詠唱をしたのですか?」
「僕は二千個くらいしかやってないよ。殆どはサラがやってくれた」
「私なんて…、主様の、魔法陣、の方が、度も、いい……ですし………」
遂には気を失ってしまい、すぐにルーナがおぶる。消耗が激しいようだし休ませてあげるべきだろう。しかし、ゲーム時代では仕様上魔法陣の千単位の生なんてできなかった。出來てせいぜい百個程だろう。それの同じ作業など以ての外だ。これもやっぱりスキルの効果なのだろうか・・・
「さ、取り敢えず帰ろうか」
「あのー主様?私たちの家、先の魔法で消滅していますが?」
「あ…」
すっかり忘れていた。どうしようかな。
「主様が泊まっていたあの宿に行けばよろしいのでは!!!」
いつの間にか帰ってきていたメアが我が意を得たりと言った風に提案してくる。
「それがいいな。じゃあ行くか」
「主様、私の転移の方が手っ取り早いかと!」
「あぁ、じゃあ頼むよ」
僕達はメアの【聖叡者】の【特技】でスラグディアの賢者の食卓の前に転移した。
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